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 VTRはここで一度切られ、司会の女性がここまでの内容に関するまとめのような話をする。ノワールの皿にピーナッツはまだ四割ほど残っているが、サルンはVTRを見ている間に自分の分のピーナッツをすべて食べ、さらにペットボトルに入った水をすべて飲み干してしまった。

「いやー、あん子はよう頑張って村に辿たどり着いたべ。最近は龍人のこどはいろいろ分がってきてるけんども、こん時にゃなーんも分がんねえ中で頑張ってたんだあな」

 サルンは感心した様子でテレビの画面を見ていた。

 エリーについては教科書で習うのはインド出身であること以外には、ほとんどだけである。なのでこういった歴史番組やVTRというものは、彼女の過去についてより詳しく知る良い機会と言えるだろう。

 サルンは大きく伸びをした後、ソファから立ち上がって台所の方へ向かう。台所の戸棚を開け、中から追加の水を持ち出した。

「そういえば」ノワールが唐突に口を開く。「僕、龍人なんですよ。しかも、ああいう風にできる」

 彼の唐突な告白。ノワールが源龍化げんりゅうかが可能な龍人であるということは、すなわちVTRで見たような変身が可能という事だろう。


「どっひぇー!」と、サルンは驚きの声を上げ思わずペットボトルを落としてしまった。「おめえ、あんな変身さできるんけか?」

 ノワールは軽く頷く。サルンはほえーと自然に口から声が出ていた。

「まあ、でもその力を使った職とかにはいてないです。それに、この辺は田舎いなかなので龍人による犯罪も起きませんし、モンスターも最近じゃいないらしいですし」

 それに……。とノワールは話を続けようとした。しかし、すぐに口を閉じてこの先について話すことはなかった。

 ノワールが一瞬話そうとしたこと。それは、自分の力をかした職に就こうとしても就くことができない、ということだ。

 記憶を失い住所不定の状態で、正規の従業員として働くことは出来ないのだ。そのため、定職を得るにはまず自分の真実を知る必要がある。

 なんでもないです、と言って、ノワールは会話を終えようとした。

「何言っとるんだべ、モンスターはまだまだいるだあよ」

 サルンはソファに戻り、テーブルの上に水入りのペットボトルを置いた。

「そうだ、おめえが龍人だってんなら、後でちょっど頼みさあるべ。メシ食う時に頼みってのは伝えるだよ」


 サルンは真剣な表情で、龍人であるノワールを見ていた。

「え、ええ。出来ることなら」

 ノワールは承諾しつつ、内心少しおびえていた。モンスターはまだいるという言葉のすぐ後で『竜人ならできるような頼み』をされるということは、サルンの頼みがモンスター関連である可能性が高いと考えたのだ。

 彼はまだ生でモンスターを見たことがない。テレビの映像で何度か見たことはあるが、実物がどのようなものかは味わったことがないのだ。

「すまねえだな、もし無理そうならやめてええだよ」

 サルンはそう言うと、右手でペットボトルのふたを開けた。

(まあでも……。モンスターに関わることじゃないっていうその可能性に賭けるしかないか……。もしモンスター関連だとしても、やんわりとことわれば大丈夫)

 ノワールは頭の中でどうすればよいか判断をしていく。

 どちらにせよ、夕食を食べるときにサルンが自分の頼みを言うのだ。その時に、内容を聞いて頼みを受けるかどうか決めればよい。

 彼は皿の上のピーナッツを数粒つまみ、口の中に放り込んだ。


 司会の女性の解説が終わり、いよいよドキュメンタリーの後編が始まろうとしていた。

『では、ここからのエリーはどのようにして現在の社会に影響を与えたのか。続きのVTRをご覧ください』

 再び画面が少しづつ暗くなり、数秒経つと完全に真っ暗になった。

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