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「よし、出発するぞ」
全員が車に乗り込むと、オムが車のアクセルを踏んで発進させる。運転手のオム以外は、家主が助手席に座りエリーは後部座席に寝かされていた。
車は静かな村を出て、山岳地帯をどんどん北の方に進んでいく。
「なあ、俺たちがやってることって、よくよく考えてみればただの
「言っただろう、龍人ってのはうちらの国にとっても貴重な財産なんだ。多少
家主の心配にも、オムは冷静に答える。
「それに、研究は向こうでだって出来るじゃないか」
オムは非道な人体実験でせっかくの龍人を失うより、自分たちでとある場所まで行き、そこで少しづつ研究を進めていく方がいいのだと感じているようだ。それ故に、エリーは眠らされ何処とも知らない場所に連れて行かれているのだろう。
しかし、何も知らないまま振り回されているのはエリーだ。今のところ意識が戻ったことは全く気づかれていないが、目が開いていないので外の様子を見ることはできていない。
龍人の少女は、なす
「まあ、確かにそうだな。そんでもって後は……あの子が協力してくれたらってところだな」
「エリーはまだ龍人について知らないことが多い。
オムは左手をハンドルから離して葉巻を
(エネルギー弾? 何なのよ、それは)
唐突に出てきた新たな情報に、当然エリーは疑問を持つ。タバコの匂いで車内は充満し、タバコの煙に慣れていないエリーは反射的にコホコホと咳をした。
「エネルギー弾ってのは、あれだろ? 三十年前に収容所を吹っ飛ばした時に龍人が出したっていう……」
家主はタバコの煙に慣れているらしく、特に嫌悪感や煙たさを感じることなく話をして続けた。
「そうだ。マスコミの取材の時に例の男が言ってたのは、強い光を放つ『何か』が手のひらから出てきて、そいつを投げつけてやったら地面に着いたとたん大爆発したんだとよ」
左手の人差し指と中指で葉巻を
ほーん、と家主は
「あ、そろそろエリーに飲ませた睡眠薬の効き目が切れそうだ」エリーの咳き込む音を聞き、オムが思い出したように言う。「もう一つのやつ、悪いがお前が飲ませてくれないか?」
彼は左のポケットから木でできた縦長の容器を取り出し、家主に渡す。すぐに家主は容器を開け、中にある注射器を取り出した。
「針は刺さないで、口開けてから中の液体を飲ませりゃいいんだよな?」オムは小さく頷き、左手を再びハンドルに持っていった。
(やめて、また……また睡眠薬を飲ませる気なの? このまま眠らされるなんて、嫌……)
家主は問答無用で助手席から後ろに身体を乗り出し、エリーの口を左手で開ける。そのまま右手で注射器を口に近づける。
「ごめんよ、エリー」注射器から液体が口の中に押し出され、すぐに喉の奥へと流れていった。
食事の時とは少し違い、彼女は睡眠薬を飲んですぐ強烈な
ソファの上で横になり、そのまま眠ってしまった時と同じだ。だんだん何かを考えることができなくなり、意識が
(あ……まただ……わ、たし……)
そのまま、エリーは再び眠りについた。
エリーが眠る直前、オムが「もし話を聞かれたら
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