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「んじゃ、オラ飯さ作ってくんべ。おめえさはそこの席さ座って待っててくんろ」
家の中は広いが古びており、作業場らしきものと生活スペースが同じ、玄関を上がってすぐの
ノワールは手に持っている桶を玄関に上がる前にドアの前に置き、それから家に上がった。二人は
サルンはそのまままっすぐ奥に行きそこにあるドアを開け、ノワールはかまどから離れた左側にある食卓らしき場所に行って席に座る。玄関から見て右方向には作業場があるため、生活スペースはほとんど左側に集中していた。
ノワールは「ほーん、いろいろ置いてあるなあ」と興味深そうに作業場の方を見ながら、サルンが昼食を作るのを待っていた。
少し時間が経つと、サルンが奥のドアを開けてノワールたちの元へ戻ってきた。サルンの手には二つのカゴがあり、そこにはこの日の昼食が入っている。
「
この日の昼食は大きなサンドイッチを一人三つだ。切られた食パンに挟まっているのはハムとレタス。
かなりシンプルに作られているが、それは不思議と見る者の
ノワールの前にカゴが置かれると、ノワールはさっそく一つを手に取り一口
(
(パンにレタスとハムさ
仕事終わりに食べるものはより美味しく感じると言うが、今の彼らはまさにその
二人は次々とサンドイッチを食べていき、みるみるうちに合計6つのサンドイッチは二人の胃袋へと消えていった。
「うー、食った食った」
ノワールは最初多く感じた量を特につっかえることもなく食べ、満足したのかげっぷを出していた。
だが、サルンはまだ食い足りないようだった。ノワールより一足早く食べ終わった彼は、再び奥の部屋に行きバターピーナッツを取りに行って、今はそれを食べている。
袋の形から、どこかの都市に行ってまで買ったものだと思われる。サルンの
「んだ、もう腹いっぱいになったんだべか?」
サルンはピーナッツを口に入れながら聞く。ノワールは無言で
「あど三十分後、一時半さなっだらまた仕事だ。今度は裏にある牛や豚の世話だべ」
ノワールは気づいていた。食事をしている時、彼の耳には近くからずっとモーモーブーブーと動物たちの鳴き声が聞こえていた。
彼は動物の世話の経験もある。日当稼ぎで他の集落に行った時に何度かやったことがあり、ある程度の知識や知恵はある。
「あ、あど今日は
ノワールはそのことに特に疑問を持たなかった。だが、サルンは
「今日は先週見逃したドキュメンタリーの再放送さ見てえんだべ、おめえももしここで飯食っでくんなら、一緒に見ねえか?」と自ら理由を明らかにしつつ、ノワールを夕食に誘った。
「あ、はい。せっかくなので」
ノワールはドキュメンタリーより夕食目的だ。ここで夕食まで食べれたらそのぶん食費が浮き、少ない所持金が減ることを防ぐことができるからだ。
「おし、んなら決まりだ。お
イギリスではアルコールが十六歳から飲めるので、年齢的には働いていれば基本的に問題はない。だが、もちろん飲める人と飲めない人はいるので、それはきちんと把握しておく必要がある。
なのでサルンが質問したのは年齢的なものではない。ノワールのアルコール耐性、つまり飲めるか飲めないかを聞いたのだ。
「わがった。そんじゃ
ノワールが「ありがとうございます」と返そうとしたとき、彼は足に薄い何かを踏んでいるような、そんな妙な感触を覚えた。
思わず「ん?」と声に出る。足元を見てみると、そこには新聞紙が落ちていた。
拾って広げてみると、
「あ、それオラもう読んだけ、読みたきゃ読んでええだよ」
ノワールが裏面にある番組表を見てみる。少し目を通してみると、今日の午後5時にイギリスの公共放送で「あの日、インドから世界へ龍人を広げた少女」という名前の歴史ドキュメンタリーをやると書いてあった。
ノワールは龍人という存在が一九四七年に確実な証拠のあるものが偶然第一次世界大戦中のドイツで発見され、千九四七年のインドで発見された龍人が世界中で発見されるきっかけになったことは知っている。しかし、その経緯は知らない。
ノワールは少し興味を持った。夕食前にこのドキュメンタリーを見るのもいいかもしれない、そう思った。
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