第9話「城の地下室に行ってみよう」
地下に降りた俺は「OH!」と西洋風の驚き方をしてしまった。
そこは上の階より更にゴシック風で、俺が好きそうな黒と金と真紅で彩られた調度品や絨毯で飾られていた。
壁にずらりと並んでいる燈台の上に灯る蝋燭は全て赤。石壁に温かみをもたせるために飾られているカーテンは
「こちらが南無さんの寝室になります」
ファルテイア様が指差す方には、この城で一番豪華そうな扉がある。その装飾の絢爛豪華さからして、部屋の中はとんでもないことになっていそうだ―――と、思って開けてみたら石壁石畳のだだっ広い空間の真ん中に、ポツンと棺桶が置いてあるだけだった。
「……は?」
「寝室です」
「いやいや、俺に棺桶で寝ろと?」
「南無さんの記憶からはそうなっていますが」
「俺、普段はベッドで寝てますよ」
「それは前のあなたが人間だったからですよね?」
「ちょっとまって! ちょっとまってください!? まるで今の俺が人間じゃないように言いましたね?」
「そうですよ?」
そういえば―――イザナミ様に再構築された自分の姿を確認したいなと思っていたけれど、このお城のどこにも鏡がなかった。
もしかして俺はとんでもない化け物になっているんじゃないかと、思わず手足を見て、顔をペタペタ触ってみた。
形に違和感はないが……気になる! スーツを再構築された時にどんな下着を履かされたのかと同じくらい気になる!
「あのぉファルテイア様。俺が人間じゃないとしたら、一体なんなんでしょうか?」
「死んだように生きる者、ですね」
「……え?」
この中二病っぽい黒いマントと燕尾服もどき。
なにか出てきそうなおどろおどろしい外観の城。
棺桶の寝室。
鏡のない室内。
そして死んだように生きる者。
そこから導き出される答えは……
「俺はマトリッ◯スの中に―――」
「全然違います。あなたは転生してヴァンパイア種に生まれ変わったんです」
ファルテイア様は少し呆れ顔だった。
「南無さんは【鑑定】の能力を与えられていますね? 自分を鑑定してみればわかると思いますよ」
「どうやって……」
「祈って囁いて念じるだけです」
失敗したら灰になりそうな事を仰られたが、試しに「鑑定」と小声で言ってみたら目の前に半透明の画面が出てきた。
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基本情報
【南無セツハ】
種族:LESS-VAMP
肩書:
神々の使徒
(黄泉津大神)
(キラウヨルグ神)
年齢:18相当
性別:男
身長:185メテル
体重:80キトン
状態:健康(普遍)
ステータス:詳細はこちら
スキル:詳細はこちら
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―――
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「ええと、色々聞きたいんですけど、まず種族のLESS-VAMPってなんですのん?」
「レッサーヴァンパイアの省略文字ですね」
「OH……」
死んだように生きる者だから
「あのぉ、異世界転生したらヴァンパイアになっていたとか、笑えないんですけど」
「そうしたのは私ではなくイザナミなので」
うぅぅぅ。
ヴァンパイアと言えばRPGで言えば強敵の部類に入るけど、ホラー映画ではヴァンパイアハンターに狩られまくる雑魚キャラじゃないか! しかも
ヴァンパイアは日光を浴びると灰になり、流れ水に浸かると溺れ、十字架で火傷し、ニンニクごときにも負け、心臓に白木の杭を打ち込まれたら―――そりゃ誰だって死ぬか。とにかく弱点多すぎぃ!
「安心してください。あなたが立派なヴァンパイアとして君臨するまで、この館があなたを守ってくれます」
だから太陽光を遮る地下の寝室があり、日照時間を避けて過ごせる各ダイニングルームも用意されているのかと納得したが、自分の境遇にはまるで納得できていない。
立派なヴァンパイアって、人の生き血を吸い尽くして殺し、殺した後も自分に従うヴァンパイアにしてどんどん仲間を増殖していくっていう、質の悪いコロナウイルスが人の形になったようなやつだよね?
そんなやつ、人類全体で排除するのが普通だと思うんだが、まさか俺は人類の敵なのか!?
「この世界のヴァンパイアってどれくらいいるんですか」
「いません。地球から持ち込まれた種族なのであなたが始祖です」
「OH」
俺に叡智を授けてくれるヴァンパイアの先輩がいない。
しかしこの世界の人類がヴァンパイアというものを知らないのであれば、当然弱点も知らないだろうしそこに活路を見いだせるかも!
「ちなみに南無さん」
「はい?」
「私の管理している星なので、むちゃくちゃしないでくださいね(にこっ)」
あ、この「にこっ」はイザナミ様と同じ感じがする。絶対逆らったらだめなやつだわ。
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