第7話「異世界の星神様と対話しよう」
変なおじさんみたいな踊りを終えたこの星の神様―――ファルテイア様の顔を見た俺は、改めて「ほえー」となっている。
金髪碧眼だが西洋風の顔立ちというよりいろんな人種の美しさを混ぜ合わしたような……例えるのならアニメや漫画に出てくる美女の顔をしている。
「は、はじめまして。俺は―――」
「
めっちゃ喋るな。
神様たちの人物相関図がどうなっているのか興味あるところだが、今はそういう事より普通に生きられるようにお願いしなければ。
「あの―――」
「はい、イザナミのミスで生きたまま転生したんですよね。同じ創世神管理組合の神としてお詫びいたします。南無さんにとっては大変なご不幸でしたが、こちらの世界で新たな人生を幸せに過ごしていただければと思います」
んー。この人、いや、この神様は俺の話を途中でポキポキ折ってくるので、強引に割り込んででも話をしなければ!
「ファルテイア様」
「なんでしょう?」
「イザナミ様からは【死んだように生きる】人生って言われましたけど、それってここでは幸せなんですかね」
「死んだように生きる? あぁ、そういうことですか。まぁ幸せは人それぞれですから」
「どういうことですか? この世界ではその言葉になにか深い意味が―――」
「そんなことより」
また話を遮られてしまった。異世界では神様とのやり取りも大変だなコンチキショウ!
「南無さんの服装は私の世界に合っていないので、神の権限で再構築させていただきます」
俺の一張羅であるヨレヨレのスーツが、一瞬で黒いマントと燕尾服に似た服に作り変えられた。
ちょ、下着は? 俺のトランクスはどうなったの!? 美少女の前でズボンを下げて確認するわけにもいかないし、我慢するしかないが、気になる!
それに作り変えられた服のデザインがヤバい。
俺のようなおっさんが着るにはあまりにも派手な、なにかのアニメキャラが着ていそうなコスプレ衣装だ。黒一色というのがまた中二病っぽくて、気恥ずかしい。
「その服は、この星の一般的な冒険者が着ていそうなものです」
「そ、そうなんですか。って、冒険者?」
「南無さんはこの世界で生まれ育ちの縁や人間関係のコネがなく、この世界の常識も知らない状態ですから、始めは冒険者か野盗のような誰にでもできる仕事を生業にするしかないかと思いまして」
「は、はぁ」
「もしかして野盗の方が良かったですか?」
「いえ、冒険者で」
わざわざ第二の人生を日陰者として生きたくない。
「この森は人の住む街から程よく離れていますし、今のあなたからすればそれほど危険な生き物は生息していません。ここなら安心して暮らせるでしょう」
今のあなたからすれば、という所に引っかかるものはあったが、それよりなによりこんな森の中でサバイバル生活できるとは全く思えない。この神様の安心基準はどこに置かれてるんだよ。
「ファルテイア様、あのですね―――」
「分かっています。安心して暮らしたいんですよね?」
「まぁ、そうですが、あの―――」
「あなたの住処をここに出現させます。これは通常の転生では行わない特別サービスなのですよ。えい!」
人の話を聞いてくれないファルテイア様が手を上げただけで、俺の背後に相当な質量が生まれたのを感じた。また後ろかよ!
恐る恐る振り返ると、俺の身長の二倍はありそうな立派な外壁と大きな鉄拵えの門があり、その先に広大な庭、そのもっと奥に三階建ての巨大な館……いや、西洋風の城が出現していた。
「さすが神様、なんでもアリか」という感嘆もあるが、それよりなによりこの城の禍々しさたるや。
二つの月をバックに黒々とそびえ立つ城の雰囲気は、まるで吸血鬼か悪魔でも住んでいそうなホラー映画の舞台だ。そもそもあの塔みたいな部分って、なんのためにあるのさ。
「ここに俺が住むんですか?」
雰囲気がべらぼうに怖いのもあるが、これだけ広いと維持費とか住民税とか固定資産税がむちゃくちゃ掛かりそうなんですけど。
「私の加護で作り出した建物ですから補修なしで永遠に有り続けますよ。それにこの森はどこの国の領地でもないので、税金はかかりません。ご安心ください」
「は、はぁ」
「イザナミからはくれぐれもよろしくと言付かっていますのでサービスサービスです。これでお笑い番組四本は硬いですね」
「は、はぁ」
「どうですか? 南無さんの記憶から地球の建物を再現してみたんですが」
「俺の記憶から!?」
どうして俺の記憶を再現すると西洋の城になるんだよ。俺が想像できる住処ってのはマンションか日本的な一軒家くらいのもんなんだが?
「ちなみにこの外壁は外敵を寄せ付けない加護を施してあります。私の加護ですから、この星で最高にして最強の聖なる壁です」
「は、はぁ」
「右の庭の奥にはいつでも収穫できて、永遠に育ち続ける野菜の畑があります。左の奥庭には薬草系の畑もあります。それと中庭にあるシンボル的な大木ですが、あれは私からのオマケです。うふふ」
「あの、俺は畑いじりの経験がなくて―――」
「裏庭ではお茶会できるようにテーブルや花壇も用意しました。そこなら昼間でも陽が差さないので安心ですよ」
なんでわざわざ日陰でお茶会なんぞを……。ってかほんと人の話聞こうとしないな、この子。いや、この神。
「建物の中も案内しますね」
ファルテイア様は俺の手を取った。イザナミ様に勝るとも劣らない天上の手だが、同じ神様でも随分性格が違うもんだなぁ。
館の大きな玄関扉を開けると、この玄関だけで大ホール並の広さがあり、真正面には上階に上がる大きな階段と赤いカーペット。そして天井から吊るされた巨大なシャンデリアには数え切れない蝋燭が揺らめいている。
なんという貴族趣味。だが嫌いじゃない!
「館の蝋燭はすべて永久蝋燭なので燃え尽きることはありませんし、暗くなると自動で点灯します。
「ほえー」
異世界すごいな。蝋燭なんてめったに見かけないものなのに、下手なLEDライトより高性能じゃないか。
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