第4話 3 孤独
事務デスクに置かれたバックパックのチャックを作り笑いの老けた女が開けて、中身を確認しだした。
「此方からお伝えした生活品は全て揃っております」
と作り笑いの女が言った。
そして薄ら笑いの男が、さらに中身を探って、バックパックの中にある隠しポケットから、現金の入った封筒を見つけた。その男の薄ら笑いが、一層輝き出したかと思うと、その封筒を私の目の前に差し出し、
「中身は紙幣だね」
そう言うと、私の心の支え、現金をその事務所の金庫にしまった。
彼の言い分は、預かっておくだけで、必要な時に必要な金額を渡す、と言うことだった。それも規則だからだそうだ。私の心は、完全に支えを失っていた。何故なら、今朝まで居た、たった一人の心の中の友人が、あの鉄の扉を潜ってから何処かへ行ってしまって、出てきてくれないのだ。
私は、この施設の中で、完全に一人きりになってしまった事を悟った。
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