好きと言ってやる気は無いけど嫌いでも無い。
おはようございます。木元です。先月休日の散歩中に、私の前を歩く二人の女子高生を見つけたんですね。二人とも、自転車を押しながらお喋りしていました。他愛無い内容が微笑ましかったんですが、二人の温度差が面白かったんです。
一方は元気いっぱいな感情表現がストレートな子で、一方は口数の少ない子でした。仮に元気な子をAさん、無口な子をBさんとしましょう。AさんはBさんと遊びに行きたいようですが、Bさんは乗り気で無いようです。
Aさん「なあなあユニバ(※ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの略。ざっくり言うと遊園地。大阪の人は大体こう呼ぶ)行きたなぁい? ユニバ。今ゾンビの動画回って来ててめっちゃ見に行きたーい」
Bさん「あたしええわ」
Aさん「なァんでよ行こや! 今しかやってへんのに!」
Bさん「ハロウィンのやつやろ? 毎年ゾンビ出るやん(※秋の恒例イベントで毎年出て来ます)」
Aさん「今年はダンスがヤバいんやって! 日本人形のゾンビのやつ見た!? なんかこう、カクカクのロボットみたいなやつ!」
Bさん「知らん。この時期のユニバ寒いし(※ユニバは海側にあるので潮風が冷たく、秋でもかなり冷え込みます)」
Aさん「(スマホで動画を見せようとしながら)このっ、これよこれ!」
Bさん「(身を寄せて来たAさんが流している動画を無視して前を向いたまま)てか課題やった?」
Aさん「見て見て! 見てこれ! ヤバない!?(よっぽど見て欲しいようでグイグイ身を寄せながら音量を爆音にしている)」
Bさん「(密着されて身体が傾いているが前を向いたまま)音が
道が住宅地に入って来た所で、別の道から小学生のグループが走って来ました。四人ぐらいでしたかね。一人だけ女の子で、皆学校帰りでランドセルを背負っています。小学生達はAさんとBさんを取り囲むと、親しげに声をかけました。どうやら近所の知り合い同士みたいです。でもBさんには控え目だったので、Aさんがご近所さんなんでしょうね。小学生達にとってBさんは、Aさんの友達のお姉さんって印象でした。
小学生達に絡まれ歩くスピードが落ちるAさんは、全くペースを変えないBさんと徐々に距離が開いて来ます。それに伴い、二人の声も大きくなっていきます。
Aさん「行こうやユニバー! 私と二人で行くん嫌!?」
Bさん「嫌やね」
笑う小学生達「A嫌われてんやんおもろ」
Aさん「嫌われてへんわチビィ! 嫌いやったら毎日一緒に帰ってへんもーん! Bはいっつもああいう態度取ってるけどぉ、ほんまは私の事大好きやから! 知ってるから! クラスで二人組とか作る時ぃ、いっつも(滅茶苦茶誇張してるんだろうあざとい調子で)『なあAぇ、一緒にやろ?』って声かけてくんのBやから!」
Bさん「そんなキッショい言い方してへんわ」
Aさん「キショくないよ! 可愛いよ!」
Bさん「…………」
もうAさんとBさんは車二台分ぐらい離れていましたが、Bさんのその沈黙と背中で、怒っているのが十分伝わりました。怒ってるっていうか、照れ隠しなんでしょうけどね。背中だけであんなに感情って見えるんだと驚きます。
同時に、自分の高校時代を思い出して気恥ずかしくなりました。私もBさんみたいな子だったんです。今もあんま変わってないんですけれど、素直になるの苦手なんですね。Aさんみたいな友人もいて、似たような遣り取りもしょっちゅうしてました。
でも距離が結構開いて来て、小学生を振り払えないAさんは、「待ってェー!」とBさんへ叫びます。さあBさんはどうするか。私なら絶対に引き返しはしませんが、ブスッとした顔で待ちます。「
然しBさん止まりません。加速もしませんが減速もしていないので、両者の距離はどんどん開いて行きます。Aさんはからかい過ぎたと思ったのか焦った様子で、「アーBB待って行かんといてB! 嘘嘘! ごめん! 宇宙一愛してる!」と叫びました。あー私それ言われたら追い付いた時に一発ぶん殴るな……。
Bさんは機嫌を直すんでしょうか。十中八九火に油だと思います。いい加減暴言の一つや二つ吐かれるのでは。
するとBさんはAさんに振り向きながら、自転車に跨りました。案の定こちらからでも分かる、冷ややかな視線を向けて告げます。
「死ねゴミクズ」
いやその言葉の強さは私でも躊躇って使ってない!
Bさんは颯爽と自転車で駆け出しました。Aさんが「アアアアBぃいいいいッ!!」と悲痛に叫びますが止まりません。あっという間に小さくなっていくBさんの背中へAさんは、「後で通話するからァー!」と追加で叫びますが
宇宙一愛してる辺りからAさんは立ち止まっていたので、距離が縮んだ私は追い抜きます。でもいつもの事らしく本気で落ち込んでる様子も無くて、「可愛い奴め……」とかブツブツ言ってました。程々にしないとその内本当に殴られるからね君。てかBさんも一歩も譲らなかったな……。私なら黙って欲しいから折れちゃうけど。つまり本当は嫌われてるんじゃないの君? 既に友情崩壊してない?
まあええか。それも友情。
そう適当に納得した私は、休日の散歩を満喫しました。肩凝り腰痛スッキリ。まあ先月の話なので今は両方復活してるんですけれども。そして何故先月の話を今書いているのか。AさんとBさんの温度差が面白かったのが印象的で未だに覚えているというのもあるんですが、次に書く長編はどんなのにしようかなと考え始めていた時期だったので、彼女達みたいなバディ物もいいかもなと記憶に留めていたんです。Bさんが自分みたいで結構な共感性羞恥心を覚えてたのも多分にあると思いますが。
別に本気で嫌いとか嫌とか言うてる訳ちゃうもんなあ? 何か言うてまうだけやもんなあ? ウザいんですよねこのフォローも。からかわないのが一番なんですよ。そういう事しない人には普通に従順ですから。ハァもう全く。悪いのAさんですからね。何で見知らぬJKに苦しめられてんだろう私。Bさんもあの後、Aさんからの通話に普通に出たんだろうな。不機嫌そうに「何」って。分かるよ。本当は嫌いじゃないもんね。照れが邪魔をして上手く話せないだけだもんね。
でもこの出会いで理解してしまいました。この温度差のある遣り取りって、見てるだけならめっちゃ面白いんだなって。ああそう……。楽しくないのはBさんだけってね。恥ずかしいから早く終わって欲しいんですよ。
という訳でちょびっと書き始めたアクションバディ物、こんな感じの女子二人が主人公の予定です。私の精神が耐えられるのなら。何で自分がされたら嫌な事、自分で書かなきゃならないんだろう。もし書き上げても、カクヨムさんでは公開しないかもしれません。黙って外部の賞に回して、落選したらお知らせも無しに公開してるとかやってそうです。二人のコミカルな遣り取りを塗り潰すぐらいグッロいバイオレンスなアクションシーン山盛りにして、誰も読めないようにしてやるんだから。私がどれだけスプラッター好きなのか見せてやる。趣旨がズレている気がする。いや、このエッセイで評価されてるように親しみやすい印象を小説にも取り入れたいという重大な試みですよ。故にバディで書くんですから。いや真面目に一旦日常ものとかの短編でやってみて、書き切れるか耐久値テストやった方がいいかもしんない。丁度カクヨムコン中だし。これは自傷行為じゃない、短編賞用なんだ! って言い聞かせて。
それでは今回はこの辺で。
よい一日を。
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