〇爆音ASMRとカップ麺で脳と味覚をバグらせてみよう
おはようございます。木元です。早速前回の宣言に基づき、爆音ASMRで味覚をバグらせる遊びについてお話します。
コロナが現れて一年目の事でした。外には出られないし、暇過ぎてゲームもする気が起きなくなっていた当時の私はふと、
“脳と味覚をバグらせてみよう実験”
それが機械であろうと他人に知ったような口を利かれるのは癪に障るという性分から、あなたへのおすすめ機能を切っている私のYouTubeの画面は滅茶苦茶です。兎に角再生回数が大きい動画がジャンルを問わず入り乱れているので、偶然の出会いも当然山のよう。その中で気にかかったものがありました。誰かの咀嚼音だけを何十分何時間も流す、ASMRというジャンルの動画です。
ASMRとは砕いて言うと、聴いていて小気味いい音の総称だそうです。たとえばおせんべい食べてると、バリボリいい音が鳴るじゃないですか。そういういい感じな音を咀嚼音に限らず、色んなものから拾って集めて楽しもうというジャンルらしいです。主な使い方は睡眠導入だそう。勿論合う合わないはありますが、寝る前に聞いたら眠れるんですって! 世の中ってまだまだ未知だらけ。
ASMRとの出会いになったその動画では、確か甘い物を食べる音が収められていました。サクサクしたやつ。きっと不思議な顔をしながら試聴していた当時の記憶がふと、退屈でしょうがない私の脳の上部へ上がって来た訳ですよ。
「もし、あのサクサクしたお菓子のASMRを聴きながら、全く違う食べ物を食べたら、私の脳や味覚ってどうなるんだろう……?」
醤油味のカップ麺を用意しました。お湯を沸かしたり注いだりしながら、片手でスマホを操作しYouTubeでASMR動画を漁ります。食べるのはラーメンだから、なるべく離れた食べ物のASMRがいいな。その方が試し甲斐がある。そう数分探し回った末、しっとりめのチョコレートケーキの咀嚼音のASMRを見つけたのでこちらに決定。ラーメンも完成。スマホにイヤホンを差して準備完了。ドキドキしながら両手を合わせていただきます!
食事中にイヤホンで音楽を聴いた事はありますでしょうか。あれって実は自分の咀嚼音に阻まれて、並の音量じゃほぼ何も聞こえなくなるんですね。それを初めて知った私は一口目を無駄にしてしまい、ただ普段通りにカップ麺をもぐもぐしながら心で「しまった!」と叫びます。箸で塞がっている右手に代わり左手でスマホを操作し、ボリュームを上げました。普段の状態で聴いたら耳ぶっ壊したいんかぐらいの馬鹿げた音量になってやっと、しっとりチョコレートケーキの咀嚼音ASMRがやって来ました。もう一口目は飲み込んでしまったので、二口目に入った頃でしょうか。
自分の咀嚼音と他人の咀嚼音が同時に脳内に入って来る! まるで自分の顎が二つになって、別々のものを食べてるみたいだ(キッショいたとえ)!
と、好奇心を刺激され大喜び。ASMRのマイクってめっちゃ高価なものだそうで、その分繊細に対象の音を拾うんですね。だから臨場感も凄いんですよ。録ってる現場にいるみたい、撮影者さんそのものになったみたい。だからたとえもキショくなりました。どう書こうか悩んだんですけれど、いやこの話自体どう書けば上手く伝わるのか大分四苦八苦しながら書いてるんですけれど、私にはこの表現しか無い。
まさに未知との遭遇。類似した現象も存在しないだろう、圧倒的な新規性。テンション爆上げです。知らない事と出会えるって、なんて楽しいんだ! それもこんな簡単な方法で! 私が知らないだけで日常って、もっと色んな面白い事が隠れてるのかもしれない!
然し人間とは順応も早い生き物です。三口目にはこんな素晴らしい感動も褪せてしまいました。忍び寄って来た違和感によって。
高価なマイクのお陰で、まるで撮影者さんになったかのよう。つまり私とは、醤油味のカップ麺を食べながら並行して、しっとりめのチョコレートケーキを食べているかのような体験をしている訳です。でも感じている味と食感は、当然醬油ラーメンだけ。
脳がバグったのでしょうか。弱い乗り物酔いのような、微かな違和感がやって来たのです。醬油ラーメンしか食べてないのに、自分の咀嚼音と全く同じ質感と音量で、まるで顎が二重になってるみたいに、誰かがチョコレートケーキを食べている音が聞こえて来る。お箸を動かしているのは私だけ。テーブルにあるのも、醤油味のカップ麺だけ。ならこの重なって来るチョコレートケーキの咀嚼音は何? 誰? 二重になった顎の一方は、私じゃなくて他人が動かしてる? どっちも音は、体内で鳴ってるような響きで入って来るのに? 私今、何食べてる?
余りにマイクの質がいい所為で、口の中だけ二人の人間が動かしてるような感覚になったんですよ。でも実際に食べてるのは醬油ラーメンですから、食感も味もそれしか伝わって来ないじゃないですか。本当に自分がチョコレートケーキを食べてるような音も、しっかり来るのに。それが余計に異質に感じたようで、めっちゃ気分悪くなったんですね。もうその頃には大した事無かった違和感も、乗り物酔いの何十倍ぐらいの濃度になってて、四口目でギブしました。醬油ラーメンは後でちゃんと完食したんですけれど、イヤホン外さないまま食べ続けたら絶対吐くなと確信したので。
という訳でこの実験の結果は、どれだけ臨場感のある音でも味覚はバグらないけれど、音は本物みたいだから脳はガッツリバグるでした。凄いですよ。あの違和感。感触が最も近いので「乗り物酔い」と書きましたけれど、あの感覚はあの体験でしか得た事の無いものでした。日常生活では絶対に出会えない感覚ですので、興味があったらやってみ……。て下さいって言い辛いんですよね。マジで気持ち悪くなるので。その気持ち悪いって感覚も知らない形でやって来ますから、知らない感覚で気持ち悪い気分になってその気持ち悪いって気分の形も知らないから二重で気持ち悪くなって混乱と不快感のマトリョシカって感じです。何言ってんですかって? 本当にこうなるんですよ! そう、違和感にも種類があったんですよ。これが一番の発見かもしれないません。予想では味覚がバグるのかなって思ってたんですけれど、全然脳味噌にダメージ受けましたね。脳は騙されやすいって話、本当だったんだ。錯視とか。
もう一つ付け加えるなら、これをやったのが私だから大袈裟な結果になったのかもしれないという事です。たとえば、アクションゲームとかで自分が操作してるキャラクターが殴られてダメージを受けたら、「痛っ!」って言う人いるじゃないですか。この「痛っ!」って、あくまでダメージを数字として見てて、HPゲージが削がれて危ないって意味での「痛っ!」と、ゲージ云々以前にまるで自分が殴られたかのように感じて「痛っ!」って言ってるタイプに分かれると思うんですが、私は後者なんですね。感受性が強いと言うのか共感性が高
総合的には超面白い体験でした。知らない事と出会えたので。日常って、まだまだ楽しいのかもしれない。
最後に、最近書いたレビューのリンクを。
「近衛騎士×貧乏令嬢、王族御用達靴職人の座を懸け、大商会との勝負に挑む!」
https://kakuyomu.jp/works/16817330649902322262
それでは今回はこの辺で。
よい一日を。
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