文化的お笑いバトル②
たとえば、ポテトチップスの味の名前。お洒落なポテチはペッパーソルト味なんて名乗ったりしています。ただの塩こしょうやろ。然しカタカナ語にしただけであら不思議。何だかとってもお洒落な響きになるでしょう? 冷静に考えれば、家の台所で何度でも見た事がある塩こしょうなのに。この通り日本人とは、カタカナ語に騙されやすいのです。海外の観光客が、漢字でテンション上がるのと同じですね。
いやいや、意味さえ取り違えんかったらそんなに変わらんやろ。そう言う方もいます。ワシは騙されへんで。みたいなね。後輩君も、そんなに変わりますかねえ? と、首を傾げる側でした。
「なら、かなり極端な例を挙げるけれど、たとえば『茶道の巨匠は千利休です』という文があったとして、これを『ティー道のグランドマスターはサウザンド利休です』と言われたら、かなり印象が変わるでしょ?」
渾身のボケをかましました。何分私はボケが得意ではありませんので、油断は無しです。
定評のあるワードセンスを前面に押し出した、ツッコミを入れて下さいと言わんばかりにポイントを設置しまくったこのコメント。ポイントに気を取られただ単調なツッコミに終われば先の文化と文明の遣り取りは、実力なのか偶然なのかアホなのかが測れます。さあ、君の実力を見せてみろ!
後輩君はバカ程笑いました。そこは想定内であり基本です。お笑いとは、楽しませる心を忘れてはなりません。大阪の人間がフザけた事ばっかり言ってるのは、相手に笑って欲しいからですから。笑って貰えたら嬉しくて笑うんです。サービス精神ですね。だからつまらない奴はサービス精神が無い、独りよがりな奴だと、超怒られる訳です。「大阪の人間とは笑いに命を懸けている」とは正解ではありますが厳密には、「笑って貰う事に命を懸けている」ですので。独りよがりな笑いって大抵滑りますから、見聞きしてて寒いんですよ。言ってる本人が楽しいだけで、相手の事を考えてませんから。吉本興業と松竹芸能という上方演芸のツートップがある笑いのメッカでそんな事言ったら、まーあ怒られる方が自然です。
さあ後輩君はどう出るか。ツボに入ったのか、仰け反るぐらいに笑ってました。私はその間も仕事をしていました。小話しながら仕事もこなす。なんてデキる先輩でしょう。因みにその月は一回寝坊で遅刻しました。
ヒーヒー言って、やっと幾分呼吸が整った後輩君は言い出します。
「ティー道って! そこはティーロードじゃないんですね!」
ん!?
「然もグランドマスターって、超デカくなってるじゃないですか!」
は!?
「サウザンド利休って! 今度言お!」
どのタイミングでや!
……英語が得意な方ならもうお気付きでしょう。茶道の英訳はtea ceremonyですし、グランドマスターの意味は、組織内における最高位の指導者です。わび茶を完成させ茶聖と呼ばれ、多くの弟子を抱えたその流派は未だ健在である千利休が茶道のグランドマスターであるのは当然な所に、「超デカくなってる」と言った後輩君とは恐らく、グランドマスターのスペル(grandmaster.これで一つの単語)を知らなくて、grandとmasterを切って二つの単語からなる言葉だと思い、master(確かにこれだけでも長という意味がある。ただの長だから最高位の長では無いけど)に私がわざわざgrand(※意味は偉大・雄大・威厳など、精神的物理的にでっかい事)を足したもんだから、千利休が物理的に巨人になったか何かだと解釈したんです。grandとは精神的な大きさも示す単語でもあるとは、知らなかったみたいですね。つまり彼は私が用意した例文、「茶道の巨匠は千利休です」を、「茶道の物理的巨人は千利休です」と解釈した訳です。意味が分からんしそんな訳無いやろ。Google翻訳か。
文化と文明を敢えて外してお洒落な返しが出来る人の発言とは、到底思えません。そもそも私も、英語力を問う為にこの文を用意した訳ではありません。カタカナ語と日本語の印象の違いという話をしてるんです。そうちゃんと前置きしたし。この調子では文化と文明の違いも、きっと分かっていないでしょう。つまりあの返しは、まぐれ……。お前もしや、火起こしとは文化的であると本気で
まだケラケラ笑う後輩君を、すっかり冷えた目で眺めながら胸の内で吐き捨てます。
ほんまに原始人みたいな事言うてんちゃんわ。火起こし野郎。
矢張りまだまだ、面倒を見てやらねばならないようです。何も不機嫌になってない顔で「そう」とにっこり微笑んで、仕事に戻りました。後輩の原始人君と。今振るうと殺してしまうので控えていますが、刃と称される私のツッコミ、いつか全力で向けられる日を待っています。
前回の更新で、「本当はYouTubeのあなたへのおすすめ機能とネット広告の話したかったのに!」って言ってましたけれど、こっちの方が面白いかなと思ったので先に書きました。次回の更新で書きましょう。
それでは今回はこの辺で。
よい一日を。
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