1

 俺はいつも通りの平和な日々を過ごしていた。そんな俺だがいつもとは少し違うことがある。


 今日の朝目覚めたと同時に頭の中にもの凄い情報の量が一気に入ってきたのだ、宿屋を経営している両親だがいつもなら朝ちゃんと起きてくるはずの俺を母が心配して様子を見にきてくれた。その母の顔を見てやっと前世の俺と今世の俺の記憶をうまく分けることができたのだ。

 どうやら俺はうまく転生できたらしい。今世での俺の名前は前世と同じくルーシェという名前になっていた。なぜ前世と同じなのか不思議に思い、名前の由来を聞いていた時のことを思い出すと、どうやら400年前の魔王からとったらしい。多分それが俺なんだけれども、子供に魔王の名前って大丈夫か?と、思ったのだが、どうやら今は魔王が正義で勇者が悪になっているらしい。今でさえ落ち着いているがどうやら俺が倒された後、国がうまくまとまらなくなりめちゃくちゃになったとかなんとか、少し勇者くんが可哀想でもあるがそんなの知ったことではない。


「ルーシェ!こっちも手伝ってー!」

 掃除をしていた俺に母が声をかける。


「はーい」


 ともかくだ、転生はうまくいったのでひとまず安心だ。それに今回の体もなかなかにいいではないか、まだ9歳のちびっ子ではあるが母譲りの綺麗な黒髪にかなり顔も整っている。このままいけばかなりの男に成長するだろう。非常に楽しみである。




 母と一緒に掃除を済ませて食堂に向かうと、すでに父が料理を始めていた。うちの宿屋は朝昼晩に食事も取れるようになっている。それに父の料理は、このラーマ国では少し有名で泊まっていないお客さんもわざわざ食べに来るのだ。

 しかし、我が両親もかなり美男美女どうしである。父は茶髪で顔もなんかどっかの王子かな?って感じである。それに驚く所はまだまだあるのだ、母は普通だが父に関してはかなり強い、前世俺を殺した勇者よりも普通に強いだろう。どっかでドラゴンを倒しててもおかしくないのにこんな所で料理を鼻歌まじりにルンルンで作っているのだからなんともおかしな話である。今の俺が戦えば恐らく負けるだろうな、などと思いつつもなんだかんだで俺に甘いし元が優しい人なので安心だ。


「父上、掃除終わりました」

 掃除が終わったことをひとまず報告する。


「ルーシェよ、何度も言っているが俺のことはパパと呼ぶんだ」

 こんなことを言ってくるが、この人は俺を娘かなんかと勘違いしているのだろうか?今も持ち上げられてすりすりしてきている。


「父上、髭が痛いですよ!いや、やっぱりなんでもないです」


「おかしなことをルーシェは言うんだな俺は髭生えてないぞ」


 ほんとにこの人は30歳なのか?21の時に俺が生まれたって聞いたぞ、なんだよ髭生えてないって普通30歳とか髭濃くなってる頃だろ!

 とりあえず俺は変わらず幸せに過ごしている。10歳になったら冒険者というのにもなれるらしいので非常に楽しみである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全てを得た魔王、疲れたので転生を決断する! ていと @teto9089

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ