第15話:ロザリーンの過去。そして果たされるべき誓へ。
私の名前はロザリーン。ロザリーン・クライスと申します。
カンテルベルック王国にある小さな村、【ヴィクトールルファー】のとある平均的な家庭で生まれた庶民の出でしたけど、8歳の頃で魔力量と魔法の才能が村人の中で
一番抜きんでた私の【素魔法使い(マギカリアン)】としての素質が見込まれ、直ぐに地域を統べる領主様であらせられるエールゲラリア侯爵家に多額でお金で引き取られ、
それからはポーリンヌお嬢様のメイド兼従者として仕えるよう旦那様に命じられました。
なんでもポーリンヌお嬢様のこれからの成長を促していくためには身の回りの世話だけじゃなくて訓練試合とかにも彼女と同格か差の空いてないマギカリアンが
側に置いた方が便利かと仰られましたから。
8歳だった頃に、お嬢様と初めて出会った日のことを今でも鮮明に覚えてますよ。
あの時は.........
エールゲラリア侯爵領である【エールギア地域】にて.....
コンコン!コンコン!
「ポーリンヌ~!何してたの?遅いわよ~~?」
お部屋の中に入ってきたのは金髪をしている子で、私と同じ年齢に見えます。
「うぅぅ...だって、あさ早くおきるの苦手ですもの~~。母様ってばなんで下僕との自己紹介の予定を昼食の後に変えてくれないんですの~?」
「黙りなさい娘!自らのために尽くしてくれる者に向かって『下僕』だなんて言うのは貴族令嬢としてあるまじき行為なのー!」
「だって~~本当は従者だなんて必要ないと言ってるんですのに~~!なんでよりによってわたくしの素魔法使いとしての能力がやっと上がってきたこの時期に
つけてこようとするんですの?要らないって何度も言いましたのに~~~!」
尚も駄々をこねるポーリンヌお嬢様に、
「お前をいつも独りにすると、現状に満足するばかりで自身を改善したり、己の価値を見つめ直したりする刺激が得られないからだよ」
「ア、アナタ~!」
私の肩を後ろから両手で添えたエールゲラリアご婦人様が振り向いて反応したのが、この屋敷と家庭のご主人様であらせられるエールゲラリア侯爵様です。
「お、お...父様...」
さっきの勢いがどこに行ったのやら、自分の父親が部屋の奥から備え付けられたドアから入ってきたのを見た途端、急に凍り付いたかのように小さな声だけ絞り出して
硬直ぎみになってます。まったく、何も悪いことしてないならどうしてそんなに怖がるのって最初は思いましたけど、段々と旦那様を知っていくようになれば、理由が.....
「あまり母さんを困らせるな、ポーリンヌ!我が家は規律を重んじるという伝統に沿って早朝から用事に臨むべしと決まっている。だから、文句ばかり言わずにこれから
お前のために仕えてくれる彼女に挨拶しろ!」
「は、はひー!お父様~!」
旦那様からの怒鳴り声がそんなに怖かったのか、びくっと弾けたように直立不動な姿勢になったと同時に真正面に立っている私に向き直りました。
「あ、あの...初めまして。わたくしはポーリンヌ・フォン・エールゲラリアですわ。これからわたくしの日常の世話をしてくれると聞いていましたけれど、名前は何と
言いますの?」
「私はロザリーン・クライスと申します。エールゲラリアお嬢様がもっと成長できるように、旦那様とご婦人様に運よくもお見立てて頂いて、この屋敷へ引き取って
頂きました」
「へえ~~。わたくしに仕えるために連れてこられたんですのね?....はぁ~~、母様もお父様もいつもわたくしを自由にして下さらず束縛してこようとするんですわよね?
」
「束縛ではなく『刺激』だ。身の回りに同等な実力と同年代の模範的人物が常にいないと、成長速度が遅くなると危惧していたのでな」
「それで、父さんと議論していた末に結論が出てたのよね~~。 ポーリンヌに匹敵するか、もしくは実力の近いマギカリアンをあんたの従者としてつけるって」
両親からの説明に、
「...あら、そうですわね~?なら、そこのあなた!」
「はい!なんでございましょう、エールゲラリアお嬢様?」
「家名ではなくわたくしの下の名前で呼んでくれませんの?お父様と母様にかぶって困っちゃうじゃありまませんこと?」
「し、しかし....」
「あなたはお父様達の直属の部下とか家来ではなく、わたくし直下の従者として仕えるよう実家から買い取られてきましたわよね?」
これも痛いところをつかれたような気がする。確かに実妹もいた私の【クライス家】での家族としての暮らしに不満がなく普通に愛されて育ってきた記憶がありました。
ですが、領地様であるここの旦那様から多大な金貨を提供された両親はそれで眼が眩んで後先考えずに私を売りました。
最初は少しだけの怒りを覚えました。だって、今までは何の文句もなく私と一緒に家族として幸せに暮らしてきたのに、領地様からいきなり莫大な金額を
提示して頂きましたとはいえども速攻で躊躇いなしで私を売り飛ばしたんだもの!
それで少なからずな理不尽も感じずにはいられませんでした。
「左様でございます、ポーリンヌお嬢様。ですが、僭越ながらも申し上げたいと思いますが、私は買い取られたままにして連れてこられてきた訳ではなく、お慈悲深い
旦那様だけは私の意志も汲んで下さった上での決定でもありましたよ?」
嘘ではなく本当のことです。両親だって、速攻で私を領地様へ売りたいとの意思を示しましたが、現場にも出席したエールゲラリア侯爵様は両親のはしゃいだ様子を
見て一瞬で蔑んだ表情を浮かべるかと思えば、次ぎには私の意見と意思表明も求めて承諾を仰いできましたので。
だから私の意志も含まれて、あの金銭欲まみれなクソ両親どもに別れでもして、私の意思をもっと尊重できるここの侯爵様に引き取られた方が何倍もマシだという
結論に至りましたのです。
「お父様は真摯で紳士的な人ですから、そんな当たり前なことをしてもらって当然でしてよ~~?お~ほほほほ!」
自分の父親が褒められてお鼻が高い様子でなによりでございます。
「では、私の日常のお仕事はどんなものになりますか、割り振り表をお見せして頂けませんか?」
「え?..割り振り表..?あれー?お父様からの言いつけとか事前情報が来ませんでしたの?」
「ああ、それに関しては手つかず状態にしたよ、ポーリンヌ!お前の自立を促すために、お前自身が自分の従者に対してどう扱うのか、よく考えてもらって欲しいからな、
ぎゃほほほ!」
「いずれ頂点に立つ者はいつもそうやって成長していくものよ?他力本願せずに、自分の頭で考えて、自分の行動で進んで、何が一番ためになるか自力で確かめて
いくものなのよ~?」
「大丈夫だポーリンヌ。お前も立派なエールゲラリア侯爵家の一員だ。ワタシの誇りとなれる存在に育っていくお前を、間近に観察してみるのも一興だ。ほほほう..」
「もう~~!お父様母様ってば、実の娘に対して無責任過ぎますわ!」
「ごめんな?いつまでもお前の面倒ばかり見てはおられんからだ。ロザー!」
「はっ!何でございましょう、旦那様?」
いきなり呼ばれたのに驚いたけど、直ぐに我に返って速やかに返事しました。
「そいつの指示には常に従うよう気を付けるべきが、あまりにも滅茶苦茶な要望に対してだけは無視するといいぞ。むしろ、そういう場合になった時こそお前の方が率先
してポーリンヌに正しい道を教えてやってくれ。いいな?」
「畏まりました、エールゲラリア侯爵様!」
「では、退室するが良い。また後でな、ポーリンヌ!」
「はい!」
その後、領地様の部屋から退室した私達はそれから、何度かの喧嘩や行き違いが続いていましたけれど、一年間も立つと、徐々にお互いの心持ち、気質とか為人や
習慣に慣れて、最終的には打ち解けるように友人同士としての感覚も自然に感じるようになりました。
ですが、彼女の従者になったその日から約4年後の頃に..........
「ううぅ...お父様も母様も酷いですわ!わたくしのロザをあそこへ転入させるだなんてーー!ロザ....元気にして下さいですわね、わたくしがいない
『召使い作法の集中訓練塾』の中でも...」
「お嬢様...お気持ちは分かりますけれども、こればかりはしようがないですよ。メイドとしての作法、マナーや心得をもっとマスターするためには集中的で学べるあそこしか
できないことなんです。ですから...」
「ろ、ロザがいない間でも元気にしていて、退屈の時でも気に入らない時でも我慢して、強く自分を持てって言いたいんですわよね?」
「相変わらず察しが良いですね、我が主のポーリンヌお嬢様!そうですね、何があってもー」
「また会いましょう、ですわよ~~」
「承知致しましたよ、お嬢様!私はいつまでもー」
「友達同士ですからね!周りから主人と従者の関係に見えても、実際はずっとそれ以上ですものね~~!おほほほ~~!」
「そうですよね!ふふふふふ~~!」
「元気にしていてね、ロザ!あなたがいなくなると寂しくなるかもしれませんけれど、頑張って勉強に取り組んでいて下さいですわね!」
「もちろんです!」
別れの挨拶の際に、私達はお互いをハーグし合って、最後の親愛を深めるべくずっとくっついたまま離れない。お父様達がきつく注意してくるまでの間に...。
それから、『召使い作法の集中訓練塾』に全寮制で暮らしてきて、周りの子達とまったく馬が合わないばかりで悩んでいた頃に、
「それは違う食器なの。こっちが正解よ」
私がフォークではなく、スプーンでスパゲッティを口に運ぼうとするのがいけなかったのか、そう注意してきた茶髪ツインテールな娘。
「...あ、ありがとう、エルサさん!私、こういう食べ物って今まで食べたことがなかったから、てっきりスプーンで食べるものかと思っていましたよ」
「いいのよ、ロザリーンさん!あたしも最初は間違いばかり起こしたから、それぐらいで礼を言われるようなことはしていないと思うのよね?」
「あははは...注意して貰ったけでもありがたいですし、お声をかけて下さった時点でもう感謝しか出来ませんよ」
「ひひ~あんたも律儀で礼儀もちゃんとしてるようでなんか好きになっちゃうかも~!よし~!これからあたしたちって友達でいいよね?ね?」
友達になろうかという誘いに対して、
「はい、喜んで!」
「いえーーーっす!!友達第一号ゲットなのーー!!一か月間で孤立してきたからマジで嬉しいよね、友人ができたのって!」
よほど嬉しいのか、満面な笑顔を浮かべて私の両手を握ってきてぶんぶんと上下に揺らしてるけれど、はしゃぎすぎじゃないですかね、それ?
と、それから何か月間もお互いをよく知るようになっていったので、私とエルサとの関係が順調に良好となっていき、ポーリンヌお嬢様以外にも同年代の
気を許せる人ができて幸せだと感じるようになったばかりの頃に、とある日で『それが発覚した』!
「ふ~んふふん!ふ~んふふん~!」
鼻歌を漏らして機嫌がすこぶる良い私は、その日の最後の授業が終わって、寮に戻る途中でなんとなお風呂に入りたくなって、学生全員用の露天風呂に
入ろうとしたらーー
「ーーえ?」
「.....ん?」
目の前には裸となっているエルサが見えたんですが、どうしてなのか、『体つきと2か所のところが変』と感じるんですが....
「ーーー!?エルサ.......貴女はー」
「あはは!それでね、それでね、先生がそう言ったんだけど、あたしはそれでー」「ああ、またその話なんですか!?いつもそればかりで飽きちゃうんですよ~~!」
「「ーーー!?」」
まずい!背後で声がしたかと思えば、他の学生さんがこちらへ入ってこようとしてるじゃないですかー!このままじゃ、エルサが!
「むふ!」
(静かにして下さい!今の姿...彼女達に見られたくもないでしょう?」
「むふ!むふ!(うん!うん!)」
(宜しいですね。じゃ、そこの岩陰へLet's Goですよ!)
象さんがとある一部から生え出てきた全裸のエルサの右手を握りながら、足早に彼女...いいえ、『彼』を安全な物陰である岩の隠れた側に逃げ込んだ。
私がまだ裸になっておらず、なんとなく水着で入ってきたことだけは不幸中の幸いでほっとしますね。
それから、お互い無言のままで入ってきた新客の彼女達が退場していくのを1時間近く待っていると、やっと使用時間終了もうすぐってところになってる時で、彼女達がようやく
出ていった。
まったく、運よく私だけじゃなくてエルサもそれなりにマギカリアンとしての魔力量があるから、お手洗いへ行く必要がないからといって災難でしたね、ここへ追い込められ
出てこないようにされましたことが。
「さて、エルサさん、貴方はどういうつもりでその格好で通ってきてるのか、説明はして貰えますよね?」
有無を言わさぬ気圧で微笑みながらの冷たい視線になってみると、
「~~!も、もちろんなのよ、ロザ!あたしは実は....」
それから、彼が言うには、自身が男性として生を受けたとしても、何故か女性としての『心』の方を強く感じるようになって、5歳以降になってると、急に女物の服を好むよう
に着たいと思えるようになって、それから他の誰にも隠れてずっと女装するという密かな楽しみを続けてきましたけど、
「でも、やっぱり納得ができないのよね!なんであたしが好きで着たいと思ったり、女性のように振舞おうって感じるようになっても、周りが冷たい目で見てくるの!?」
彼の話によると、8歳の時に親たちにそれを見せたことは何度もあったり、一番の親友だと思っていた友人にも似たような女物の格好で会ったりすることがありましたけど、
悲惨にも気持ち悪がられたり侮辱されるばかりでまったく相手にされなかったようです。
「ですから、メイドとして働きたい貴方が忍びの恰好のそれで、ここへ素性を偽って入学してきましたね?」
「うん!いけないことだと思うのだけれど、あたしの心はもう女なのよね!こんな胸板と下の見苦しい『あれ』があるけれど、こんなあたしでもメイドになって、どこかの
素敵なご令嬢様の元で働きたいのよね!」
「ええ?『殿方』にではなくて、『ご令嬢様』ですって?」
「はい!自分は大の男嫌いなので、もう彼らとは関係のない生活を送りたいと思うの!」
「.........」
その意見と心情にまでは共感できませんでしたが、よくよく話を聞く限り、女装したのを両親に見せた後、その直ぐの何週間後かには父親からの....
言い方が正しいかどうか分かりませんけれど、なにがしらかの『性的虐待』を受けたと聞かされましたので、次の日の夜で寮内の私の私室を訪れた時に、エルサがー
「ーー酷いですっ!その傷跡は!!」
そう。エルサがシャーツを捲って背中を見るよう勧めましたので、見てみると本当に酷くて目をつぶりたい程の無情で残虐な拷問の痕跡が見られた。
「あの頃、あたしはまだ魔力量が微々たるもので、マギカリアンとしての素質がまったくなかった頃だからか、それで身体の損傷耐性が十分なものじゃなかった。
だから、父が....」
ぎゅ~~っと!
たまらず、涙を大量に溢れ出させた私は彼の気持ちを自分のそれと同調したかのように、強い同情、悲哀と切なすぎる感情が洪水となって爆発したのを感じました!
「もうみんなまで言う必要がありません!これから、私がいつも側についていますから、どうか強く生きて欲しいです!私と共に!」
「......ロザ...うぅぅぅ....わああぁぁ~~!!!ひくっ~!うぐっ!あああはぁ~~うううわああああああああぁぁぁ~~~~~っ!」
彼も私の抱擁を受けて感情が揺さぶられたのだろうか、くぐもった声をこぼれてくるかと思えば、次は号泣してきました。
今まで辛い思いをして痛かったり、悲しかったりしますよね!もう自分の体験であるかのように心に響いてきましたので、もう心配も不安も必要ありません!
これから、何があっても、エルサにだけは誰からも傷つけさせたりはしないと誓います!
「エルサー!もう大丈夫です!私がこれからずっと貴方の側から離れたりせず、ずっと親友同士で一生を過ごすと誓えますので、どうか...嫌な過去は全部忘れ去って、
良い思い出作りだけを心がげて、生きていきましょうね!」
「ロザぁぁ~~~うわあああぁぁ~~~んん!!もう~~痛い思いは嫌なのぉぉ~~!だぁかぁ~~らぁぁ...」
「ええ、分かりますよ。エルサだけは私が護ります!何かがあっても!」
それから、いっそう親しくなっていった私達は公共の場でもプライベートな場でも一緒になる時が多くて、数えきれない程の幸福感いっぱいのひと時を過ごしました。
13歳だったのにも関わらず自分の初めての接吻も、彼という素敵な恋人に捧げました。そうです、私の唇という名の『食べ物』で召し上がって貰いましたよ。
ですが、運命はいつまでも残酷に終幕を演じてきます。そう....あまりにも残酷で、理不尽極まりないおぞましさで!
.................
それから、私が15歳になった3年以上も経ってきた『召使い作法の集中訓練塾』の職員室にて:
「エルサが家の事情で自主的に退学したとはどういう意味ですか!!?」
「「「ーーー!?」」」
大声でエドワード先生に訪ねてしまったことが悪かったのか、周りの職員達から一斉に視線を浴びせられた。すみませんがもう居ても立っても居られないほど憔悴しきってる
んですっ!私の心も心理も!だって、2週間でエルサが学院のどこにでもいないと探し回っていたのに、学院のあっちこっちへ聞き回りに行ったりしても行方は知らないと
言われてるばかりなのに、挙句の果てにこれだとはどういうことなんですっ!明らかなにきな臭い何かが蠢きだす不吉な前兆の気がします!
「だから先も言ったじゃないか!?エルサの家庭は庶民の出だから、学費の支払いが6か月間も滞っていたせいか、期限内の2か月後までに決済する努力を
提示できなければ退学にするとの忠告が学園長から下されたのをきっかけにか、まだ2週間も経ってないのに向こうから止めたとしか....」
でも、明らかに変な話すぎるじゃないですか!
だって、エルサは自分の意思で素性を偽って偽名と偽の家名や正体を用いて入学してきたんですから、学費も協力者である『同類のおばあちゃんに』が
手助けして払っていたと言っていたはず!そんな形で退学させられたとなるとー
「ーー!?」
はっとなった私はすぐ職員室を飛ばして走り出しました。
何か嫌な胸騒ぎを感じ始めたので、急いで学院の外へ出ようとするとーー
「ーーーーーー!??」
な、な...............
言葉を失って立ち尽くした私。
自分の目が何を見ていたか、何分かで突っ立って現状を疑っていたか分かりませんけれど、あれは........
「.....一体....どこで、それが....」
そう。学院の外で舗装された道路には一通の大型写真が床で堂々と置きっ放なしにしてあって、中身の画像には......
無残で見る者の心を絶望に突き落とす程の類で、『斬首された血だらけのエルサの死体が写っていたのですっ!
「ああ....ああ...こ、これ.....夢...ゆめ?いや、いや........これは!夢なんか.....でも現実?....ありえない!いやです!あれはきっと誰かの質の悪い
悪戯............いや!.........
嫌ああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
悪夢にでも突き飛ばされてきた思いと共に、必死で現実へと舞い戻るべく行く当てもなく狂ったようにどこかへと狂人のごとく叫びながら半狂乱で走り出した私
だったのです。
それから、何か月間かで精神病で治療を受けてきたか覚えてなかったんですが、回復した頃には一つだけのどす黒くて闇のような暗い感情が私の中を
支配し始める。
そう。その感情というのは、二つの言葉で表す以外にない:「憎悪」と「復讐欲」です!
あれから、色々調べましたけど、どうやらエルサを殺した野蛮なる悪魔どもにはエールゲラリア家と密接な関係にある分家のアルフレッド子爵家や
ダンジーグ伯爵家のどちらかの手の者だということらしい。そして、私の行った個人的な調査の末で明白になったのは、エルサを拷問の後に斬首した
『とある国内の武器庫』から出てきたのが、顔立ちがあどけないながらもどこか見た目とそぐわない狂った言動と表情をしていた小柄な女の子らしき者までいる様子でした。
なんでも『遊んだ後に殺すのって楽しいよねぇ~~あははっ!』などというふざけた発言もしてやがったって聞いていました。
私のエルサをあんな残虐な扱いにして『楽しい』ですってー!?絶対に許しませんから覚悟して身をもって百回死んで償った方が良いのですーー!!!
『召使い作法の集中訓練塾』は侍女やメイドといった仕事に就きたい者のためにのみ設立した特化した学び舎。但し、ここでいう『召使い』という定義には身分の
高くない人のための使用人扱いという訳じゃなくて、もっと高級な方のために仕える者達の教育のために設立された学院だ。つまり、貴族や王族の身の回りの世話
をする者には然るべき礼儀、作法と礼節を身に付けてもらうために、この学び舎で習っていくという過程に。
なので、エルサの殺害に関わったのはそのどちらかの分家に仕える予定である侍女見習いか、もしくは何かの動機でエルサを亡き者にしたい分家の男共による犯罪
だったのでしょう。
公の発表では、警察隊の調査ではエルサの殺害を企てたのがカンテルベルック王国に紛れ込んできた外国のスパイとのことだったんですけど、私も含めて胡散臭い
だと思う人も少なからずいるので、みんなが半信半疑でした。
ですから、私が重かった精神患者であったという名残もあってか、可愛い女装男子を見ればトラウマになるどころかすごい情愛や熱情が沸き起こって、自分を慰めたく
なるのです。それと同時に..........果たすべき復讐を遂げるためにそれから一年後近くで16歳となった私がポーリンヌの元に戻ったと同時に、首謀者への
復讐という崇高なる使命を未だに強く念頭に置いて生活してきました。
いずれ復讐を果たす時が来れば、自分の中から微塵の迷いもなくすがために....。
そう。私のこの秘めた暗い怨念についてポーリンヌに打ち明けないようにしてきたのは、犯人を迅速に見つけ出して地獄へ送り殺せるように、エールゲラリア家と密接な関係にあるアルフレッド子爵家とダンジーグ伯爵家
の者との接触を増やして首謀者への足掛かりへと近づけるためだからです。
だから、その事件について知らされたポーリンヌといえども、親友であるエルサの殺害に加担したのが分家両方のものである可能性が高いと様々な調査のヒントで
確信したということだけは言わないようにしてきましたのです。
なので、ここのイラム王国での用事を済ませたら、カンテルベルックに戻ったが最後だと思いなさい、悪魔どもよ!
因みに、あの頃のエルサは既に一人前のマギカリアンとなって私ほど強くないとしても、そこら辺のマギカリアンよりは格上な実力を持っていたはずです。
つまり、彼を殺した何者かがかなり強力なマギカリアンであることは容易に想像することができますね。
でも、どんな力を誇っていようが、アビミャー師匠の手を煩わせるまでもなく私の手で直々に地獄送りにして差し上げますよ。
もちろん、もし適うのであれば、復讐が達成された暁に私の傷心もいつか癒してもらえる新たな女装男子.......いいえ、それも高望み過ぎますかぁ.....
だって、私はエルサを誰から絶対に守ると言っておきながら、結局は誓を最後まで突き通すことができない極悪罪人ですから!
私が誰かとの直接的な施しを受ける資格さえ持たないような失敗者でもあります。
ごめんなさい、エルサ!
でも、必ず貴方に凄く酷いことをした彼らに正義の鉄槌を下ろしますのでどうか天国から御覧になって下さいね?
絶対に殺します!悪魔共よ!よくも私の可愛いエルサをあんなに酷く虐げたんですね?
でも安心なさい。
それの100倍の苦しみと苦痛を貴方共の身体に刻みながらご奉仕させて頂きますので、ずっとお楽しみにしているが良いのですよ、おふふふふふふふ...........
そしてその後は自分も快楽の奈落へと自身で舞い踊っていき、終わりのない自慰の宴を終えてからエルサの後を追いたいと思います。
でもその前にやっぱりもう一度だけ何とか蘇らせてもっと苦しませてから殺したいです、あの屍と化した悪魔共の祝日でも!
アビミャー師匠の力を借りるまでもなく、この私の力だけで血祭にして差し上げますよ!
私の可愛いエルサをあんなに恐ろしくてむごい状態にした罰として、何度でも死ぬが良いのです!ふは~!ふふふふふはははははははは~~~~~~!!!
誰かが見てれば、私の顔には絶対に残忍で冷酷な微笑を浮かべると確認できたに違いありません。
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