第14話: 王子からの依頼。そしてメイドの異変。

野営の中、狩りをしてからの午後のおヤツ時間の食事後.....



「では、ボクが何故そなた方がここにいるのを知っていたか、何故ナフィズールの正体が分かるのか、そして何を依頼しにそなた方へ接触してきたのか、すべての

疑問点を洗いざらい説明するからよく聞いてくれ」

居住まいを正したイーシュなんちゃって王子はそう前置きしながら、この大きなキャンプの中で床に座っている俺達5人の内に彼だけが向こうの位置で腰を下ろしていて、

4人からなる俺達はここの横一列になって聞き入る形になる。まあ、王族だもんな。この座り方じゃないと立場上はおかしくなっちゃうしな。


「その前に一つだけ聞きたいことがあるけれど、いいかな?」

「どうぞなんでも聞いてくれて構わないよ。ナフィズールのリクエストとあらば努めて答えるつもりでいるから」

「じゃ、そのウェブ型のセミロング髪って、もしかしてカツラなの?それとも地毛?」

ずっと気になったことなので、聞いてみることにした。


「おう、これか!?これはカツラなんだけど、ボクの地毛ときたら、ほら!」

カツラを取った彼の頭を見ると、まったく同じ赤色の髪が見えたのだが、髪型はショートヘアーになってセンター分けな前髪となっている。

その女みたいな綺麗な顔と相まって、じ、実に様になってるなぁ、それ!


「殿下の地毛ってそんな風になってるんだ~?か、かっこいいと思うよ、そのスタイルは。あんた達もそう思うだろう、ポーリンヌ、ロザ?」

彼女達を王族の前にしても話す勇気を与えるべく、なんとなく話を振ってみたが、


「.....は、はい、に、似合ってるとぉ..は存じ..ておりますわ、わよ、殿下。ロザリーンもそう思いますわよね?」

「......その通りですね。ワーリッド殿下がお、おカツラをお被りに...なられていようが地..毛のままで..いらっしゃられてもすべては素晴らしくてお壮麗な

壮観に存じますよ」


ふむ。まだぎこちない面もあるが、メイドに至っては震えながらも健気に褒め称えようとする努力を見る限り、どうやらこれからの改善は期待大のようだな。

というか、ロザをよく観察してみたら、ブルブルしながらもなんか顔が赤いようだけれど、気のせいかな?それに、このキャンプ内に入った途端、急に王子への

視線が集中的になっちゃってるし、どうしたのかな?


「はははは~~。お世辞でも嬉しいよ、嬢さん方!では、ボクのカツラとか外見の話はもういいとして、さっそく本題に突入するね。日も暮れそうだし、夜深くになる前に

すべてを話し終えたいから」

ちなみに、キャンプは二つまでも立てられてるので、俺と王子はこのメインな大きな方で寝過ごすことになるのに対して、女性陣のポーリンヌ、ロザリーンやファティーマは

外にあるもっと小さなキャンプで寝泊まりすることになった。

王子や従者のファティーマ曰く、普段の彼らの関係はストイックすぎて、絶対に主の側から離れずにずっと付き添ってきたファティーなんだが、今夜だけは特別だというように、

王子直々からの厳しい命令で女性キャンプへと移して寝てもらって、彼を俺と二人っきりのここで寝過ごすことを了承させた。


『こんな莫大な魔力を持っている規格外な奴を前に、同じキャンプでも10キロ離れたところにあっても同じことだ。ファティーが何を警戒してかかっていようが彼を前にすれば

赤子も同然な存在に見えるよ。だから、彼の善意を信じてボクと一緒のキャンプで寝てもらうことを受け入れてくれ』って王子からのリクエスト。


なので、渋々ながらも王子と同じキャンプ内で寝留まることが出来なかったファティーなんだが、はてさて取り合えずは王子の話に耳を傾けることにした。


「まずはボク達がどこからそなた方の正体についてなんでも知ってることから始めるが、これに関しては一年も前から、わが国でイルラヤー神殿にて勤めてるリールリアー

聖女から密会へ誘われたことがあるので、ファティーの同行を了承させた後は色んな衝撃的な話を聞かされたからだ」

「その通りに御座いますね。お話の内容には遥か昔の歴史的な事件も含まれたので、その中には至高にしてして唯一無二の英雄的存在だった

『極黒天魔英』アビミャー殿の奇想天外なご活躍の数々も聞かせて頂きましたので」

「ナフィズールがどれだけたくさんの人々に貢献していた、その活躍ぶりが熱心に語られたから正直いうと長い間での洗脳教育かと見まがう程のものだったよ!」

「聖女様の....失礼ながらも熱狂的な語らいでどれ程のアビミャー殿大ファンであらせられるか容易に伺われますな...」


ふむ、なるほど。道理で俺に関しての情報がそれなりに身についているんだ。ん?でも、なんかぱっとしないところがあるように思えるんだけど......

あ!ああ、そうだ!それ!


な、なんで王子達にそんなことについて知らせたリールラなんとかって聖女が過去にあった『俺の知る本当の歴史』という詳しい情報まで知ってるんだ?

違う時間軸(タイムライン)のリーアバッスじゃなかったのかよーー!?


「そ、それは、は本当なんですの~~?ワーリッド殿下?」

俺の動揺を代弁してくれたように、ポーリンヌが自分の王族に対する苦手意識を脇に置いてイシュ王子に聞いてみたようだ。

どうやら彼女も俺と同様に、謎だらけの聖女についていぶかしむ様子だ。


「もちろん本当だとも。リールリアーはボクに嘘をつくメリットもないし、それに彼女の言った言葉を信じてここまで待ってきたら、実際にその前代未聞な魔力量を持っている

そちらのナフィズールが我が国に現れたじゃないか。彼女の予言通りに、一年後ぴったりにね」

「『一年後の【魔道歴300年】に、このイラム王国の辺境町である【アールバルクハー】にて、かつて存在していた【極黒天魔英アビミャー・ゴラム・ナフィズール】がその身その

姿を現すのであろう』って言われましたので、殿下と二人で忍びの恰好でずっとこの町で潜伏しながら滞在してきましたが、今日という今日で丁度さっき騒動があって警備隊に聞いてみたらーー」

「あやしい外見の外国人らしき3人が魔生物討伐に向かったと知るようになったんだな?」

「うむ。そしてこの鉱山にやってきてみれば案の定そなた方こそ聖女の指していた【極黒天魔英ナフィズール】と同行中のカンテルベルック令嬢二人だということが

分かって今に至ったんだよね」


はは~~。運命とはよく巡りに巡っての偶然の重ね重ねだ。いや、そもそもその『偶然』こそが神々が裏から与えもうた『お導き』そのものかぁ...


「....でも..なんでその聖女とやらは昔に実在した俺の事を知っていたの?....それに、こちらのポーリンヌとロザリーンが説明したところによると、過去に

【極黒天魔英】という俺を指しての伝説級魔術師がどこにいても聞いたり読んだりすることがなかったというようなことを言ってたんだけど、その聖女が俺に関する情報は

どこかで手に入れたんだ?」

少なくとも、沢山の文献や書籍を漁っていたことのあるメイドことロザリーンでさえ聞いたことがないと断言してくれたし、紙の媒体での記録に頼らずしてなお知っているとなる

と......


「ま、まさか、リールリアーさんが『聖女』ですから、この地域神であらせられる『アルメディア女神』から彼に関する情報を直々にお声をお聞きに伝え賜ったからですか

ーー?」

ロザの問いに答えるように、王子が彼女の方へ向き直ると、


「そうだよ。普通に本や文献を読みまくりそれ関連の情報を探していても出てこないから、過去にあった『本当の真実』というのは天界や霊界に君臨してきた神々のみが

詳しいからね」

ん?なんか響きが妙な気がするけど、もしかしてー?


「『本当の真実』って何なんでですの、ワーリッド殿下殿下?少なくとも、わたくし達が歴史を学ぶ上でアビミャー師匠みたいな漆黒な肌色をしていた種族は人間界の

どこにもなかったとの事実が記されましたので、どういう意味でそれをー」

「実は、殿下が仰るには我々のよく教育されてきた歴史学には矛盾点や改竄された情報がそこかしこに鏤められており、『本当にあった真実に基づく事件』の数々が

たくさん隠蔽されてきたと聖女との会談で知り得た情報で御座います」


「「「ーーーーーー!??」

ファティーマのしれっと言い放ったことに対して、驚愕で何も言えなくなった俺達3人。

.......ん?

ってことはーーー!?


「おい、ポーリンヌ、ロザーー!今の【魔道歴300年】の世界は実は俺のいた世界とは別の時間軸にある異なる歴史を刻んだものだと説明したはずが、

王子達が今しがたああいうことばかり言ってたし、どっちの方を信じろっていうんだ!?」

「そ、それは.....」

「.....何故か私達も何がなんだかさっぱり分からなくなってしまいました....過去で本当に起こったことは実際に行って確かめる術もないんじゃどうしようも...」


王子の衝撃的な発言に困惑気味になっちゃってる二人なんだけど、

「まあ、信じられないと感じるのも無理ない話だしね。なにせ、今まで教えられてきたこととは違う事実を突き付けられたからな....」

「でも、わたし達と聖女様の仰られたことが紛れもない『真実』に御座います。信じるか信じないかはお嬢さん方の自由なので御座いますが...」


「「........」」

まだショックで何も言えないままとなってる困惑顔のポーリンヌとロザを差し置いて話を進めるように、王子が、

「まあ、過去のことは一旦置いといて、次の重大なことについて移るね。構わないのかね、ナフィズール?」

「..あ、ああ....どうぞ続けてくれ」


いつまでも二人が続きに集中できるよう唖然状態から戻るのを待つわけにはいかないので王子へ進めるよう応じた。


「ボク達の依頼についてなんだけど、確認のために聞くけどナフィズールって今はその譲さん方の護衛を務めていてボクの兄との会談が待つ首都での会議へ無事に送り届け

に行く任務についてるよね?」

「ええ、そうなんだが?」

「ではそのついでにと言ってはなんだけど、ナフィズールにだけじゃなくてそこのエールゲラリア嬢にも頼みたい極秘裏な別任務を依頼したいのだが、構わないのかね?」


「「ーー?」」

顔を見合わせる俺とポーリンヌ。数秒後考え込んだ後、


「ポーリンヌ。あんたが俺を先に雇ってくれたんだから、どうする?」

「........そ、そう...ですわね....。まずは内容を聞いてからじゃないと、ですわね。殿下から.....」

なら、話が決まった!


「詳細を先に言ってくれ。内容次第では受けない場合もあるかもしれないので...」

「うむ。では、前置きから始めるが、ボク達の【イラム王国】で外交大臣の職務についている我が兄であるマーレック第2王子ってどう思う?」

俺ではなく、この世界に生きる現代人でありもっとも詳しいはずのポーリンヌ達の方に質問を投げかけた王子。すると、


「....数多くのご活躍を快進撃のごとくこの3年間でたくさんお見せになられたと聞いておりましたわよ?」

「いいえ、そうじゃなくて、彼の纏うオーラとその内なる秘めた思い。彼とは親しい間柄にないのは百も承知なんだけど、なんとなくそなたが彼の写真とか話を見たり

聞いたりすると、どういう印象を抱いているか教えてもらえるかい?」

「........これはこれはまたも抽象的なお質問なんですわね、殿下.....そう....ですわね。な、何となくなんですけれども、彼から感じた印象は....その...」

「底のない野望を抱いてらっしゃる、と.....言いたいのですね、お嬢様?」


ポーリンヌの逡巡を打破すべく遮ったメイドに、

「.........多分、それが..わたくしの勘違いであってほしいのですけれど....]

[正直に答えてくれて嬉しいよ、エールゲラリア嬢とクライス嬢。そなたの意見は如何にもその通りなんだ。ボクの次兄、メーレックは確かにその胸で大望を抱いており、

尋常ならざる才能と研ぎ澄まされた強い意志で我が砂漠の国をたった3年でより巨大な造船業と軍事的生産力を誇れるような国力に変えてみせたのだけれど....」

「.......でも、この砂漠地帯だらけのギーリガール大半島だけじゃなくて全体的な【ゴルベッズ小大陸】において一番の海軍や陸軍を持つようになってる今でも...」

俯いているファティーの沈んだ表情と同時に紡がれた呟きに、


「そう。例えこの小大陸ゴルベッズにおける最先端の軍事力を有するようになった我がイラム王国であっても、北の【モルトレーユ・ファレー】大陸における【大3栄強国】

のいずれかの国力や軍事力には程遠い差にあるのが事実なんだ.....。だから、それでマーレックが無理にでも何かに取り組んでより国力を増大させるべく、とある

恐ろしい計画を画策していてやっと実行に移そうという段階まで進めてきたのだ.....それも....」

「.....そう。殿下の名を受け賜わり、わたしが単独で隠密行動を取ってきて調査を進めてきた結果、どうやら彼の【国力増大化計画】への実現の第一歩として、先に

やらなければならないならない『最初の段階』というのは.....」


ファティーの緊張感たっぷりの声色と厳かな面持ちで言われたことに続くように、王子が、

「王位継承権の簒奪から始めそうだ。どうやら、正確な情報は未だに定かではないようだが、マーレックはいずれ今年以内に王位継承権にある我が愛する長兄

のナッシール王太子を暗殺するつもりだけじゃなくて、無慈悲にも父である国王陛下、アズラム・イール・ワリーッドまでをその手にかける、外道極まりない計画を

練っていたことをファティーが証拠を掴めて知らせてきたのだ」


....................

どうやら、依頼の内容が見えたきたような気がする。


「........」「.......」

ポーリンヌとロザの顔を交互に見やっても、俺と同様になんか複雑そうに考え込んでいるような様子だ。

ここは男として、毅然とした態度を保つまま、訊ねる。


「なぜ血の繋がった実の家族に対してそのような酷い計画を?」

まずは導き出されるであろう最後の結論を急がずに、聞いてきた。


「父や王大使は至って穏やかな方で、あまり厳しくなく好戦的な政策も取るつもりは毛頭にないことだからだよ。更なる国力増大を目指すメーレックなら、新たな資源に

富む土地や技術的な進歩を促してくれる人材が喉から手が出る程に欲しているはず。だから.....」

「東の最も豊富な地域と領土を有する国々へと侵略を開始するために、現国王と陛下を継ぐ予定であらせられるナッシール王太子殿下がお邪魔だと感じるはずで

御座いますな」


やはりか。いつぞの世界にもありきたりな後継者争いに辟易としながらも、


「それで、俺達にマーレック王子の計画を阻止してくれってことか?」

「話が早くて助かるよ、ナフィズール!まったくその通りだよ。....もちろん、彼を殺せ、などとは言わない。なにせ、実の家族同士で決着をつけるべき最後に外国人だある

そなた方に手を下してもらうようなことはしないつもりだ。ただ.....以来としては彼のその非情なる愚行を実行犯で止めてくれるだけでいいんだ。ファティー!」

「畏まりました。殿下が仰られたように、彼が実地で殺害計画を実行しようとする現場に、アビミャー殿達がマーレック王子を無力化して頂けるだけで良いし、それだけで

わたし達に協力して欲しいので御座いますけれど、如何で御座いましょうか?」

「ボクの兄が暗殺に成功して国王になった不吉なる黄昏がやってきたら、我が愛するイラムが大きな戦乱時代へと突入させられるのだ。なんとしても最悪な結末になる

前に止めなくては!だから、ボク達に力を貸して欲しいんだ。どう....かな?」


「......ポーリンヌ。.....どうする?」

雇い主に取るべき決断を尋ねる。

よく考えてみれば、彼らの事情はポーリンヌ達にとっては関係のない事柄なのだ。だって、彼らは【イラム人】であって、決して彼女達と同じような国に住んでいる

【カンテルベルック人】ではないのだから。他国の問題に首を突っ込んでいく程、お嬢さんたちは愚かではないはず。

彼女達はあくまでも、自国の利益となるべくここへ外国任務でマーレック外交大臣へ交渉しに来たのであって、決してここの後継者争いに巻き込まれ別王子の味方

をするためにやってきたではないはずだ。

だからー


「ご事情はよく分かっておりますわ、殿下。.....しかし、答えは....やっぱり常識的に考えて、..NO...ですわ.....」

そりゃそうなるわな。イシュ王子にはお気の毒かもしれないんだけど、俺達の国の問題じゃないしな。


「ワーリッド殿下には.....残念のはずなんですが、私達の立場を考えると....やはり、お言葉が悪くて済みませんけれども『他人事』のようなのですっ!どうか...大変

おこがましいお願いかもしれませんけれども、理解していただけると幸いです....殿下」

最後は恭しく地面に額を擦り付けて深く詫びている様子のロザリーンなのだが、ご苦労なことだな。自国の王族じゃないのにあんなに必死になって許しを請っているのって。


「.....やはり、そう簡単にはいかないんだもんね.....」

「殿下......」

落胆してる顔となってる王子と従者のようだけれど、同情して何になると言わんばかりな表情となってるポーリンヌなんだけど、なぜかロザリーンにチラ見してると、目が

潤んで深い悲しみを堪えてる様子なのだが、なぜそこまでして他国の王子の境遇にーー!?


「そもそも、殿下達のお話が......本当かどうか.....わ、分からないんですもの~~!だってだって、証拠はまだお見せしてなられてないんですのよ~~!で、ですから

、そのぉ.........」

びきびくしながらも毅然とした面持ちで言いたいことを言い切ろうかってところに急に口ごもって先を言えない様子なんだがー


「証拠なら御座いますよ?殿下、良いで御座いましょうか?」

「うむ。彼らに見せてやるといいよ」

「承知致しました!」

許可を得た従者は懐から小型な【映像記録魔具(シュライーツアー)】を取り出すと、


カチャーー!

地面に設置したら映像が浮かび上がって動画として再生される。


ずずずずずず........

......


「くはははっ!これであの無能な父と愚兄もろ共あの世送りにできちゃうって訳よな?」

「左様でございます、マーレック陛下!いつ実行に移すかまだ細部まで検討する必要がございますが、3か月間もあればすべての下準備が万端だと推測して

おりましたのでそこから遂行致した方が賢明かと存じております!」

「くくく...これで余が小さい頃からずっと渇望していた【イラム超大国化計画】も着々と進められているようでたまらぬ!....よし!ヤバール!」

「は、はいーー!何でございましょう!?我が偉大なる次期国王様であらせられるマーレック大王陛下!」


広大な灰色をベースにした簡素でありながらもどこかお高い肖像画や宝飾がいっぱい掲げられた一室に二人の男性が何やら良からぬものでも企てる様子で

ある。奥の分厚くて長いテーブルの前で腰を下ろしながらも両脚を載せてるところを見れば尊大な態度を惜しげもなく露わにしている様子だ。

夥しい程の装飾がついてある高級な服から察するに、ヤツこそがイシュ王子の言っていたマーレック第2王子のようだな。

イシュ王子という弟と同様、マーレックもショートヘアー型の赤い髪をしており、20代前半という若さ溢れる顔立ちをしているようだ。だが、センター分けなイシュ王子と違って

彼の前髪はいくらか垂れてきて全体的に髪の質は尖っている感じがする。狡猾そうに見える細い目も相まって如何にも悪そうなイメージだな。


「ーーーー!?そ、そんな...」

マーレック王子に対して少なからずのいい評価を持っていたポーリンヌから失望の溜息と呟きが聞こえてきた。

そういえば、ポーリンヌやロザって本、資料や映像でマーレック王子の顔を覚えていたようなことを言ってたっけ?


驚くべき光景を見せられてる彼女の表情は落ち込んでいく様子と同時に、どこか幻滅させられたことによって怒りを感じているのか、全身を震わせながら痛い程に拳

を握っている様子だ。


「2か月後には【ザバフィリアーッ首都】で開かれる予定の【大国際会議】があるだろう?父が前もって発表したイベントだからな」

「はい、存じておりますよ陛下。それで?」

「あそこには海外から外交任務として訪れてくる各国からの外交官や大使が集まってくる。で、その中から、父から聞いたところによると、表向きには鉱石、宝石と木材

商品の交易に関する折衝で会議へ参加しにやってくる『カンテルベルック王国』からの代表がいるが、相手がどうにも大人になりかけている18歳の少女だそうだ。確かに、

名前はー」

「ポーリンヌ・フォン・エールゲラリアでございますな?向こうのエールゲラリア侯爵家の一人娘って聞いております」

「そうだ。余が言うまでもなくお前も何でも覚えてくれるから仕事も減るって訳だな、くははっ!で、貴重な鉱石を彼の国から取り引きしてきたとはいえ、ただの普通の交易と

見せかけるあれは実は父との約束事を以前から果たしてもらうために実行へと移るための最終確認で【大国際会議】とは別に秘密裏なお城の一室で話し合い予定なん

だが、その内容とはー」


「我々の国でもっとも貴重なレングル鉱石の生産量を毎年、5パーセントでも輸出してくれって要望でございますな」

「くく...父との約束事だかなんだか知らないけど、この余が生きていることを前にしても怯むことなく回収しにくるとはな.....魔道具や魔道兵器において

強力かつ高質なデキを可能にできるのは世界中でたった二つの類稀なる鉱石が必要だ。その片方にはこのイラムとレネティーエネッス帝国内にしか発掘できない

【レングル鉱石】の使用が必須なんだが、そのような大切な資源をみすみす手放すような愚劣で低能な父の好きにさせぬぞ!」


顔を歪ませたマーレックは怒りを抑えるようにして小刻みに震えてる様子なのだけど、


「【大国際会議】の終了後、取引成立となる可能性大と見込むのが容易なので、早い段階で阻止すべく計画を早送りにするかどうか迷ってたが、完璧に準備も

整えていないみたいで依然として3か月後で『あれら』を始末するぞ!レングル鉱石を実際にカンテルベルック王国へ輸出されるまでもなく、その前に『無能共』に

相応しい地獄を与えてやろう」

「はっー!」

「....見ているがいい、愚鈍なる一族共。この余こそが我々イラム人を更に高みへと導いてやれる最高にして至高なる大王たり得る将来の覇者だ!くくっ...くははははは

はははっーーーーー!!!」


ずずず...ずずずずずず.........


....................


「「「.......」」」

真剣な面持ちと心境で静寂と空白画面に変わった【映像記録魔具(シュライーツアー)】を眺める後、


「.......ま、まさかマーレック王子があのような方だとは思いません...でした。今まで聞いてきた良い情報とニュース...そして...数々の功績や活躍をたった3年間

だけで...」

「ですが、いくら民のために尽くしていても、実の父と兄の殺害を望んでいるような非道な方です!功績も自分の名声上昇という名の『自己満足』のためにやってきたこと

としか思いませんよ!目的達成のために手段を選ばないという者に、ロクな関係が望めるとは思いません!それに、そんな家族殺しの『輩』に文字通りの大国ほどの

権力と軍事力を手中に収められたらー」

「他国を侵略して支配下に置いた他民族のことなんて....駒と奴隷も同然に扱われる運命にあるとしか...」


ポーリンヌとロザの意見に付け加えるようにして言った俺に、


「だから、彼がいずれその巨大なまでの権力を手に入れる前に、そして東の大陸全体...いいえ、世界規模な未曾有の戦乱時代へ誘われる前に、絶対に阻止せねば

なるまいと思ったんだけど、どうか協力してはもらえないだろうか?」

尚も頼み込んでくるのを諦めない王子に、


「ひとつお聞きしますけれど、マーレック王子の危険性はさっきの動画を拝見致しましたことから十分にお理解できることなんですけれども、彼の計画を止めるのは

ワーリッド殿下達の方だけでも.....お、お力不足だと仰るんでしょうか?」

どうやら少しだけ遠慮がちながらも段々と王子に対して慣れて自然のように話せるようになったみたいで安心しちゃう。それでこそ俺の弟子だ!


「うむ、まさにその通りだ。確かにファティーマはボクの切り札と称されても納得できるほどの魔力量と魔術熟練度を長年の厳しい修行で手に入れた

『天才型半分と努力型半分』の才腕と自負しているが.....」

「生憎と、わたしや殿下のマギカリアンとしての力を合わせて挑もうとしても、マーレック王子やその右手であるヤバール魔術研究学大臣の全力には到底及ばないと....

分析致しました」


なるほどな。でも、


「ん?なにか腑に落ちないような点を感じるんだけど.....殿下やファティーが二人がかりでも倒せないようなマーレック達じゃ、それだけで彼らには父親である国王や

王位継承者の兄を簡単にやっつけられる力を持っていても不思議じゃないように思えるけど、さっきの映像を見る限りまだ準備が整ってなかったとの様子が窺えたん

だけど、どうしてまだー」

「理由は至極当然のものだよ、ナフィズール!ボク達より凄腕な兵士が父達の側で護衛を務めているからだよ!」

「「「ーーーーーーー!!?」」」


な、なに~~~!?さっきの変異種の『魔生物』を一瞬で木っ端微塵にできたファティーマより上だとぉーーー!?


「まあ、正確には素の魔術による能力すべてではなく、最先端な技術あってこそ手に入れられた『奇跡』だとも言えるが...」

「ん?それってどういう意味なの?」

「お答えさせて頂きますね、アビミャー殿。国王陛下や王太子様の側にはそれぞれ一人ずつとってもバカ強い【聖銃騎士】が常に身の回りの世話もろもろで付きっ切り

で守護しているからで御座いますよ」

「ファティーの言う通りだ。【聖銃騎士】というのはこの【イラム王国】で3年前の頃ばかりで新しく投入された最先端のエリート戦力だよ。あんな外道極まりない兄だが、

性格はともかく才能や頭脳においては申し分ないほどの切れ者だからか、数々のすごい技術的な進歩をこの国でたった3年間で導入してきたのだ。ファティー!続きの

説明をー!」


「畏まりました、我が敬愛する主様、イーシュマヒッド殿下!では、アビミャー殿とその譲さん方、よくお聞きになられると良いので御座います!【聖銃騎士】のことを詳しく

説明すれば、それらは【聖銃】と呼ばれる超強力な威力を持つ魔道兵器で武装された騎士達のことで御座います。....【聖銃騎士】はこのイラム王国にとっての

超エリートな戦力にして、何物にも代えがたい切り札の一つとも言えます。レングル鉱石だけじゃなくて比較的に良好な関係にあるレネティーエネッス帝国から輸入して

きたレングル鉱石にも負けずの高質を誇るラファーヴオアー鉱石を両方で加工して取り入れている精密な作りで生産された【聖銃】は、高度な技術を誇るだけ

じゃなくて、それを更なる追加強化として【アルメディア女神様】を仰いで4日3晩で断食しながら眠らずな集中祈祷でお祈り捧げ上げました【リールリアー聖女】の

尽力のお蔭で、アルメディア様がお慈悲深くにも...」


「『お慈悲深くにもお力を授けて下さって、より強い能力と威力を【聖銃】に付与なさいました!』、だろう?」

あまりに息をつく暇もないようなファティーの説明が長すぎたお陰か、我慢できないとばかりに割り込んできた王子。


「ええ、そうで御座いますな。....つまり、何かが言いたいのかと言われますとー」

「その【聖銃】ってやらの魔道兵器は、実際には神の力も含まれるってことだな?」

「.....はい、その通りで御座います、アビミャー殿!」

「つまり、今の国王達を間近で護っている凄腕のエリート性な兵士達は、神の力も宿っている【聖銃】を武器に持っていて、それでいくらあんた達より強いマーレックでも

倒せないようなバケモノ格な連中だということでいいよな?」

確認のために聞くと、


「うむ。そういうことだね。だが、2か月前にファティーからこの動画を見せてもらった時、一瞬で凍り付いたかと思ったぐらい戦慄を覚えた。なぜなら...」

「マーレック王子が国王陛下達についている【聖銃騎士】二人に対抗できる手段を、...時系列から数えてみれば今日から凡そ一か月後に準備できると

会話中でお伺いになられましたからですわね?」

「まさにそういうことだね、エールゲラリア嬢!だから、例え神様の祝福も施された【聖銃騎士】のご加護があっても、念には念を入れるためにもっと強力な助っ人が

欲しいものだ。例えば.....そこに座っている【極黒天魔英】の伝説的なナフィズールとか......」


物欲しそうな可愛い目を浮かべる王子なんだが、


「またもお聞きしたいのですが、ワーリッド殿下がご自分のお家族を邪兄ひとりの残虐な行いからお守りするためにわたくし達に力を貸して欲しいということで

いいんですわよね?」

「そうなんだけど、何か疑問でもー?」

「横から失礼致します、殿下。お嬢様はきっとこうお考えになっていたはずです:『確かに、実の父や長兄を次男のマーレック王子に殺されるのを止めたいというのは

人の子であるなら誰でもするようなことですわ。ですが、そのマーレック王子の最終目標は自国をより強力な大国にし、ひいては【大3栄強国】のいずれかをも凌駕

できる国力に発展させていきたいとも考えております。そんな大望を自国に齎す可能性のある兄を、どうして味方にしないというんですの?』って言いたいはずです!

ですから、なぜ父や王太子のことを『必要な犠牲として』、見捨てないつもりでおられますか?」


ナイスだぞ、ロザ―!核心をつく質問にどうやって答えるつもりなんだ、イーシュマヒッド王子よ?


「......答えは至って簡単なものだよ....ボクは、家族が好きだからだ。みんなでワイワイしながらお食事をともにし、一緒に遊んだりもすることで得られる幸福感は、

何事にも代えがたいものを感じる。だから......マーレックの世界に対する潜在的な脅威を......どうか、根っこからこそぎ取れるように、まだ間に合う一段階にも

突入してない今頃でボクと一緒に彼の蛮行を止めてもらえないだろうか?」

腰をかがめて頭を下げてきた王子の切実な懇願に対して、


「.....もう少しお時間を下さいませんか、ワーリッド殿下?アビミャー師匠やロザリーンも交えての内輪で話し合ってから決めたいと存じておりますけれど、三日間だけを

お待ちしては頂けないでしょうか?その間で考えさせて頂ければ嬉しいですわ~」


「あ、ああ...!本当にありがとう!エールゲラリア嬢!ナフィズールの力を借りられるようになれば、これ以上ない戦力となれるので、よく考えてくれることを祈るばかり

だよーー!」

急にはしゃいだようなテンション高い声を弾ませてる王子なんだけど、


「お舞い上がりになられてらっしゃる途中で申し訳ございませんが、仮に私達がお受け致しましたお話にするんですけど、その場合の褒賞はおいくらになりますでしょうか?

的確に俺達のメリットになるような問いを聞いたロザに、

「そうだな.....もし依頼を引き受けてくれるようなら、30,000金貨ならどうだろうか?」

「「ーーーーーーーーーーーーーーーーー3,30,000!????」」「なんだとぉーーーーーー!?」


素っ頓狂な声を出している俺と二人なんだけど、それもそのはず、

「わたくしの父ですら自宅の屋敷が立てられてた広い~~土地の購入値段はあの頃の値で、3000金貨だと記憶しておりましたわよ~~~~!??そ、それのー」


「10倍だとは正気の沙汰とは思えませんね。ね、殿下、失礼だと承知しながらもお聞きしますけれどどこからそれ程のお金額をご捻出できると仰いますか?如何に

王子様とはいえ後継者である王太子でもありませぬ最年少である第3の殿下ならばお父様からはそんなに『大量なお手持ち』は頂いておりませんようね、さすがに...」


この未来の世界の金銭感覚は未だにさっぱりな俺でも30,000金貨などという大量なお金の数字には到底アタマおかしくなりそうなものなので、ロザが強気になって

躊躇いもなく堂々と疑問を王子にぶっつけてみてもしょうがない気がする。だが、なぜか王子をあまり直視できないような様子なんだけど、もしかして自分と比較して

照れてるのかな、王子の男離れしそうな可愛い美貌に対して..?


「なに、それはこちらのお~ひ~み~つ~ってヤツなのだよ。知りたければ、任務完了後に褒賞金を受け取ってから知らせてやるんだよ~ん!」

急に真面目な声色からおちょこちょい子供っぽい口調に切り替えた王子はウインクも交えてそんなこと言いながら遅い夕食と言った具合で【イルメメフョン

(異空間格納魔法)】からケバブを取り出してかじりつこうとした。


「そういえば、マーレック王子が国王陛下とその後継者を暗殺する計画をしていたとご存知なら、なぜそれに関しての情報とそれを裏付ける証拠であるさっきのお映像

をお父様にご報告なさったりお知らせなさったりなさいませんの?そうなさったら警戒心をお強めて頂けるどころか、計画実行前のマーレック王子達の持ち物である屋敷

とかでご検査を行って頂き、それでさらなる物的証拠物を見つけ次第、逮捕できたかもしれませんのに.....」


いきなり藪から棒にまたも王子に聞いてみたポーリンヌなんだけどー


「父がナッシール王太子よりマーレックの方を溺愛したり一番に信頼している節があるからだよ。国の法律に基づいて一番の長兄しか王太子になれないとの事なんだが、父としては

もっとも有能なマーレック王子こそ与えられるべき地位なのだと考えていたそうなので、それの埋め合わせとばかりか何かがあっても絶対にマーレックの味方すると

窺うことができた」

「つまり、中途半端な証拠物も伴ってのご報告を致しに行かれましても、ご無視になられるかご信用して頂けないという結末しか望めないはずで御座いますよ。

何故かと言いますと、映像には加工された人工的な声を追加できるからで御座いますよ、それも本人にそっくりな声で」


ふむ、なる程な。本人達が本当にその内容で話していたか、あるいは人工音声で偽りの声を追加されるか定かではないのに証拠物と言われても

説得力が低いもんな。そして、狂信的なまでに特定な息子に肩入れしすぎる父親かぁ....どこの時代においてもいつも聞くお話よね、家族内で一人だけ特別扱いする

のって....。


でもな、よく思い出してみると確かに動画で再生されたマーレック王子の表情が如何にも悪そうなことを企む残忍なる冷笑と嗜虐的な低い笑いも含まれて見えたのだ。

拾った声の内容と一致してる表情みたいだけど、溺愛してる息子とあらば聞く耳も見る目も持たないかぁ.......。そして、例え唇の動きを正確に解読できる機敏な

方が解説していても、一向に信じようとしない王様みたいだからそっちの線で責めるのが無理そうだな.....まあ、王子に向かってやっと怖がらずに提案できたポーリンヌ

なんだったから、例え詮無い話に終わったとしても褒めるべき進歩だぞ?


さてさて、話も一段落したところみたいだし、イーシュマヒッド王子の依頼を受けるかどうか、3日後のポーリンヌの決断を待つことにしよう。

それにしても、俺と彼女の関係ってよく考えれば不思議なもんなんだよね?

だって、彼女は俺にとってのお金やメシをくれる『雇い主』であると同時に、俺の方は彼女にとっての『魔法を教えたり鍛えたりしてもらう師匠』でもある。

利害関係が一致してる者同士って、これほどの素敵なものは他にないとも感じるよな.....。


さて、いよいよ睡眠時間が近づいてくるようだし、さっきの狩りで手に入れた俺達の分の夕食を用意しておくか.........


..........................



...........



......



その深夜、みんなが深い眠りに沈んでいるはずの時間で、女性陣のキャンプの外にある木陰にて...........


「はぁ....ひゅ~~ん!はぁ...はぁ...ひゃう~~ん!あぁひゅ~~!はぁ~はぁ~はぁ~はぁぁ~はひぅぅ~~!ああひゃあぁぁうぅ~~~んん!!はへぇ~~!ひゅううぅぅ~~んん~!」

黄色い悩ましい声と息遣いが聞こえてくる、木陰から....


「あぁあぁ~~ひゃう~~ん!あひゅ~~ぐっ~!あひゅうぅぅ~~~んん!ひゃうぅぅ~~んん!あぁはぁあぁうぅ~~ん!はぁ~はぁぁ~あへぇ~ん!もう駄目!

あへぇ~!はぁ~~あへぇ~~もうぐっ~いぐ~!きぐっー!きっちゃうぅぅ~~~~~~~!!」

厚い闇色のメイド服の上から胸やロングスカートの生地ごしの『とある一部』を両箇所で骨かと見まがうほどの真っ白い指で激しく弄り回していた彼女を最後に

迎えるのは強烈で甘美な快感。

............

.....


「はぁぁ.....はぁぁ......はぁぁ...」

荒い息をようやく整え直したか、木陰に身を潜んでいるのは、


「はぁぁ~~。イーシュマヒッド殿下~~なんて素敵な方なんでしょう~~。カンテルベルックではあまり見ないそのような美味しそうな褐色肌もさることながら、可愛い顔も

してらっしゃる女装男子の可愛い~~~お顔を妄想しながら身を慰めるのを止められないよおぉ~~!『あの頃のことも思い出しちゃいそうで』懐かしいわ~~~。これ

だから綺麗な女装男子で自慰するの止められないですよぉ~~~~!私の女としての大切な部分や誇りが完膚なきまでに異性から征服されそうでたまりませんねぇ

~~!」

遠い顔になってるロザリーンは自分のくしゃくしゃになったメイド服を整え直してから、ロングスカートもテキパキと埃を拭き終えた彼女は今度は眠れるぞとばかりに、

女性陣のテントへと入っていくのだった。


そのすぐ近くに......


「人間って、誰しも他人に見せられないような『裏の顔』があるようで面白いな....。これなら、退屈せずに長い期間でお楽しみが増えてワクワクしちゃうね....ひひひ.

..」

慰め現場を覗き見されたのを知る由もないロザリーンは、夜のとばりに溶けるような迷彩色も同然な極黒な肌色を持つ男の見世物にされたのだった。


「透明化魔法を使うまでもなく、自然な忍び歩きで夜色と一体化できて便利だな....」


「そして、『肝心な場面で発揮される』、俺の並みならぬ記憶力を以ってすれば、何度でも脳内で鮮明に再生される光景だよね~~」

そう、俺の目で焼き付いて離れないように、だな。

紳士な男性と自負していた俺なんだが、誰も傷つかないようなお楽しみが一つや二つも増えて何が悪い?

いいえ、むしろ大歓迎でラッキだったぜ!


.......................


...........


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