第13話: 変わったVIP(重要人物)。そして密話への誘い。

「.........」

「「「.......」」」


薄暗い道路を逆戻って地上へと出るための【上昇魔道機械(ニルフ)】へと向かう俺達と先頭に歩いてゆくファティーマなのだが、ずっとこの調子で無言のままだ。

べグラム隊長や他の採掘者達の行方はさっきの丸いだだっ広い部屋の奥の扉を通って入ってみても姿がどこにも見当たらなかったので、既に魔生物の

餌になったか跡形もなく殺されたのが確認できた。だから、そのままファティーマの指示に従ってこうして後をついてきたんだが.....。

このままじゃ張り詰めた空気のまま緊張感が半端ないまでになってるポーリンヌとロザを見るのも可哀想なので、ここは俺が、


「ファティーマと言っていたな?あんたの『主様』という人物に合わせるために俺達を連れていく気満々なんだが、まずは俺からの自己紹介とか聞かなくていいのか?」

「出口でお待ちになられてらっしゃる主様の前でしてもらうことになるから、それは今する必要がないのでな」

「なる程な。さっき....あんたが素晴らしい程の剣筋であのデタラメすぎる変異種らしき魔生物を一瞬で散り散りに切り刻んで何百までの肉片へと変えたようだが、

もしかして【1秒停止10秒仮時獲得(シルクット)】を発動しながらでやったのか?」


「....気づいているんだな。さすがは『伝説の魔術師』と呼ばれただけのことはあるな、アビミャー殿」

「「「ーーーーーー!??」」」

こいつ、俺の名前....ひいては正体までも知ってるようなことを言ってるんだけど、何者だこのファティーマって娘(こ)はーーー!?


「アビミャーさん、これは...」

「あの少女、一体何者ですの?」

俺の近くに寄ってきて左右から耳元で囁きながら聞いてきたロザとポーリンヌに返事すべく、口を開けかけると、


「そうだ。わたしは【1秒停止10秒仮時獲得(シルクット)】を使っていて、それであの【ヴェイードア変異型】の魔生物を処理した訳なのだけれど、まさか意外だと感じたか?」

これは予想だにしなかった回答だな。


まさか俺からの質問を彼女への疑惑の念で発したものだと捕らえられたとは....

「いいえ、微塵もそうは思ってないよ。ただ、あれほどのめっちゃくちゃな力を見せていた変異型をありえない時間内で大量に切り刻んだものだから、(シルクット)を使う以外

できない芸当だと踏んだんだが、もしかして聞かれるの嫌だったかな?後、俺の名前はアビミャーとかではなく、ミルファンなんだが...」

努めて丁寧な口ぶりで返してみた。本名を言われたことに対してはまず白を切るようにとぼけてみせた。用心に越したことはないので、

安全確認のためにも彼女の見当らしき発言をまだ肯定したくないからな。


当然、【1秒停止10秒仮時獲得(シルクット)】を使う以外に、どうやってもたったの1秒の瞬間で俺が目測で確認できた200振りまでの剣戟をやってのけることが

到底できないはずなので、現実時間の1秒を自らの『領域型感覚』の10秒までに引き延ばし、それで9秒も加わっての追加時間内でならの攻撃数上昇が

できるって訳だ。

10秒の間に200振りだったから、つまりそのファティーマと名乗った少女は一秒ごとに20振りまでの剣戟を見舞うことのできる規格外な剣士であるということだ。

結論、その魔法を使わなければ、いくら彼女でも一秒内で200回まで剣を振ることができないから必然的に導き出された説明だった。


「滅相もない。貴殿の問いをありのままの感想で返しただけのことだったがな。それと、君の正体はもう把握しているから演技しなくて良い。主様が全部ご説明なさる

おつもりだからそんなことまでする必要はない」

「....演技じゃないんだけどね....でも安心だね。あんたほどの剣士を怒らせるのが怖いからそうじゃないと分かっただけでもほっとするよね。そうだね、ポーリンヌにロザ?」

「ええ、女性なのに言動はちょっとぶっきらぼうで殿方っぽいんですが、穏やかな声色と冷静沈着な気性の持ち主のようで少し怖くなくなりましたわ。

名前もまだ聞いてませんし地上に戻ればちゃんとした自己紹介して頂かないとですわね」

「でもくれぐれも気を付けるようにして下さいね。あれ程の力を持っているファティーマさんですから、彼女の逆鱗に触れるようなことはしないで注意して下さいね?」

「もちろんですわ!賢いこのわたくしなら状況に合わせてどう振舞おうか分かってるんですもの。お~~ほほほほ!」

したり顔でロザに同意しながら口元を片手で覆って笑ってるポーリンヌを見ると、なんだか慣れてきてるような感じがして微笑ましい気分になっちゃった。


それから、5分以上歩いてきたら、やっと地上へと戻れる【上昇魔道機械(ニルフ)】から足を踏み出していく俺達4人はここの砂の量数が少なくなってる岩場だらけの

地面に着地した。


「こんにちは。やっと会えるようになって嬉しいね、ナフィズール。そしてそちらのエールゲラリアー嬢とクライス嬢二人も」

俺達を待っていたかのように、女性らしい声色でありながらもどこか爽やかであどけないっぽい少年の声が響いてきた。

どうやら俺達の正体はすべて彼女達に筒抜けみたいだな。


「殿下、アビミャー殿とお嬢さん方をお連れして参りました」

「ご苦労、ファティー。ではナフィズール、そなたに話があって討伐現場のここを訪れてきたが、構わないのかね?」

俺に話しかけてきたのは、赤い色のセミロングなウエーブ型の髪をしている10代後半の少女で、ファティーマと同年齢に見えるようだ。

ファティーマと同様、彼も薄い褐色肌をしているみたいでどう見てもこの国の者だと窺える。

何かの複雑な模様が綴られている優麗な白銀の軍服っぽいブレーザーとマンテールを羽織っている彼女は、下半身を清潔感あふれる純白のミニスカートを履いている。


だが、やっぱりこのイラム王国の国教である【メディア教】の教えに則って、短いミニースカートを履いていても膝頭から上の太腿の素肌すべてを白いタイツで覆われているの

だ。だから、着替える前のポーリンヌの時のような太ももが少し見えたような黒いニーソックスとは訳が違うんだ。

そして、その赤髪少女はすらりとした脚線美をその長くて健康的な脚が良い女性的な印象をより強く表現してみせる様子だ。


「もちろん構わないよ。ポーリンヌもロザもいいよね?」

「ええ。目的の魔生物も討伐出来ましたし、べグラム隊長と採掘者達の安否確認についても残念ながら亡くなったみたいですし、町へ戻る前に彼女達の話に

付き合うのもちょっとだけならいいですわ」

「私はお嬢様に従ってまでのことですね。ですから私の意見を聞かなくても良いです」

「なら大丈夫だな。じゃ、お話というのは?」

雇い主のポーリンヌの許可は得たので、その美麗な服を着て優雅な佇まいを保つままの赤髪少女や隣に控えている忠実な従者っぽいファティーマの方へ向き直ると、


「では改めて自己紹介するね。ボクはイーシュマヒッドよ。イーシュマヒッド・イール・ワリーッドという。親密な関係にある者なら、ボクをイーシュと呼んでくれることが

多いけどね」

ん?『イール・ワリーッド』って部分、どこか聞いたことのあるような名前だったような....


「お嬢様!あ、あの方はーー!」

「...も、もしかしなくても、でもでも、ま、まさかーー!?」

「ん?二人とも、なんで急に慌て出してるの?彼女とはお知り合いなのか?」

ポーリンヌとロザの様子がいきなりおかしくなってるので聞いてみれば、


「お、お知り合いというかこうして目前にお姿を拝見できても恐れ多い過ぎますわー!!だって~!」

「ええ.....アビミャーさんも十分に礼を払って言動には気を付けて下さいね。何故なら、あの方はー」

「如何にも。ボクこそはこのイラム王国が第3王子、イーシュマヒッド・イール・ワリーッドだ。長い付き合いになると思うけど、これからよろしくね」

「ーーー!??」


え。な、なにーー!?こ、この方が王子様だと!?この国の!?

........で、でもどう見ても信じられないじゃないかーー!?

だ、だって。確かにお高いキラキラとした模様が描かれてる白色をベースにする服装ばかり着てるし、お外見も見る者を奪うような端麗な容姿と優美な身嗜み

や佇まいを醸し出してる雰囲気であることは間違いない。だが....


「なんで長い髪と可愛い顔してるだけじゃなくてスカートまでも履いてるんだよーーーーーーーー!!!?」

と、俺の心の声がこの場で躊躇いもなく炸裂したのだった。


.......................

2分後の説明の後、


「な、なる程。そ、そういうことなんだなぁ...」

「はい。殿下は女装趣味のおありな方で御座いますので、良くこういうお恰好をご嗜んで着ておられます」

でも、それにしてはなんて可愛すぎる顔をしてるんだろう......そんなんじゃ女性全般に対しての明らかな反則級な嫌がらせじゃないか!?

一般レベルの女性より綺麗な顔してる男子ってどんだけ個性盛り盛りなんだよ!


「でも、流石にお城の中と公の場ではこういう服は着ないようにしてきたんだけどね...ボクだって公私分別はきちんと心掛けてきたつもりなんだ」

.....なんか目の前の光景が可笑し過ぎて、笑っていいのやら頭を抱えていいのやらで混乱しっ放しだ。

まあ.....人それぞれだし、彼がそれがお好きのようならば着ていてもいいんじゃないかって思えるよね?ね?


「あ、あの....差し出がましい事を承知の上でお訊ねしたい事がありますが、良いのでしょうか、ワリーッド殿下?」

びくびくと、そわそわと全身をぶるぶるさせて怖がっているように見えてもどうにか声を絞り出して王子に何かを聞こうとするポーリンヌなのだが、


「そんなに畏まった話し方をしなくてもいいよ、エールゲラリアー嬢。なんでも好きに聞いてくれて構わないよ?」

にっこりと人懐っこいフレンドリー笑顔を浮かべる王子様なんだけれど、なんてキラキラで眩しいくらいの爽やかな微笑なんだろうかーー!?

俺が女だったら、なんとなく惚れちゃいそうなオーラをいっぱい出してるようだけれど、男のくせに反則し過ぎないか!?その中性的な顔立ちに加えての美少年レベルの

乙女っぷりはーー!?


「...え、ええ...。で、殿下のお言葉に甘えて.....お、お訊ねしたく存じることがありますが、そのお服ってレネティーエネッス帝国に良くあるようなデザインのように存じます

けれど、もしかしてー?」

「察しの通りよ。確かに、ボクが着ているこの制服はレネティーエネッス帝国の名門校である【シャールローット英集魔術学院】のものだ。ああ、でもこのマンテールだけ

は自国の産物なのだよ。どう?似合ってると思うのかな?」

「そ、それはもちろんでございますわ!!......あ、ああ!...で、でも殿方が、が..お身に付けていても、素晴らしいぐらいのご壮観だと存じますわー!で、ですから!

そ、その......」

急にあわあわと何言えばいいのかって困ってるような怖がってるような複雑な顔になってるポーリンヌのを見ると、


「お、俺も似合ってると思うよ、ワリーッド王子。なんか、....世の中って広いから、王子みたいな個性的な方がいっぱいいてこれ以上の喜びはないさ」

なんか濁したような曖昧な言い方になるけれど、こればかりは嘘偽りのない本心だ。

だって、俺に【そちら系】の趣味がないとはいえ、様々な趣味嗜好を持ってる人間があるのって、それでこそこの世界にでも多種多様なヤツと事柄がいっぱいあるってのが

再確認できて、それで俺が『この時間軸の世界』に転生させられてきても色んなモノを体験していけるって退屈せずに済むようだ。

なにせ、俺ほどの強さで生まれてきてるような者ならば、多少な刺激的な何かと出会わない方が苦痛だしな。


「【シャールローット英集魔術学院】へご訪問にお伺いしになられた頃、女子制服のが可愛かったからご自身もご着りになりたいと仰いましたから。ですから、殿下の

私用のために一セットも購入させて頂きましたのをよく覚えております」

「あの時は何度も感謝してもし足りないぐらいよ。なにせ、あれ程の魅力的で繊細な作りで出来ているものだから、見ているだけじゃうずうずして自分も着たくて

着たくてしょうがなかったからね」


「殿下のご趣味にお付き合い致しましたわたしの身にもおなり下さいませよ。あれを入学確定および在籍してる生徒以外で殿下のお身体にフィット出来る代物を受注

するのが大変でしたから!」

「あはははは~~!ごめんごめん~。それは済まなかったね、ファティー!なにせ、可愛いものが目に入った途端、思わず愛でたくなるのがボクの悲しい性分でね」

「でも、恐縮でございますが、殿下御自らがそのお可愛い『モノ』になろうとしてらっしゃる時点でそもそもお間違いで御座いますよ。何故なら、殿下は常にイラムの民の

模範となられるべくして御生まれになられたも同然に存じますから、その国民の前に立ってお導いておいでになさる殿下がアイドル気分のままで

いらっしゃったらどうなります?」


..........な、なんだったのかな、こりゃーー?聞こえてきた内容によれば、そもそもファティーマって従者よ!問題点はあんたが王子のためにフィット出来るような

制服を購入するのが大変だとか、民の前にアイドルではなくてちゃんとした指導者たりうる心構えにしてよねとかってより、そもそも『男のはず』の彼、しかも一国の

トップ一族の一員ともなろう王子様が女装してる一点を一番で問題視にするべきなのではーー!?


「ははは...まあまあ、堅い事を言わないでくれるかな、ファティー?その忠告は確かに一理あるとは思うけど、ボクは王子様である前にただの人間なんだからね。

欲も出るし、羽を伸ばしたいと思ってる時だってある。もちろん王族としての責務はきちんと弁えて取り掛かるつもりよ?でも、必要以外の時にボクの好きにしてくれたって

いいじゃない?そなた方もそう思うでしょ~?」


「ええ?俺達が?」

王子様と忠臣ふたりの独壇場な漫才だったが、いきなり話を振られた俺達3人に、お互いの顔を見合わせて考え込んでると、どうやって返事したら良いのか

数秒間で迷ったあげく、


「~~~うん...。どう答えればいいのやら...。あ!そうだ、ここは貴族社会に慣れてるポーリンヌとロザにお任せするね!じゃ、どう思う二人とも!?」

完全に王族との適切で良い会話の対処法に決めかねた俺は匙を投げるとばかりにもっともお裕福層な二人に話を振る。ごめんね、これの埋め合わせはするからさ!

確かに前世ではたくさんの国へ回りに回ったことがあるにはあるが、あの頃は自分の中での普通の概念の世界観にあったんだしな!少なくとも今のようなもっと遠い未来

とか別時間軸とかっていうデタラメすぎるリーアバッス版に転生させらたばかりとあっては混乱も冷めやらぬ初日で上手く立ち回れって言われても無理な相談ですぜ!


「~~~ええ!?わ、わたくし~~?そんな恐れ多い事を~~!?」

「無理です私に話を振らないで下さいまし外交関連以外での王族との受け答たえは御免被りたいですのでこれ以上話しかけるなら舌かんで死にます、いえマジで

死にますよ、はい!」

「んだよ~~!?みんな役立たずばっかりね!それでも俺の弟子になろうっていうのかよ!?」

「だ、だって~~~!外交任務以外の私的な場での王族との対話だなんて聞いてませんし~~!それに、どうお返事したら無事でいられるか分からないんですもの

~~!」

「同感ですマジで無理です私に聞かないで下さいます今から穴に入って身を隠れますはい今すぐ」


どうやら正式的な外交関連の場以外では王族とのやり取りに関しては遠慮がちな気分になってる様子の二人である。

おい、おい、こんなプライベートな場でさえ王族との会話を普通にこなせないようじゃ、どうやったら自国を代表して外交現場に臨もうっていうの?

ハードル的順位が逆になってるんじゃ?

それに、社交辞令でもなんでもいいから、上手い言葉つかってなんか言えよな!

ええいーー!無力な子羊二人をほっといてこうなったら俺だけでも王子様の問いに答えてやらぁー!俺だってやればできるからな、おらぁー!


「あははは.....ポーリンヌとロザは未だに殿下のような方との良い付き合い方や話し方を心得ていないようなのでここは俺だけで答えさせてもらうね?実は、殿下の

意見には賛成しかない気持ちだよ、本当にね。だって、誰でも憩いの場が必要だし、息抜きがほしいっていうのも分からなくはない。ただ....国のとっても重要な立場

である殿下ならば、時と場所に気を付けて、上手く....切り替えの面持ちを常に身に付けてかかると良いとも思うよ?」

前世の世界でいつものような要領で王族との適切な当たり障りのない口調で返事することにした。


努めて冷静な心持で無難な返答にしたのはいいが、客観的に見ればどんな風に聞こえるのかな...。ちなみに、王族相手でも敬語を使わないようにしてるのは、

昔の母からのしつこいまでの言いつけで絶対に大切な者や最重要な場面以外では敬語を使わないようにとの忠告があったからだ。

『世界のために汗水流して遊ぶ時間も捨ててた~~くさん貢献してあっちこっちへと飛び回ってお人助けしてるアビの特権よ~~』って。


「ふむ、殿下に向かっても畏まった丁寧な話し方に変えようとしない辺り、やはり噂に聞いた限りの尊大な態度のご様子だな、『極黒天魔英』のアビミャー殿」

「あ~ははは~~~!!でもそこがいいでしょ、ファティー!ずっと待ちくたびれたんだよ、ボクとこうして対等な立場や心境で話し相手ができるのって!今までは

ボクに向かって媚へつらう者共ばかりだからな!そなた方と出会ったお陰でこれから良い関係が築きそうで嬉しいよ、ナフィズール!」


......なんか、気楽な王子様でいい身分だこと。

根を詰めすぎるのもどうかと思うが、少しはしっかりとしてるところも見てみたいっていうかさ....。

まあ、長い付き合いになるって宣言したようだし、彼の『本気の姿』がいつ来るか、気長に楽しみにしてるぞ。


「あ、あたかも友人同士のようにお喋り出ししてらっしゃるお二人、まるで出会ったばかりの初対面同士とは言えませんわね、ロザリーン...」

「まあ、そこは『力を持つ者のみにできる特権』って奴かもしれませんね。...色んな意味で」

と、俺達の屈託のないような掛け合いに対して不思議に感じるか、微妙な表情となった我らが色白なポーリンヌとロザなのである。


...............

で、それから....


「じゃ、なぜ俺達がここに到着したのを知って探しにやってきたか、その説明はちゃんとしてもらえるよね?」

「ええ、もちろんよ、ナフィズール!実はそなたも知っての通り、そこのエールゲラリアー嬢達がカンテルベルック王国からこの国へと赴いてきた目的は

外交任務だったからね?その予定を事前に父から聞いていたので容姿もばっちりと覚えているよ」

「ああ...どうも相手はこのイラム王国の外交大臣マーレックだかなんだったっけ?確かに第2王子だって聞いたから、ひょっとすると殿下のお兄様か?」

「ええ、そうだね。.....『あれ』は確かにボクの実の兄.....なんだけど.....」


ん?なんか複雑なような憤ってるような表情を浮かべるようになったんだけれど、どうしたのかな?


「ボクが事前で知り得た情報でこの完璧なタイミングでそなた方にとある依頼をしに会いにやってきたけど、詳しい事はあそこで野営を張ってからにしようね?

町だと、人がいっぱいで極秘裏に話し合いをするのにも雰囲気が合わないし、いくらナフィズールのその色んなすごい魔法で盗み聞きとか隔絶された空間をどこでも

張れるような結界が展開できると聞いていても実際にどういうものか不安もあるし、今回だけはボクの我がままに付き合ってあそこでの野営で話し合わないか?」


「わたしも殿下に従ってお願い申し上げます。どうか今回だけ殿下のご提案を受け入れては頂けないでしょうか?殿下に代わって、深くお礼申し上げます故、どうか良い

ご検討の程を」

なんじゃこりゃー!ただの軽い頼み事にいきなり低頭して腰まで頭下げてきたかよーーー!?それにしても、さっきの鉱山の中じゃ俺に向かってため口だったのに、

殿下の前だとみんなの誰かに向かって話し合っても敬語全般でフルスロットルかよーーー!?


「もう分かったから、今すぐ頭を上げてくれ...ファティ―マ!分かった、あそこで話を聞いてやろうじゃないか。構わないな、ポーリンヌ?」

雇い主の許可を得るべく聞いてみれば、


「か、構いませんわ、アビミャーさん...じゃなくて師匠。いいえ、むしろなんでわたくしに許可を取ってますの?そ、そちらにいらっしゃるのはこの国の偉大なる第3王子殿下ですからそもそも

断る権利がこちらにどこにあると思いますの?というか、アビミャーさんってばもっと懇切丁寧な態度と話し方で切り替えた方のが良いのではなくって?」

「お嬢様の仰る通りです、師匠。今はプライベートな場だからかお相手が構わないと仰られたようですが、正式な外交現場での面会ならそうとはいきませんよ?」


やっと、俺を師匠呼ばわりにしてくれるんだな。嬉しいぞ。


....それもそうか。確かに、今のは気さくな性格の第3王子であらせれれ....ってあれ?なんて言ったっけ、こういう丁寧なお偉いさんへの指し方とか?まあ、いいや。

とにかく!フレンドリーなイーシュマヒッド王子で公の場じゃないからこうした砕けた口調が出来るようなんだが、他に官僚とか臣下とか神官が多い正式な場じゃさすが

に王族相手に向かってため口で接していては周りへの王族に対する威厳なるイメージが損なわれ、いい迷惑を王様たちにかけ兼ねないのでこれからはよく謹んで

演技しなくてはな。


「あ~はははは....そちらの嬢さん方の指摘はごもっともなんだけど、あまり強くナフィズールに当たるものではないよ。そうよな、ファティー?」

「はい。お話を拝聴した限り温厚な方で激怒した試しが一度もないと伺いましたが、前例がいつまでもないとは限りませんのでその試しを今の我々の国で作らないで

頂けると結構ですな、エールゲラリアー殿にクライス殿」


「ううぅぅ.......すみませんでした、ワーリッド殿下。良かれと思ってお注意したつもりだけなんですけれども.....ううぅぅ.....」

「御免なさいですお嬢様の所為ではなくて私にだけお罰をお与え下さいまし、どうかお嬢様だけのお命はご勘弁お願い申し上げます故、私だけにしてお罰を

下さいませんか?」

また慌てふためいてる二人なんだけど、そろそろ慣れろよ!この王子はいい王子じゃないか!?いつまでああしてびくびくして神経質になってたら気が済むっていうの?


「やれやれ、却って怯えさせてしまって悪いなナフィズール。そちらのケアーはそなたに任せていいよな?」

「ああ...その二人はただ慣れないだけだよ、王族の者と気安く話し合うのって。ああ見えて我がままで不器用なところも多いような令嬢さんなんだけど、彼女達に

もっと時間をくれたらいつか自然に友達同士のように話しかけてもらえるかもしれないよ?」

「その日が早く来るのを強く願うばかりだよ。なにせ、これから話すことになる依頼の内容に対する返答次第ではそなた方との関係がずっと続いていくようなものだからな」


「じゃ、その依頼の内容とはどんなものか、あそこで野営のキャンプを立てて落ち着けるようになってから話してくれていいよな?」

「話が早くて助かるよ、ナフィズール。では、不束な王子だが宜しくお願いするよ」


王族のくせにこれもまたご丁寧に膝を曲げてお辞儀しながらのミニースカートの裾への持ち上げのようだけれど、いかん!

純白なミニースカート姿だけに飽き足らず、これもまた白いタイツで覆われてる悩ましい程のすらりとした長くて脚線美のあるような脚....ってなに言わせよう

としてんだ、俺の心の中のダークサイドはーーーーーーーーーー!!!!?


俺にそっち系の趣味はなかったように思ってたんだけど、そんなことして変なもの見せてくるばかりじゃいつか良からぬ何かに目覚めちゃいそうで怖いぞ!


だって、お、お前の下着が見えそうで見えないような位置まで持ち上げられたんじゃ!?

お、女の下着なら.....なら、目に飛び込んできても嫌いじゃないんだけど(ここだけの話なんだがむしろ好きですはい、健全な男性で~~っす!)、男のモノはちょっと

~~~。

だが、このままそういうのばかり見せられると、俺の中のいずこにあるような隠れた男の娘ごころはいつか...............

って、そんなことあるかいーーーーーーーーーー!!!

10代後半の少女でも熟女でも純粋な女性全般の事なら惹かれるこそすれど、同性への恋愛的や性的感情が湧いてたまるかーーーーーーーーーーー!!!


........................


...........



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