第12話: 変異種との戦闘。そして新たな出会い。
「.......」
「お、お嬢様、まだお怒りのままでしょう..か?」
「...あ、当たり前ですわー!まさか仕えている立場のはずのあなたがわたくしにあんなことを彼に頼むーだなんて~~!失礼ですわ!」
「先ほどは申し訳ございません!何度もでも謝りますから、どうかご機嫌をー」
「ふんー!ロザリーンなんて知りませんわー!もちろん、アビミャーさんもですわー!なんて魔法かけてきたんですのよ~~もう!」
と、さっきメイドが俺に自分の口封じ協力してもらったことがよほど気に入らなかったのか、すたすたと俺達二人を置いて先へ急ごうとする。
ちなみに、今の俺達は【ウルメン鉱山】という地下採掘場にいて、ここの魔道具でぼんやりとした光で照らされてる薄暗い道路を歩いていく最中だ。
「はは...すっかり嫌われてんな、ロザ」
「...アビミャーさん?なんて仰ったのかまったく聞こえけてきませんでしたが、もしかして私の気のせいなのでしょうか?」
あれー?ただお茶化しのつもりでロザにそう言ってやったんだけど、聞いてなかったのかな...?なんか微妙に怖い笑顔になって俺を見つめてきてるようだけどー?
「...はぁ~。もういいですよ。さっきのは私達の素性をどこの馬の骨とも知れぬ相手に知られるのを阻止するため、慌ててお嬢様の軽率な自慢兼早口モードを
封じるのに頼んでしまった私に責任がありますし、こうなっては何を言われても文句は言えないんですよね....はぁ~~」
深い溜息をこぼしたメイドは落ち込んでいるみたいで前のめり歩きで項垂れていて、ずっとその調子になってる。というか、その程度で口を割るような真似をしかけていたとはな...。あれじゃ外交任務として本当に代表として務まれるの、ポーリンヌよ....
「...まあ、元気を出しなよ、ロザ!別に悪気があってそう頼んできたわけじゃないだろうー?あんただって仕えてきた彼女とその父親である頭首様の秘匿性と安全保障
を思ってした行動だろう?たとえ付き人とか侍女の立場であっても、その動機となったものは立派だと思うよ?」
「でも....」
「それに、どうしても後悔したいというなら、いつまでもそうすればいいとは思うんだけど、仲直りはきちんと早く済ませるようにな。ここ、魔生物の巣窟なんだぞ?」
なにせ、戦闘になったらチームとしての連携戦術を有効に上げるのには集中力が必要になってくるからな。
お互いに気まずい心境のままにいながら魔生物と戦うなど以ての外だ!
因みに、この【ウルメン鉱山】は【アールバルクハー】から約10キロ東南方向にあり、首都へ向かうためには南の門を通る必要もあるために偶然にさっきの彼らの会話に立ち会ってしまったわけだ。この鉱山はレングル鉱石を採掘するため地下に建てられた施設で、様々な魔道具や魔道装置が所々備え付けられているようだ。
レングル鉱石は【魔道兵器】を作る際に必要な鉱石らしいので、その採掘が重要みたいだ。
俺の黄金歴時代だと、様々な種類の鉱石を使ってでも俺の発明した魔道具の作成には利用できるが、今の時代だとそれらよりも強力な素材と高質な作りを
目指せるのにはここの貴重なレングル鉱石の使用が必要らしい。
ポーリンヌにかけた『口封沈黙魔法(ヴェニティール)』を解除した時、すごく激怒して俺とロザに突っかかってきたが、人前にいるということもあって、おとなしく引っ込めて改めて数分後の吟味をした結果、この魔物退治にもなりそうな任務を引き受けることに許可を出してくれた。
おかげで、この依頼をこなすためにここへ赴いてきたんだが、どうやら誇り高いはずの貴族娘としての彼女が先ほどの無理やりな魔法による沈黙状態はよっぽど
屈辱に感じられるか、ずっとあんな調子で必要最低限な時にしか俺達へ話しかけてきたりはしなくなってるようだ。
まだ根に持ってるっぽいはずなのに、任務に関してだけは断らずにちゃんと引き受けたとはなんて健気な性格の持ち主だな、ポーリンヌって。
まあ、多分、ポーリンヌなりに人助けだけじゃなくて、イラム外交代表との交渉の場で有利な立場を獲得しようとしてこの依頼引き受けに賛成したんだろうなぁ。
.................
......
「キシキシキシキシーーーー!!」
ん?何、この地面とか壁に擦れて動き回るような音は?
「きゃああーーー!!ご、ゴキブリででーですわあああああぁぁーーーーー!!」
「「ーーー!?」」
と、先頭に進んでいたポーリンヌの悲鳴が聞こえてきた。ゴキブリと叫んだようだけれど、ひょっとして魔生物かー!
しまった!俺やロザがすっかり落ち込んだままの心情で会話していたため、歩くペースが大分おちて、ポーリンヌとの距離が大幅に開けられてしまっているようだー!
「急ごうロザー!」「言われなくてもですよー!」
お互い目配せし合った俺とメイドは言うが早いか、すぐに前へ駆け出してポーリンヌのところへと急いだ。
「嫌ああああーーーー!!【小槍凍結弾(セリュヤヴィール)】ーー!!喰らいなさいー!それー!もう近づかないでよ~~~虫けら共がーーーーーーー!!」
駆け付けた現場に到着すると、地面に尻もちついたままの状態のポーリンヌが半狂乱になって色んな言葉を叫んで氷系魔法である【小槍凍結弾
(セリュヤヴィール)】を無差別に且つやけくそ気味に放ちまくっている最中だ。火属性の魔法を使わない辺り、どこかの可燃物に着火するのを恐れての行動のようでさすが
生徒会長様だ、といったところか。恐慌状態に陥っても僅かに残っている理性で上手く最善を尽くせそうで何よりだ。
「加勢しますよ、お嬢様ーー!『【小槍凍結弾(セリュシヴィール)】」
ロザも同じ魔法を使ってあのゴキブリみたいな大きくて濃い褐色の魔生物へと放つ。
俺の元いた時代の世界じゃあんなような姿をした魔物は一度も見たことがないのでどんな階級の物か分からない。
でも、容易く凍り付いて無力化させられたのを確認すると、ムザファー副隊長が言っていたような【ゾーマス級】ほどの魔生物ではないということがはっきりと分かるしな。
なにせ、【ゾーマス級】はシラーズ級に次ぐ上級クラスの魔物だったからなぁ、黄金歴の時代だった頃に。
カチーン!カチーン!カチーーン!!
見事に襲ってきたすべてのGっぽい魔生物を凍り付かせたポーリンヌとロザに、
「よく出来たな、二人とも。こんな雑魚程度に俺から何も手助けする必要はなさそうね」
「当然ですよ、アビミャーさん。こんなので貴方の手を煩わせる訳には参りません。そうですよね、お嬢様?」
「ーひィ!...は、はいですわ、ろ...ロザリーン....」
「.....」
「....あ、あの...」
「...なんでしょう、お嬢様?」
「さ、さっきはごめんなさいですわ。わ、わたくしの方が悪かったんですの!だ、だって~」
急に沈黙を破ったポーリンヌは、感情が溢れてくるように、真っ直ぐな目で侍女であるロザリーンに向かって頭を下げて謝罪しているところ。
「もうみんなまで言う必要がありません。もう既に終わったことですし、それに私の方からも改めて謝罪しなくては。さっきは本当に申し訳ございませんでした、ポーリンヌ
お嬢様!エールゲラリアー家の者だと相手に知られないようにアビミャーさんに頼んで沈黙促進魔法をかけても貰ったとはいえ、事前にお嬢様と打ち合うもせずに
自らの独断での蛮行じみたことに出る愚かさをどうかお許しー」
「そんなことでしたらわたくしも先に許して欲しいですわーー!だって、ロザもロザでわたくし達の不利益になりそうなことが起きる前にただ口が滑りそうになったわたくしを
見事に阻止して見せただけですのに、何も責められるようなことはしていなはずですのよ~~!?それをわたくしのちっぽけなプライドだけで根に持って引きずっている
ままにしていたとは.....本当に情けない限りですわー!ですから、どうかわたくしをー」
「いいえ、お嬢様は何も謝る必要がありません!私の方こそー」
「いや、わたくしの方ですっー!」
「いいえ、いいえ、私ー」
「はい、ストップ、二人とも!」
これ以上は平行線のままで進展のなさそうな謝り合いになるようなので、俺の諭しで二人との間に割って入りそう呼びかけてみた。
......................
..........
それから、10分も経っていると、
「隅々まで凍えなさいー!【裁邪冷凍舞踊風(レイザリード・ウインド)】ーー!!」
「己の矮小さを思い知って下さい、【曲線霹靂恐襲(キネヴァレッス・ライトニング)】ー!」
シュウウフゥゥーーーーー!カチャカチャカチャーーー!!
ズーズーズーズーズードーーーーカン!!!ズーーズーズズズードンーーー!!!
ポーリンヌとロザ、タッグチームになってそれぞれ氷属性の魔法と雷属性の第2階梯魔法を放ちまくり、襲ってくる下級クラスの魔生物を掃討した。
「ふーー。この程度の【第2級ヴェルン」の魔生物なら、私がトーテンコップを抜くまでもありませんね」
涼しげな声と表情と共に腰に据え付けられてるレイピアを見ながら呟いたロザ。
なるほどな。その魔道兵器の名はトーテンコップかぁ...良い名前だ。
「お~ほほほほ!さっきはあれな形をしていたから不覚にも無様な格好を晒してしまいましたけど、本来のわたくしの力を披露して満足でしたわ~~!」
と、今度は声高らかに変な笑い方しながら挽回タイムとばかりに自分の実力を見せつけたポーリンヌなので、
「魔力制御といい、正確さといい、実に良い魔法攻撃だったよ、ポーリンヌ!」
実際に見事な魔法攻撃だったので、そう彼女を褒めてやると、
「ふ~ふ~ん!当然でしたわ!学園一位ですからね、わたくしは!」
背を逸らしてそう言ったポーリンヌは尚も誇らしげなポーズと心境になり、ますます調子に乗っていくばかりである。
「お嬢様、ご自分の力に慢心すぎないようにお気をつけて下さいね。ここからは鉱山の奥深くに近づいていく回路のようですし、もしさっきのムザファーさんの言葉が
本当なら、この先には【ゾーマス級】ほどの魔生物が我々を待ち受けているはずですよ?ですからー」
「ええ~。分かっていますとも。あまりアビミャーさんの側から離れないように、先へ歩かないでと言いたいんですのね?」
「左様でございます、お嬢様」
恭しく首を垂れるそう首肯したメイドは俺に視線を向けると、
「お、おう!俺から離れるなよ、二人とも!チームとして戦う約束もしたし、それに一々の戦闘で俺ばかりが先陣を切って前で活躍するばっかじゃあんた達に
見せ場を奪いまくりそうになるからこうして一歩下がって後衛に回ってるわけだしな」
そう。さっきも全員一致で決めたように、確かに護衛として雇われた自分だったが、お賢い二人もなんらかの形や機会で魔法熟練度や魔力量そのものを上げるため
に俺から学びたいと切実な目で頼まれたので、それに応じるまでのことだ。
つまり、これからは護衛だけじゃなくて、彼女達の魔術講師にでもなったつもりで努めていかないといけなくなったようだ。
「それに、お金を貰ってる身とあっちゃそうするしかないんだが...」
雇われた身としての俺は、ただただ全うするしかないんだ。雇い主からのリクエストを。
まあ、精々油断しないようにしてくれよなぁー!いくら規格外な俺で人を蘇らせる魔法、【シノマル】を使えるといっても、万一の時に死体がばらばらになってると蘇生
できないかもしれない。
なので、有事の際に俺がこの後衛からでも早く加勢できるように気を張っておくことにした。
..............
.......
先ほどの薄暗い道路と違って、今度は灯りも十分な力強さが湛えるとっても広くて丸い部屋に入ってきた。
天井は地上まで到達するかのごとくの高さを誇り、四方八方の壁には様々な複雑な文字模様が魔道具のおかげか、全部光ってピカピカしてる模様。
「ここが最深部かぁ....」
「でも魔生物の気配はどこにもありませんのよ?本当にここでその町に配属されたなんとかって名前の隊長さんが戦っていた場所ですの?」
「べクラム隊長です、お嬢様」
そこは律儀にも訂正してやったんだね、ロザは。よっぽど自分の主人に対してあまり間違ったことを口走らせたくない礼儀と礼節を重んじるメイドのようだ。
「ここまで赴いてきたらしい隊長の身に何かがあったか確認できれば、そして例の魔生物も討伐できたら、大きな借りを作れてイラム外交代表であるマレーック王子との
交渉の場で有利な方向へ持っていけますわよね、ロザリーン!アビミャーさん!」
「そうですね」「きっとそうなんじゃない?」
ポーリンヌの舞い上がった表情とセットで訪ねてきたらそう返す俺とメイドだった。
ん?何かが見えてきたんだが、ひょっとしてーー?
「あそこを見ろ、二人とも!奥に扉があるみたいだぞ!」
多分、採掘現場へと繋がった通路か何かだろうな。
「どうする、お嬢様。このまま進めるでしょうか?それとも何もないと報告しに一旦戻ります?」
「......よく考えてみたら、やっぱり行くに決まってますわよ。アビミャーさんも一緒ですし、怖がったり用心深くなったりしても埒が明かないだけですわ」
「お嬢様がそう仰るならば私も従うしかありませんね。アビミャーさん!」
「は、はいー!?」
いきなりロザからの気強い声で呼ばれたのではっとなって返事した。
「私達は先頭に立って進んでいくけれど、状況が急転した途端になれば、いつでも動けるように準備して下さいね!」
「おう!任せとけって!」
ロザの確認が終わると、
「宜しくお願いしますね、『極黒魔術師』さん」
「わたくし達の援護にいつでも回れるようくれぐれも注意を怠らにようにして下さいましー!」
二人からの注意と確認が終わったら、さっそくとばかりに奥の扉へ向かっている俺達。
カッ!カッ!カッ!カッ!
タッ!タッ!タッ!
靴音だけやたらと大きく響いているようだけれど、それもこの丸っこい空間そのものが反響で満ち満ちてるから仕方ないとしても、いつ現れるであろう敵に対しての
緊張などで五月蠅く感じられるような神経質っぽいお嬢様に見えたので、苦笑した。
念のため、索敵系の【魔力探知魔法(マルセイーリアッス)】を脳内で念じたけど、今のところ、魔物というか魔生物の気配がせずに静寂のままだ。
カッ!カッ!カッ!カッ!
タッ!タッ!タッ!
こんなゆっくり歩いていていいのかと一瞬思うが、張り詰めた雰囲気を醸し出し始めてる先の二人の後ろ姿は背筋がぴりぴりと固く伸びているのを見たので、
やっぱり強敵が前に潜んでいるかもと事前に知った情報だからか、緊張感マックスで歩くペースが落ちるだけのようだな。
「ーー!?お嬢避けて下さいーー!!」「なんー!?」
バコーーーーー!!
「ーー!??なー!?」
何が起こったのか、いきなり訳も分からないままの俺とポーリンヌだったが、ロザリーンが自らの主様であるポーリンヌを両手で突き飛ばしたのを見た時点で、
答えが既に目の前に出現した!
「グラアアアオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーー!!!!!」
耳を劈くような野太い咆哮が上がった途端、突如として『それ』が姿を現した!
天井も四方へも気を配ってきてさっきから何も見えなかったのに、どこからそれがーーー!?
「グルグルグルグルルルルルル........」
ポーリンヌやロザリーンの元いた位置に上から着地してきたのは、全体が巨大なボールのような形をしており、四肢がない代わりにそこかしこから伸びて蠢いている触手
みたいなのが存在感を際立たせるようにせわしなく蠕動している様子だ。
頭部はあまりにもおぞまし過ぎる黄色いゲロかなにかを彷彿とさせる液体にも固体にもつかない醜くて歪な潰れた蛙のような奇妙な見た目をしており、口らしき穴から鮮血
のような液体をまき散らしているところだ。
(事前に内緒で二人ともに【強大頑剛魔壁(ローズフェーイル)】をかけてやった甲斐があったということかぁ....)
おかげで穴から垂れ落ちてきた血のような毒液らしき赤い液体に微々たる量でありながらも浴びせられた二人ともがなんの被害も被らないわけ。
まあ、最初から【ゾーマス級】が潜んでいるかもしれないという前提でやってきたんだから、それ相応の対策を用意しないほど俺が魔術師としての力や分析力が
まだ落ちぶれてはいないというわけだ。
二人がこれを知っていたら、きっとハンディをお裾分けされた気分でいい気がしないだろうと踏んだからあえて何も言わないままにかけてやったまでのことだ。
「お嬢様、立ち上がれますよね?」
「もちろんですけれども、気を付けて下さいましロザリーン!あの魔生物、見たことないようなものなんですけれどきっと警備隊の隊長さんが言ってた【ゾーマス級】らしいものなん
ですわ!」
慌てて突き飛ばされたままの二人のくんずほぐれつな体勢から立ち直って臨戦態勢に入ったところの二人なんだが、実にテキパキと見事の速度での回復だな。それこそ、
俺の個人的な教え子になった者にのみ求められる俊敏さと機転や切り替えの速さだ。
「というか、【魔力探知魔法(マルセイーリアッス)】を前もって発動したというのに、なぜそいつが近くにいることが察知されずになってるんだとーー!?有り得ない!」
初級な魔法であまり魔力を込め過ぎないようにとはいえ、仮にでも伝説級の魔術師の俺からの魔法なんだぞー?
それでも索敵魔法に引っかからずに済むとはどういう....
まさか、俺の魔力の込められたマルセイーリアッスをすり抜けてきたとはなぁ.....
それに、これもしくじったなぁー!魔力によって見えざる物へと化した何かを
視認できるような効果を持つ【魔源不可視物(ゼルロンテッス)】も同時に唱えるべきだったか!?
ただの不発かどうか分からないけど、俺の魔力が纏われた第一階梯の魔法を物ともせずに待ち伏せできたのは事実だ。
得体のしれない魔生物であるということだけは分かってるので、やっぱり加勢するかー!?
「二人とも、念のために聞いておきたいんだけど、手出し無用かーー!?」
理由は後で考えるとして、とりあえず助けがいるかどうか聞いてみた。
「ええ、そうですわ!人生初めての手強い相手になるかもしれませんけれど、いつまで経ってもあなたに全部を任せる訳にはいけませんわよーー!」
「【ゾーマス級】だろうと、アビミャーさんが前の砂漠で赤子の手をひねるような動作でこれより一段と強い【シラーズ級】をたったの初級の【小火円撃(ブラヴァスト)】で
片付けられましたし、ここの3年間で一緒に訓練しまくってた私達の高い連携熟練度ならば全力出せば問題なく勝てるともー!」
ほう。よく言えたものだな、ポーリンヌにロザリーンも。俺の教鞭の元で魔法の修行をしたいというだけのことはあるなーー!
では、【強大頑剛魔壁(ローズフェーイル)】という『保障』も伏せてかけてやったし、お手並み拝見と行こうじゃないか
ーー!
第1階梯な【魔力探知魔法(マルセイーリアッス)】より遥かに巨大な魔力も込められた第4階梯の【強大頑剛魔壁(ローズフェーイル)】で護られた二人なら
万一のこともありゃしない!
「ーーはあああぁぁーーーーー!!」
先端が切っておとされた!低く身をかがんだロザリーンがメイド服の腰の部分で固められていた魔道兵器らしきレイピアを抜き放つと同時に、素早い動きでバネのように
弾けて真っすぐとあのおぞましい姿してる魔生物へと襲い掛かっていく。
「まったく!麗しき乙女二人の前になんて姿で登場してきやがりますかーー!?地獄の底で自分のどうしようもない外見の滑稽さを恥じて悔い改めるが良いですよーー!
」
シュウーーー!!シュウーーー!!シュウーーーー!!シュシュシュシュシューーーーーー!!!!
おぞましい外見の魔生物の近くまで駆けていくと、全て8本の触手からなる一斉攻撃を下方にいるメイドへと伸ばし見舞いした『あれ』なんだが、
「はあっーーーーー!!」
紙一重のタイミングで上へと跳躍し完璧に交わしたロザリーンだった! そしてーー!
「華麗なる剣舞で貴方を楽にして上げますね!【4斬の舞い、白裂滅切(シールヴァステーファン)】!
グザーーー!!グザア!グザグザーー!!
空中で華やかな回転を繰り返して舞い跳んでいるメイドはその踊り?と連動するように4回までも剣から4条の白い波線を眼下にいる魔生物めがけて発射し、
8本の内に半分まで触手の数を減らした。
「グラアアアオオオオオーーーーー!!!グラアー!!」
触手を切断されて憤っているのか、乱暴に全身を震わせたかと思えば、今度はその口の役割をしているような口から弾丸のような紅い血と廃棄物の塊がロザに向けて
放たれた!
「ふーん!その程度です!?」
難なく空中バックフリップで避けたロザ。それと入れ替わるように、
「その見るに堪えない汚面、焔の槍で綺麗に焼き穿ちますわよ!【豪焔凄速滅槍(フレイドアー)】ーー!!」
フシュウウウウウウーーーーーーーー!!!!!バコゴゴゴゴゴゴゴーーーー!!ゴゴゴゴーーー!!!!
実に見事の連携プレイだった!斜め後ろから攻勢の機会を待っていたポーリンヌが魔生物の集中がロザへと向けられてるのをいいことに、隙をついて魔法を
ぶっ放したようだ。
やっぱり、伊達に学園一位のマギカリアンとしてやってきてない訳だ!多分、2位か3位かもしれないロザにまでそうとも言えるな。
第3階梯の魔法である【フレイドアー】を放ったポーリンヌは正確に狙った通りの見難き頭部へとクリーンストライクして、弱点のはずの頭を打ち貫いただけじゃなくて焔までも
ついていて内部から焼き殺さんばかりの勢いで頭部すべてを燃え尽くそうと見えた..........のだがー!?
フシュシュシュオオオオオーーーー!!!ビュウウーーーーーーン!!!!
「グルガオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーー!!!!!!」
「「「ーーー!??ーーー」」」
なんじゃそりゃーー!?
ぶっとい焔の槍で頭すべてを刺し貫かれ内部から燃え上がるかという風に見えたら、次はその丸っこい身体中から激しい風の渦が巻き起こると同時に、業火のままになって
た頭部も首も上半身もすべて綺麗さっぱり火の後も残せずに風力だけで吹き飛ばした!
「グルルロオアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!アルグロオアアアアーーーーーーーーー!!!」
やっぱり火傷の跡も残った身体で、頭部までも大きな穴が開いてるのにも関わらず、それでも不死身にでもなったつもりで重傷をものともせずに狂おしく爆音じみた咆哮
を轟かせながら全身を暴れ出させて、まっすぐにポーリンヌのいる方向にボーリングボールのごとく丸められた姿で突進していった!
ビュウウウウウウウウウゥゥゥ――――――――!!!!!
「お嬢様ーーーーー!!!避けて下さいーーー!!」
「えー」
「ちぇー!【飛行魔法(エランス)】ーー!!」
ロザの位置より斜め後ろに魔法陣の中心に立っているポーリンヌに向けて【エランス】を急行でかけて実質的にボールと化した魔物の突進から退けさせるために
上空へと浮かべてやった。手出し無用とはいえ、相手が予想以上に手強かったためにやむを得ない決断だった。
「グルグラララオオオオオオーーー!!」
軌道上にいるはずの獲物が遥か上空へと退避したのを見て憤慨したのか、なお憤りをいっそう高めた醜面の魔物は、
「グラアアアアー!!」
頭部が半分以上に肉塊と化して焼きただれた跡を残しても何事もないように切断された4本の触手をまたも生え直してさっきと同様にすべてを上空にいるポーリンヌへと
ーー
「このー」
ポーリンヌの身体を人形のように操作して来るであろう触手8本から退かすために直接的にエランスで彼女をこっちの方へと飛ばしてきた。
「アビミャーさーーーーーーーーんんんーーーーー!!!??」
ぱーーっふ!
「よっと!」
両腕で彼女をキャッチして、素早く手元から降ろした(長い間そうするとスケベだとか変態だとか怒られてしまうからな)。
「とりあえずあれに集中してくれ!尋常じゃないぞ、そいつは!」
「は、はい!」
状況が状況なだけに、まったく俺からの抱擁を気にしないようで敵である魔生物へと視線を戻した。
「お嬢様ーーーーー!!!」
ポーリンヌが無事であるのを確認できて嬉しかったのか、駆け出しですごい速度を見せながら側へと合流してきた。
「あれは本当に【ゾーマス級】なのかよー!?前の砂漠で俺が退治した【シラーズ級】と同格みたいで強いようじゃないか!や、やっぱり俺が片付けるのが最適だよ!
俺でも昔の時代には見たこともないような変異種みたいのようだし、あんた達には荷が重いかとー」
「それでもやりますわ!アビミャーさんに助けてもらわなかったら今頃あの魔生物の触手達に絡めとられ死にかけてるかもしれません!ですがー」
「来ますよ、お嬢様にアビミャーさん!」
ビュウウウウウウーーーーーーーーーーン!!!
俺達3人が話し合っているのにも関わらず、意に介さずに8本すべての触手をこちらへと伸ばして襲い掛かってきた!
「...大人しく好きにさせてやったら」
ズシャーーー!!ズシャズシャシャシャシャーーーーーーー!!!
「グラオオオオーーーーーーーーーーーツ!!!!!」
【眩光大滅金糸(セメンタリーカッス)】。第4階梯の魔法で、ちょっとオーバーキルすぎるとは思うが、これしか隣にいる二人に被害が及ばずに触手を正確に
消滅させられる魔法が思い浮かばなかったんだ。
この魔法は片手でも放出でき、そこから生じて定めた相手へと向かってゆくのが眩しく点滅して千線以上にまで数えられる光っている金色の糸だ。
もちろん、この金色の糸で触れる物すべては等しく俺の莫大な魔力との接触で、ことごとく跡形もなく霧と化して消滅させられた。
「グルオオオオオーーーーーーーーーー!!!」
本来、相手の筋肉、四肢や脳からの指令系統すべての神経を操る魔法なのだが、術者からの魔力も送り込めて絡めとられた対象物を魔力の本流で侵し尽くすことも
可能なのである。
さっき、俺がやったのは単なる一瞬の接触によっての殲滅で、すぐに手繰り寄せてきたんだけど。
なにせ、元々は『こいつらの獲物』だからな。横やりされて嬉しくないのは誰でも同じはず、俺もな。
それに、俺が弟子になったばかりの彼女達の獲物を奪ってどうする?
そうなったら講師失格じゃないか!
「アビミャーさん!相手は思った以上に強力みたいなんですけれども、それでもー」
「ああ...わかった。みんなまで言わずに、『征く』が良い!」
「恩に切りますわよ、アビミャーさん!では、ロザリーン!」
「承知しました、お嬢様。それがお嬢様のご選択であれば、世の果てにでも地獄の底へでも何でも付き従わせて頂く所存でございます!」
「では、最高の宴を用意しましょう?」
「はい、お嬢様。一瞬たりともミスが許されない戦場ですので全力を出しますからね!」
「ええ、良く分かってますわよ!いざ、参ります!戦術態勢2,【バンガード・ツー】、始めます!」
と、覚悟を決めたポーリンヌとロザは全力を出すと告げたようなので、この戦いの最後まで行く末を見守ることにした。
今度は本当の意味で手出しはしないつもりだから、ここから先はあんた達の運命だけに頼って、安否を願うしかなくなる。
相手は曲がりなりにも俺からの【魔力探知魔法(マルセイーリアッス)】をすり抜けて襲い掛かってこれた【シラーズ級】と同格かそれ以上の
力を秘めているかもしれない。
それだけじゃなくて、どういう訳か俺という類稀なる伝説クラスの魔術師の目をもってしても欺けるような透明化できる魔力質も有すると先ほどで証明されたのだ。
よっぽどの命知らずじゃなければ、ロクに魔物との戦闘経験も積んでいないような二人には到底にまともで挑めるほどの実力が備わっていないと考えるのが妥当だ。
さあ、どうしたものかぁ,ポーリンヌとロザ.....。
まあ、何はともあれ、頑張れよな二人ともーー!その程度で命を失うようなものだったら、この【極黒天魔英ことアビミャー】の弟子になろうだなんて都合の良すぎる申し
出をしなくてもいいはずなのだからな!だから、あんた達の力を信じるぞ、生徒会長ポーリンヌとメイドのロザリーンを!
この俺を驚かす程の何かを見せてくれ!
...でも、いくら彼女達に強力な上級防御魔法をかけてやったとはいえ、最悪な結末を防ぐように念のため【蘇生魔法(シノマル)】をいつでも唱えられるように気を
配っておこう。
「まずは全魔力を注いでからあれをー」
「せいーーーーーーーーーーっ!!」
「ーー!?」「ーー何ー!?」
何かを言いかけそうになったポーリンヌに、いきなり向こうで誰か『他の人』らしき掛け声が聞こえてきて、
プッシャアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
「ーーえ?」
一秒の間、目の前に何が起きたのか皆目見当がつかない。
「あ、アビミャーさん!」
「あ、ああ....」
「あれは、何かの幻なん...でしょうか?」
「「.....」」
.....二人は乾いた声でそう言ってたんだが無理もない話だ。
だって.....
ぷしゅうううーーーーーーー!!ぷしゃああーーーーーー!!
その前には、先ほどで暴れまわっていた丸っこい姿をしていた魔生物が、『何者かによって』、何百片までに細切れにされチリチリの木っ端微塵にされたからだ。
二人に注目していたのでにあまり魔物の方へ集中してないので、辛うじてしか見えなかったが、俺の目には確かにその『何者か』が何百回までの剣撃を
振りまくってその魔物をおびただしい量の肉片へと切り刻んだのが映った。
まあ、すごい威力のようだけど、莫大な魔力によって構成された俺の身体だったらその凄まじい程の剣戟の雨をこの全身が浴びていても大丈夫のような気もするけどな。
なにせ、その『何者か』から感じ取れた魔力の質と量が静野よりも下回るのだがな....。
タッー!
「......ふっ....」
そして、何事もなかったかのように、殲滅現場に颯爽と空中から舞い降りてきたのは、
「........初めて会うことになるな、三人とも。わたしはファティーマ。ファティーマ・アニーシャだ。」
床に着地したのは灰色のローブで胴体や下半身が全部隠されてる。その他に、素肌が丸見えな顔や腕の下部を見れば薄い褐色肌をしていてセミロングで紫色髪
の若い女性のようだな。右手には曲がった形をしている長い剣を持っているようで、ロザの持っているトーテンコップよりリーチの広い魔道兵器みたいだ。
ヤマガタ四季国のカタナっていう長剣に似てるようだけど、やや曲線的な形をしているためにたぶん地元民で独自的に発明され作り出されたものであるとみて
違いはないな。
男っぽい口調、そしてそれほど素肌面積の乏しい恰好のはずなのに、どことなく艶めかしい風体を醸し出しているのは、やっぱり持ち前の正確、為人、そして
隠れているであろう妖艶な体格が成しえた効力なのだろうか?
それとも、不思議にあそこまで苦戦していたポーリンヌとロザだったのに、一瞬であの変異種な魔生物を討伐できたその少女が成した業(わざ)はそれほど
衝撃的すぎるからそれで第一印象にまで働きかける錯覚と相乗効果か?
見たところから察するに、年齢的にはなぜか10代後半に見えてしまうが、実際のところはどうだろう?
感嘆とした心境で目の前で起こる神秘にも等しい蠱惑的な雰囲気と予測せぬ光景に、
「主様がお見えになられるのだ。外へと案内するからついてきて」
有無を言わさぬ口ぶりとオーラで手招きしたファティーマという少女の告げた言葉は、どうやらこの場にいる誰もがはっきりと分かる、その意志とはー。
やっぱり、『命令』なのである。従わないと力づくで、だな。
俺、【極黒天魔英】としてそれなりに色んな経験を積んできたと自負したのだが、こればかりはどこにも類似するものがなく、逆に新鮮とも感じた。
まさか、俺以外にもあれほどの魔物を一瞬で滅ぼせる実力者がこの未来の世界にも存在するとはな。
ポーリンヌとロザに注目したこともあり集中力が散漫だったとはいえ、この俺が気づかずに気配までも完全に殺せたようだし相当な力を持っているとみて間違いないようだ。
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