第11話: 方針決定。そして鉱山へ。

早朝、

宿屋のダイニングホールにて:


「では、アビミャーさん。一つ聞こうと思いましたけど、いいでしょうか?」

「もちろん。なんでも聞いていいよ」

ロザの質問に対して、そう返事した。ダイニングホールのテーブルに腰かけている俺達3人はやっと昼食を取り終えたので、本題を切り出そうとしたんだろう。


「私達はこれから、このイラム王国の首都、【ザバフィリアーッ】へ向かいますけど、貴方はこれからどうするんですか?」

「わたくしも気になりますね。あなた程の荒唐無稽な力を発揮できるマギカリアンを野放しにしていいのか少し懸念が...」

二人の問いに、俺は、


「そういえば、あんた達は外交任務でこの国にやってきたんだったな。....それなら、どうせ『この世界』に『転移』して間もない俺もやることなさそうだし、もっと知るために

二人と同行した方がいいかなと....その,ポーリンヌ達の護衛も兼ねて、ね」

昨夜、俺がどんな経緯で別タイムラインの過去からこの時代へやってきたか、『普通に暮らしてたけど、とある夜に眠りにつこうとしたら、急にものすごい眩暈を感じて

ぐるぐる頭が回っていたばかりかと思いきや、次にはあの光の柱の中で実際に落ちてゆく』という無難な嘘にしてみた。

だって、静野は俺にとっての大切な友人でもあったので、彼女のやってきたことを一々出会ったばかりの人に話すものじゃないと俺的に思う。

幸いなことに、二人はなんか微妙な顔をしてもそれ以上は追及してきたりせずにただ大人しく相槌を打つだけだった。

なので、『転生』じゃなくて『転移』ということになってる、二人の認識の中には。


「やっぱりそういうと思いましたわよ。このタイムラインの世界でもお金がいりますし、いくら規格外だとしても食事が必要なマギカリアンであることは

変わりませんわね。ですから、これから、アビミャーさんを正式的にわたくし達の護衛係として雇いますわね?」

これはありがたい。確かに、俺は魔術師としては桁外れな力を有して他と一線を画す程の存在として知られた時代があったが、いくら俺とはいえども魔法でタンパク質や

炭水化物を自由に作り出すことが不可能なので、食事の摂取は非魔法使いの人間と同じく不可欠なものなんだ。

なので、ポーリンヌの提案は俺にとってはもってこいってことだ。


「それには感謝するよ。お金がないと何も食えぬしな」

「でも、あなたほどの魔力の持ち主ならば、野生動物とかを自分で狩れるのでしょう?お嬢様の提案に乗る必要性が本当にあるかどうか...」

「まあ、あんた達を護るついでに、この時間軸の未来かもしれない【リアーバッス】のことをもっと知っていくいい機会にもなるしな。なにせ、二人と旅していくと色んな情報

も手に入りやすくなってくるだろうし、一石二鳥なんじゃないのかなって」

ロザの疑問に答えると、


「あら、物分かりのいいことですわね、アビミャーさん~。まあ、たとえあなたがわたくし達と来ないと言い出してもほっておけないと思っておりましたわよ。だって、学園の

生徒会長でも務めているこのポーリンヌ・フォン・エールゲラリアーはアビミャーさんという危険かもしれない人物を目の辺りから離すなんて無責任なことをしでかしたりは

しませんわ。ですから、わたくし達と一緒に行ってもらうしかあなたに選択肢はありませんわよ」

そう言いながら向こうの席から身を乗り出してきたポーリンヌはまたも俺の鼻頭近くに人差し指で突き付けてきた。癖なのかな...


「なるほどな。筋が通る話で何よりだ。というか、ポーリンヌって生徒会長なんだ?道理でそれっぽいオーラを感じたしね」

「ふ~ふ~。当然でしてよー!アビミャーさんはバケモノ過ぎるくらいの魔力量の持ち主なのであなたを枠組みの外から考えるとして、わたくしはそれほどじゃないにしても

ジェネティーロッツアー国立魔法学園では一位な首席に君臨してきたマギカリアンですからねー!お~ほほほほ~~!」

と、今度は誇らしげに背を後ろに逸らして気取った笑い方で鼻高く自分の実力を自慢してるところなんだが、あえて突っ込まずに、


「なら安心だね。道中に一々のことに俺からの支援を必要とし過ぎないようで助かる」

「当然ですわ!なら、方針も決まったことですし、食事も済ませた今なら出発するとしましょう」

「お嬢様、お忘れ物がないかご確認を」

「いりませんわよ。だって、バッグも荷物もさっきの部屋でロザと半々ですべてわたくし達の【イルメメフョン(異空間格納魔法)】に収容しておきましたし。問題ありませんわ!」

と、自信満々に不適な笑みを見せながらそういうポーリンヌに、


「じゃ、宿代と会計を済ませて早速いこうぜー!」

「分かりました」「言われなくてもですわー!」

と、3人で同意し合うと宿主にお代を支払い終えて宿屋を出ていった。


.................


.........


【アールバルカハー】の街並みをゆっくりとしたペースで歩きながら、外へ出るための来た方とは反対側の門らしきところへと向かうのだが、

「.....ふむ。やはり、こういう沢山の視線を浴びるのは未だに慣れたものじゃないんだよな....」

「まあ、こればかりは仕方なさそうですね。何故なら、ここのみんなは褐色ばかりの肌をしているのに対して、私達だけはこんなに違いすぎる真っ白いと真っ黒い色素のダブル

コンボの肌色と来ましたし、相当珍しがられても甘んじて受け入れるべき他がないのですよ。『理由なき行動は狂人以外するはずがない』

、メイド教訓、その第5節にてそう定められましたから」

それもそうか...。ってか、またその『メイド教訓』とやらの痛い発言をしてくるかいー!!?


「...でも、なぜかそれだけではない気もしますけれど...」

と、ポーリンヌの怪訝な顔を見ると、なんとなく思い当たる節を辿ろうと俺達の服装や外見を再確認したら、彼女のその....なんというのかな...豊満な白い

マシュマロっぽいものがその...面積の乏しいミニスカートドレスから覗かせてるのをこの目で不覚にも10秒以上で凝視してしまったー!


「...アビミャーさん?ど・こ・を見てますの?」

ぴくぴくと青筋を立てながらそう低い声で聞いてきたポーリンヌは物凄い笑顔満面だけど笑ってなさそうな怖い目を向けてきた。


「だ、だって、しょうがないじゃんー!?あんたがそういう服着てきたから注目されても仕方ないんじゃー」

「それはこちらの自由ですわ。わたくしが何を着ろうとも」

「でもな!ただじゃ目立たない肌色をしているのに飽き足らず、そんな服まで加わると『見てくれ』っていうようなもんなんだぞ?」

「他人の都合でわたくしを巻き込まないで下さる?たとえわたくしが何を身に着けようとしても、彼らはこれを気にしないようにすれば良いだけの事ですわ!」

なおも食い下がる我らの我がままお嬢様に(っていうか、我がままバディーまでも含まれるのだけれど...)


「...あのな、ここはあんたんとこの家(うち)とか国なんかじゃないはずなんだけど?」

「だとしたら何なんですの?こんな胸元がちょ~っとだけ開いてるドレスじゃわたくしのカンテルベルック王国の貴族階級の者ならばどこにでも普通に来てますのよ~?

こちらの者の感性に合うかどうかはわたくしの知ったことじゃー」

と、主張を諦めないポーリンヌを見て心底たえられなくなったのか、俺達の後ろに控えていたであろうメイドが、


「横から失礼でございます、お嬢様。本来の付き人である私の立場なら、国を出る前の時からお嬢様にきちんと教えて差し上げなくてはならないことでしたのに

反応に付き合うの面倒なのであえて申し上げないようにしてきておりましたけど、アビミャーさんの必死な説得とこの町の強烈なみんなの視線のタッグワークで我慢に

達しました!」

ってか、メイドまで早口喋りかよーー!?


..................


.........


と、5分も経つと、服屋の中に服を物色していく俺達。

実は、ロザリーンが言うにはこのイラム王国にはアルメディア女神という地域神が崇められ、女神の教えに則った【メディア教】では信仰する教徒にとある戒律が定められて

いる。

それは、女性の教徒には肌の露出が公然の場において、最小限に留めることを推奨するとのことだった。

これは、女性はただの男性による性的対象物ではないとの啓示の元で出された戒律だ。

でも、身内である人達と私的な場所であるプライベートな時間で見せ合ったりするなら、なんでもござれのが基本だという。

具体的には、上半身では腕全体と肩の露出までが良いとされ、下半身に至っては膝頭までが最適とのことだ。

なので、膝頭上からの太ももが丸見えで乳房のラインまではっきりと見える彼女の...刺激的ドレスは完全にアウトな部類だ。

ポーリンヌはこの宗教関連のことについて、自分が【スネールヴァールド教】の教徒だからだということを言い訳にこの土地で崇拝されてる神のことを省いて読まないように

してきたから知らなかったんだという。

だから、....


「ロザリーンー!これならどうですの?」

試着室から出てきたポーリンは着替えてきた試着用の服を俺達に見せにやってくる。


「似合ってると思いますよ、お嬢様。ふふ...。 何故か見てるとこちらまで癒される気分ですね。アビミャーもそうは思いませんか?」

と、何故か熱烈っぽい視線を向けてきたロザリーンのすごい物言わぬ圧力を感じる俺は、


「う、..うん!俺も似合ってると思うぞ?」

メイドのご指導?の元で言うべきことを言い切った。まあ、でも実際に似合ってるからいいと思うんだけどなぁ...。


ポーリンヌが着てるのは、町の女性みたいなワンピースドレスを着ているようだけど、膝頭から上と胸元がちゃんと隠されてるデザインのようなので【メディア教】

の教えに従ってのチョイスだ。

だが、両腕だけは前のドレスの肘から上がほとんど隠れてるのに対して、今回選んだドレスはちゃんと全体が見えるようなものだ。

そして、町のみんなのほとんどが灰色か青色や控えめなデザインと色のものを身に着けてるのに反して、ここのポーリンヌだけが元々着てきたドレスのように、

眩しいぐらいの濃い赤色をベースにしたあしらいのようだ。

実にこじゃれた印象だ!


「お褒めに預かり光栄ですわー!お~~ほほほほ~~!まあ、たとえお世辞でも嬉しいものですわね、あなたほどの『魔力大海』から褒めてもらうの」

「『魔力大海』?何それー?」

「あなたの底なしの魔力を指して言う呼び名だと作りましたの。お気に召さなかったんですの~?」

「...す、好きにしろー!」

自棄でもうどうとでもなれや、おらー!所詮俺みたいな生まれから貴族じゃない者があんたのいう些細な事に対して一々にでも異論を唱えるのが馬鹿馬鹿しいと

思えてきたからだ。


それから、その高そうな値段の服の会計を済ませたポーリンヌの後を追うように、俺とメイドことロザリーンも続いてこの店を出ていったのだった。

だが、さっきチラ見したところ、ポーリンヌが何事もなく銀貨10枚を平然とした顔で出してる気がしたけど、なんて高さなんだろう...少なくとも、俺の『黄金歴』時代だった頃

にそれ程の美麗な服といってもせいぜい銀貨2か3枚までが限界かと....

20枚だと金貨1枚に匹敵する程のカネなので、やっぱりお金持ちの出だなって再認識させられた気分だったぜ。


「まあ、....文化的な仕来りならまだ外国人として許してもらえそうですけれど、宗教ときたら地元の神様に何かされるか怖くなりましたから、それでその...こういう服装のルールに従うより他なさそうですわ....それに、ここの教徒じゃないとしてもどの神様を崇拝したり尊敬したりしたくなるか気持ちだけでも強くわかりますわね。なぜなら、わたくしも自国のスネールヴァルド教徒ですから」


と、服屋を出てきたところにそう小さく呟いたポーリンヌだった。


.............


......


と、来た方とは反対側の南の方の門近くに差し掛かると、

「なんだとーー!!?」

「だから、さっきも言ったはずだ!先日から襲撃があったから鉱山は今のところ立ち入り禁止になってると」


怒鳴り声とそれを諭す者の声が聞こえてきた。なにごとだ!?


「急ぎましょう!」

「うん!」「承知しました!」

ポーリンヌの催促にそう賛成した俺とロザは早速とばかりに声のした方へと歩いていく。


「でもなぁ!オレ達にもやらなきゃならない仕事ってもんがたくさん残ってるんだぁー!魔生物とかなんだか知らないけど、こいつらぁさえいれば問題ねぇだろうー!?」

「そうだとも!僕ら【光の矢がごとく傭兵突貫団】にかかれば、魔生物なんて一秒でちょーーんだ」「おうよ!」「あったりめぇだー!団長の言う通りだぜー!」

「だが....この町の警備に当たっている『アールバルカハー守護団』の副隊長として、そう易々とあそこへの立ち入り許可を下せない!これはべクラム隊長からきつく

言われたことだ。少なくとも、あの鉱山に潜んでるっていう【ゾーマス級】らしき魔生物が隊長直下部隊が退治してくれた後でも遅くはー」

「んなこといつまで言ったって埒が明かぬ!オレとこいつらの力だけで充分と何度もいえばわかってくれんだ、おらぁー!」


ん?なんか揉めてるっぽいな。でも全部は聞き取れたぜ。とりあえずむさ臭い男の集団のようだし、ここは俺の出番だな。

「そこまでだよ、あんた達!」

と、自信たっぷりな表情を浮かべる俺はそこに集まっているみんなに近づくと不適な笑みでこう続く:


「話が聞こえてきたけど、どうやら何かのトラブルっぽい話題だね。魔生物とか言ってなかったっけ?」

「....オマエさん誰?そして、左右の方の嬢ちゃん達はー?」

「俺?俺はミルファンだよ。ミルファン・ガルサンという。このお嬢さんたちはー」

「わたくしはポーリンヌですわ。エールゲラリアー家のーむふっ!?」

(静かにして下さい、お嬢様!こんなガラの悪い男連中風情に貴方ほどの立場と階級持ちの人間が素直に素性を明かす義理がどこにもないはずです!)

と、ロザに負けずの聴力も持つ俺は当然、この位置からも二人の会話が耳に入った。ポーリンヌの口封じに忙しそうでお気の毒なことだ。


「とりあえず、この二人は事情があって俺という傭兵を雇って海外からこの国へと赴いてきたばかりなんだが、詳細なことは省くとしてこの金髪の方はポーリンヌだ。で、

銀髪の方はー」

「ロザリーンですよ。ロザリーン・クライスと申します。以後、お見知りおきをー」

と、長い竹のメイド服のスカートの裾近くを両手でつまんでお辞儀をするロザリーン。こうしてみると本当に優雅でメイドらしい礼節丁寧な仕草すぎて思わず見とれちゃいそう

になる。


...............


と、自己紹介を済ました何十秒後、


「なるほどなぁ!カンテルベルック王国からの『とある貴族家』の冒険者かぁ!道理で身のこなしといい、高そうな服も着てやってきてるんだもんなぁー!王都の魔生物ハンター

ギルドの連中もさぞ喜ぶだろがなぁ、新参者であるお前らが加入するのってぇー!」

ポーリンヌの家名をあえて伏せて貴族であるということは自己紹介したようだけど、あれほどの服を着るというのに庶民の出なんて言ったら信じてもらえないしな。

情報を聞く側のこちらには嘘つきはほどほどにしておかないと、だな。


「グルンズ殿!レディーの前だから言葉遣いには十分気を付けてはどうなんだい?」

「んだよー?ケッチつけにきやがってー!オレはただ納得しただけだろがぁー!」

「.....もういいよ。石頭なグルンズ殿に何を言っても無駄そうだし、僕がこちら側を代表してミルファン君と対話するから黙っておいて下さい」

「ちぇー!さっきは兵士の前だからオレの後ろに隠れてんのに、冒険者っぽいそいつらとなら勇気出しやがってー!」


と、そんな内話を聞かされてから、

「さっきは済まないね。雇い主の見苦しいところを見せちゃって」

先ほどハジールと名乗った【光の矢がごとく傭兵突貫団】の団長が代弁してくれたので、


「ううん。こちらも自己紹介に手間取ってしまって悪かった。で、【ザバフィリアーッ王都】に向かう予定の俺達だったけど、あんた達の話していた内容が気になったので

やってきてみたんだが、どこに魔...生物が潜んでいるというんだい?」

なるべく紳士な態度を心掛けながら口調をそれなりに交渉適切な柔らかい方に変えてみた。いつものように。


「そうみたいだね。あそこのムザファー副隊長さんがそう言ってたので信憑性が高そうかも」

「じゃ、その魔生物ってどこに?」

「ウルメン鉱山だよ。三日前、レングル鉱石の採掘で働いていた採掘者4名が帰ってくる予定の午後5時ごろから深夜近くまでになっても帰ってこなかったらしいし、多分

魔生物に襲われたのではないかと町の警備隊のべクラム隊長が推察したので、それをー」


「退治しに行ってみたんだけど、二日までも帰ってこずに、『連絡用携帯魔鏡(リファニョ―ル)』からの最後の通信は『ゾーマス級らしき魔生物と戦闘中だったのでここ

へ来るな』って伝えられたので律儀に命令を一通り守ろうとする警備隊の副隊長さんだな。合ってるのかな?」

聞こえてきた内容と照らし合わせて俺から推察してみたら、


「........ぜ、全部合ってるよーー!?あれだけの情報量だけで大体のところを把握できたのって、名探偵か何かかな、君ー?」

『連絡用携帯魔鏡(リファニョ―ル)』は俺のいた『黄金歴』時代にこの手で発明した便利な魔具だったので、この時代になってもそれらしきものがあると昨夜で聞いた時は

嬉しさを禁じ得ないものだった。


「ううん、俺なんかはただのごく普通の魔法使いだけだよ?それより、ハジールさんは雇い主である【アールバルカハー採掘安全保障団体】って会長であるグルンズの

主張にも同感して、すぐにでも採掘者のみならずべクラム隊長までの安否確認をしに鉱山へと潜り込んでいきたい訳なんだよね?」

「そうだ!何時までも待ってはいられないからね!あそこの臆病なムザファー副隊長のいう事なんて無視し、強引にでも検問所を突き通って鉱山へ向かうしかないよ!

だから、さっきは彼との交渉がもしも決裂した場合ー」

「力づくでその副隊長を気絶させに、と?」

言わんとしてることを当ててみると、


「.....そこまでならないようにと、心底願っていたんだけどね....」

「ははは.....あんたもグルンズも苦労してるよね。あんな警備隊の副隊長のおかげで」

「まったくだー!だってもう二日間なんだよー!?帰って来てないのって!普通は安否を確かめに行くものなんじゃないかな―?」

「でも、彼は貴方がたの提言も考慮せずに、依然としてべクラム隊長からの『来るな』という命令に固執し過ぎているとのことなんですね?」

横から話に割って入るロザの問いに、


「ええー!あれには本当に参った。たとえ上司の命令であっても事態の収拾が急速に予測できない展開になっていたら、普通は動くものなんでしょー?それをしないとなる

と....」

「ただの臆病者ですから少数兵力だけでも出動したがらずににここで待機しっ放しなんでしょうね...」

「それだよな!恐らく、隊長に倒せないような相手だったら、『自分が行っても無理だな』って頑なに動いたりはしないだろうけど、それなら撲達だけでも行ってみて鉱山が

どうなってるのか任せてくれと頼んだみたのにー」

「それも却下されたってね?」

「ええ...。この町は君たちも見て回って既に知っておいたかもしれないんだけど、外へ出るために4か所の検問所があって、【ウルメン鉱山】へ向かうのには南の門を

通る必要があるんだが....」

まあ、そうなるよな。検問所に勤めてる兵士があんなんじゃ話にならんしな。


「じゃ、俺達に任せておいてはどうかな?」

「ーはい?」

これは単なるおせっかいとか酔狂な申し出じゃなくて、ちゃんとした動機に基づいて提案してみたのだ。

この魔生物討伐の任務をこなせば、何か有力な情報...つまり、この今の時間軸の世界における重要な何かが手に入るという直感に突き動かされ、

俺をこんな風に言わせたんだと思う。


「こう見えて、俺とこのお嬢さんたちは結構な強さを持ってるからね、チームとして。だから、状況確認と魔生物討伐という両方の任務に関して、俺達だけで

引き受けさせてもらっていい?」

「......でも...他所の国から遠路はるばるにやってきた君たちに、どんな面下げて自国問題を解決してほしいと言えるものかぁ...」

「平気、平気。なぁ、ポーリンヌ、ロザー!」

一応、俺の方の雇い主である彼女達へ確認するために聞いてみれば、


「.....ゆくゆく考えてみればいい行動になるのかもしれませんね。ここのイラム王国で何がしらの恩を売るようなことをすれば、後々の外交本場の交渉で役に立てる

でしょう。では、お嬢様、どうなります?」

「~~~!~~~~!」

ああ!そういえば、さっきはポーリンヌが何か余計なことを口走らないか心配したロザ―だったため、俺にこいつへの『口封沈黙魔法(ヴェニティール)』を施すよう頼まれたん

だったっけ?


「~~~~~!~~~~~!!」

やれやれ!それじゃ許可するかどうかわかったもんじゃないので、とりあえず魔法を解いてみることにする方が先決のようだね。

....それにしても、メイドもご自分の主なのに容赦はしないタイプのようで一番怒らしちゃいけなさそうな人なのだな。これからは気を付けておくことに越したことはなさそう。

まあ、さらっとだけど、あまり詳しく明言せずとも昨夜で二人が言うには、どうも彼女達は幼い頃の幼馴染っぽいなので、それから離れ離れになって最近で入学したばかりの

ころの一年生同士の時で再会したんだったっけ?

俺の場合と大きく異なってるなぁ。

こちらはセナに避けられてるわ、静野に刺し殺され転生させられたわで、女難の相の嵐だったぜー!


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