プロローグ(中)

「うりゃああーーーーー!!大爆狂炎海、【ベゴラヒー・グラガラム】!!」

バコーーオオオオオオオオオオオォォォーーーーーーー!!!!


この[アシガラ森」で爆炎が炸裂し、辺り一帯が炎の海に包まれる。様みろ魔物共よー!さっきお前ら一眼目の巨人等【ウングベック】が好き勝手暴れまわって

【グレート・フレーム・ヘールボム】であちら方面を大爆発で燃やし尽くしたようだけれど、こっちが本物の地獄のような超大爆炎がどんなものか、しっかりとお前らの目に格の差を見せつけてやったぜ。


「喰らえーーじゃ!極凍白渦魔槍、【イリューバッハ】ー!」

静野の両手から夥しいほどの魔力の渦が本流となって流れ出て、そこから数えきれない程の氷の槍が出来上がり、彼女の浮いている空中の位置から前方の何百メートルで急接近してきた紫色の角の生えた禍々しい外見をしている蝙蝠や家屋並みに大きいな鳥っぽいものに向かって凄まじい速度で飛んでいった。


カチャー!!カチンー!!カチャカチャカチャー!!!!


あんな恐ろしい見た目をしている魔物がたくさんいたのに、静野の【イリューバッハ】から生み出された何百本の氷の槍ですべてが悉く氷結にされ数秒後に

かちゃんという音を鳴らして粉々に砕け散った。


「静野ー!こっちもさっきから迫ってきた【アルグリーズ級】の群れ15体を消し炭にしてやったぞー!そっちはー!?」

「見ての通り、完璧に8体の【シラーズ級】である【ガビャール】と【メノシア】を氷漬けにしてバラバラに冥界(悪魔の世)送りにー!」


まあ、いくら予測不能の大事件、つまり超上級な魔物(ハイ・グブラハー)の暴走であそこの『ヒデアキ』という町へ襲い掛かろうとしていることが起こっても、この森を通ろうなんてことをしてしまった時点でお前らの運の尽きだ。

なぜなら、この[アシガラ森」にて、この世界でもっとも桁外れな魔術師二人が偶然にも魔法訓練で滞在しているからだ。


「その調子だ、静野!俺達でやつらが『ヒデアキ』へと到達する前にすべて全滅させるぞ!」

「当り前じゃー!妾の大事な民をあんな怪物の好き勝手にはせぬじゃー!しかし、まさか妾のヤマガタに滅多にしか現れないはず...いいえ、世界規模..【リアーバッス】のどこかにおいても本当に稀にしか出現しないはずの超上級な魔物(ハイ・グブラハー)、それも1000年に一度だけと言われておるようなモノがいきなり何の前ぶりもなくこの森を駆け抜けてきたとは.....」

「考えるのは後だー!また性懲りもなく、次から次へと湧いて出てきやがったーー!」


今度は俺達の桁違いな超魔法で未だにその影響の及んでいない1キロほどの距離での緑色豊さが保たれるままの方角から巨大な蛇...のようなわけのわからん怪物が猛スピードでその巨体をこちらへとうねうねしながら急接近中。


「そんな程度の速度でー!」

「ヒャァー!」

「ー!?」

またも大爆狂炎海、【ベゴラヒー・グラガラム】をぶっ放すところだった俺に、静野の悲鳴が聞こえたから俺は自分の魔力集積を止めた。


「くそー!」

よく見ると、静野の両手両足がどこから湧いてきた4本の触手によって縛り付けられているようだ。

あの蛇っぽいハイ・グブラハー、【ネルン】と呼ばれてるんだっけ?は触手が生やせないからどこかに新手が地下を潜ってそれで静野を捕らえに来たのだろう。


「静野ー!暴れずに動くなー!すぐ助けるから!絶魔悪滅光条【ニラ・エフェムレット】!]

【ニラ・エフェムレット】を発動すると、俺の右手から複数の光の線条強烈な輝きで周囲を眩しく照らしながら、俺の制御下で静野のいる空中の位置に延ばされていく。

それが彼女の近くに到達すると、たちまち淡い光がそこから発せられ、彼女の四肢に絡みついてきたあの触手達を一瞬にして腐らせ絶滅に導いていく。


だが、彼女を助けたことによって、

「ー!?」


そう。さっきこちらに向かってくる巨体をしている蛇【ネルン】から意識を逸らすことにより、やつの接近をこんなに近くまで許してしまった。

「しまっー」


もう遅かった。


【ネルン】がその大きなな口を開けて一瞬のコマで再生されるように無慈悲にも俺の全身を呑みみ込んだ。

「アビーちゃんー!!」


.........

.....

...


静野の声がこの【ネルン】の食道にいる俺にも聞こえた。


まったく、心配するなって。


俺がこんなやつに、本当に喰われると思ってるの?

じゃ、仕方なくお遊びもここまでにして、本気を出すとするか....


「大柱総滅対破剣!【ネファグレーツ】-!」

俺の頭上から細長い黄色の柱が現れ、そこから2本の対となった剣に分身された。

「おりゃああーーー!」

その2本の剣を操って、蛇の身体を左右から縦長に切り裂いていく。


「アビーちゃんー!怪我はー!?」

死体となった【ネルン】の左右から出てきた剣2本と同時に見えた俺に、静野の呼び声がここにも聞こえた。

「大丈夫だー!いくら【アルグリーズ級】とはいえ、俺が【ネルン】ごときで本当に遅れを取るとは思わないよねー!?さすがに!」

「それは分かってるじゃけどー!でも、頭じゃ理解しても心が耐えられぬのじゃー!お主があの怪物の腹に収まっていくのを見るのはー!」

「へいき~平気~~!俺はこの通り、ぴんぴんなんだぜー!?」

「もう~~!すぐ調子に乗ってるんじゃから、アビーちゃんは~!」


俺のガツポーズを見ることによって、ついに顔をほころばせる静野は照れながら満面の笑みを向けてきた。

だが、


「「ーー!?」」


そう。今回はもっと逼迫した状況が迫ってきた。

俺がさっきの【ネルン】の対処に当たって気を逸らされらことにより、静野の四肢を縛りつけていた触手達の持ち主である..おそらくカブトムシのような形をしている

ハイ・グブラハーである【オスノーッス】の正確な位置を特定できずに放置してしまったー!


「むっー!」


おかげで、今度はその触手一本が俺のすぐ真下近くから生えてきて、それを使って俺の口や頭すべてを覆い包んできたー!

「アビーちゃんーーーーーー!!!!!」


かつてないほどの静野からの凄まじい叫びが頭全体を覆われていて見えなくなる俺からでもはっきりと聞き取れた。

これは、確かに大ピンチになってるんだな...。


なにせ、魔法を発動するためには魔力を集積する必要だけじゃなくて、詠唱破棄でも少なくとも魔法の名前とかは絶対に声を出して口にしなくてはならない。

そう。頭の中で念じても無駄のはず。

しっかりと声を外に空気に出して唱えなければ、魔法発動にまでは至らないのがこの世界そのものの理だ。


でも、頭を完全に覆われてむふむふしか口元を動かせない俺に、どうやって声を出せとー?


終わりだ。


完全に........


「アビーちゃん,しっかり気を持てー!今すぐ妾の番で助ける!やあああーー!烈焔大燃撲斧【ガドウィーン・ヤシルン】!」

焔の斧かぁぁ...

攻撃用の魔術にしては大威力だけど、この触手から発せられる猛毒が俺の生命力を根絶させる前に燃やし尽くせるのか間に合いそうにないんだけどぉぉ....


もう駄目だ......


死ぬ...


静野との楽しい思い出...


【ダルケン蘇生魔術】を完成させる前に死んでいく未練...


なにもかも...


すべてが..


終わった..


................

.........

....


と、いうと思ったか?

ほほほ...


確かに、この【リアーバッス】という世界において、魔術概念というのは何か発動したい魔法があれば、声に出して魔法のなめだけでも口にする必要があるんだが、

【極黒天魔英アビミャー】とまで呼ばれている俺なら、その常識だけでは俺の全力は測れない。


「ふーーん!」

脳内だけで全身殺魔流大渦【ミア・フェーリニョン】を念じる俺は全身から莫大ば魔力の本流が渦となって流れ出して、周りを一瞬にして高密度の魔力で構成される断絶の結界が出来上がっている。

「アビーちゃん!無事じゃったのね~~!!なんとなくそうじゃと思っちゃったけど、不安ですぐ加勢したくて魔法も放つ寸前じゃったよ、妾ー!」

この魔力の大渦から足を踏み出していく俺は颯爽と空中歩みをして、静野に柔らかく微笑んでからすぐ真下にいるであろう『あれ』に向かって、

大柱総滅対破剣!【ネファグレーツ】を撃った。


さっきから、超上級な魔物と戦ってきた俺達はそれらを屠るためには相応の魔術じゃないとできないようなので、

いつも第5階梯の魔法【ミハエール階梯】を連続で惜しげもなく何度もぶっ放しで放ち続けてきたのだけれど、それらの魔法のすべての効果が10秒以内だけで

留まるので、さっきあの大蛇を【ネファグレーツ】で左右から切り裂いたから今回またも使うとなると、再び魔法名を唱えて発動する必要がある。


グサーグザー!!

地面に突き刺さった2対の巨剣はなおも地下へと貫き通して、強烈な光を浴びせながら真下にある地殻地盤を総べて滅ぼすべく光り輝く粒子と化して周囲にある

すべての分子を分解させるように弾け飛ぶ。


カチャーーーン カチャカチャカチャーピカピカーーーチーーーーン!!!!

......

...


クレータができるほどにカブトムシの怪物である【オスノーッス】だけじゃなく地下の総べてを滅した俺は今度、地面に降りて、静野を手招きように彼女のいた方に振り向こうとしたけど、よく見ると彼女の姿がどこにもないー!?


「こちらじゃよ」

「えー」


グッサーー!

「ぬぅーー!?」


何が起こったのか分からない。


だが、胸のところに刺すような熱くて、蓄積されていくような鈍くても長続きするようなこの気持ち悪い感覚は...


もしかして痛み?それに、この細長くて不快な冷たい感触のする金属的なものって..

剣ー?


「悪いのう、アビーちゃん。妾にも未来のこのヤマガタ四季国と【リアーバッス】すべての住民のことを思って、こんな行動に出ざるを得なかったんじゃ。許せとは言うまい。じゃが...」


グッサグッサー!

「こほー!こほおーー!!な..なぜ..だぁ..静..野..?」


尚も剣を深々と何度もぐりぐりしてきた静野は、

「これだけは言わせてほしい。妾はいつになっても、どこにでもいても、絶対にお主の味方でいるつもりじゃ。再開するまでにずっとじゃぞ!じゃ、さよなら、

【極黒天魔英アビミャー・ゴラム・ナフィズール】ちゃん。理不尽じゃと思うじゃろうが、妾にもちゃんとした理由があってこんな真似をしたんじゃ。1000年後、

お主がまたも転生することになったら、その時はすべてを話そう。それまでに、よく眠っておくといい」

「こほーー!」


静野が何かブツブツ言っているようだけど、激痛で苦しんでいる俺からはまったく何も聞こえてこない。

もしかして、静野がこんな暴挙に出る前に俺が【ダルケン蘇生魔術】を事前に発動してみることにしたら......

ここで剣を刺されて死ぬとしても蘇る..のだろうか?


まあ、可能性の話をしたり、静野の意図や動機を考えたりしても..仕方がないけどな.......

だって、もう死んでしまいそうだからな..........


「大丈夫じゃ。妾も一年後に、【とある儀式】を終えてから直ぐにお主の後を追うぞ。未来の世界へ」


静野のやつ、また何か言ったようだけど、もう聞けるほどの力も今の自分の朦朧とした意識には無理な話だ。


それから、俺の意識は、そこで途絶えることになった........


......................................

.....................

.........

...

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