極黒英雄の転生物語

明武士

プロローグ(前)

これは、とある剣と魔法の世界に起こる物語だ。

正確には、【リアーバッス】と呼ばれている世界の話なのである。


物語が始まる1000年前の事......


とある天才肌な魔術師が子供の頃から色んな訓練や研究を重ねて、20歳になったまでには既に伝説級な人物とまで称えられるようになり、何か国かの魔装技術や

発明品を残したりした数々の功績を積み重ねてきたけど、とある小国の知り合いである女王を上級な魔物の攻撃から庇うために若いながらも無残にも命を

落としたという。


だが、真相はもっも違うということは、誰かが考えても明白なのである。


そう。これは、エルブレーズ帝国が存在していた黄金時代であった、黄金歴150年での出来事だ。


「よもやこの妾の城まで足を運んできたとはな、アビーちゃん。」

「だから前にも言ったろう?俺をちゃん付けで呼ぶなって」


とある極東の小国にある敷地の広そうな巨大で豪華な城に、二人の若い男女が対峙している。

黒髪ロングをしている女性の方は10代後半な見た目をしているのに反して、どこかその国の言葉における年配者が使うような一人称を自分を指して口にしているようだ。

絹のような滑らかですべすべの真っ白い肌をしているその少女は、綺麗な容姿と相まってどこか華麗な服装を着ていて、如何に社会的上位者だけが身にまとっていいよう

なものであることが窺える。


「ほほほう!それは却下じゃ。だって、アビーちゃんと呼ぶ方が可愛いじゃろう?ほほほう...」

腰に左手をあてながら口に右手を当てて優雅に笑っている彼女に、


「もう...会ったのは数年ぶりだったのに、あんたも相変わらずのんきで飄々としてマイペースな女だな。こっちが何か注意したりアドバイスしたりしようとしてもまったく聞かないし他の偉い人と違ってあんただけがもの飾らぬ態度で俺に接してきたんだな」


「でもこの方が良いと思うじゃろう?【極黒天魔英アビミャー・ゴラム・ナフィズール】よ」

「まあ、それもそうか。畏まった堅い呼び名のも散々聞いてきて飽きたし、それに俺も着飾った物言いよりフレンドリーに話しかけてくるあんたのが方は好感が持てるぐらいだ」

「まあ、まあ~~。それはおプロポーズじゃったのう?キャン~嬉しゅうござるじゃわ~~!」

「思ってもいない恥ずかしいことをスラスラと口にすんなや、気持ち悪いだけだぞ(容姿がとびっきりで可愛いのにいつもからってくるわ冗談ばかりいうわで困った人だぜ)」


「ほほほう!悪い悪い!久々にアビーちゃ..こほ!お主と会うのが楽しみにしてたから、つい舞い上がっちゃってお主の反応が見たくてからかったまでのことじゃ。

まあ、それはともかく、お主が今日、妾の城に訪問する理由はやはり、お主が名付けた、コードネームである【ダルケン蘇生魔術】についてじゃったな?」

さっきのやり取りと違って、シリアス顔に切り替わった彼女は本題を切り出してきた。


「そう。3年前で、この城であんたと一緒にきつい研究や訓練を経て【シノマル蘇生魔術】を初めて発明して創作した俺達だったので、【ヤマガタ四季国の女王】

となったばかりの今のあんたなら協力を仰ごうとしてここへ赴いてきたんだ。」


聞かれたことに答えたアビミヤーという有名な魔術師でありながら真っ黒い肌をしている異国の青年は、正面にある長い階段の末にデンと構えた高台に正座をしている【ヤマガタ四季国の女王】に真剣かつ誠実な視線を向けながら、こう続いた、


「ここ何か月間での手紙での連絡で既に分かってると思うが、今の俺が開発したい魔法は【ダルケン蘇生魔術】といって【シノマル蘇生魔術】と違って、唱えた術者本人がその後の1時間ほどの間でなんらかの原因で死んでも、すぐに蘇って死ぬ前の傷やすべての身体的欠陥...つまり病気とか疾患とかがすべて治って、7歳いきた頃

の自分に若返ってもなおすべての意識、記憶知識、魔力や自分自身たらしめているすべてを引き継いで、その場で生まれ変われるというものだ」


長く説明してみせたアビミヤーに対して、

「....代償は?...お主も知ったの通り、この世界においての魔術というのは、なんらかの代償を神羅万象にごろごろ存在している神々や精霊達に支払って、体内に

ある魔力やら術者の持つ何かを犠牲にしてようやく発動するというものじゃ。普通の魔術なら、その代償はただ自分の体内に宿っている魔力値というものだけじゃが、

前に妾達の作った【シノマル蘇生魔術】はそれだけじゃ済まされぬようじゃってこと、もう忘れたということはないのじゃろうな..?」


そう。この世界における魔術というのは、開発者本人がもっとも実現しようとする効果が生み出されるように、望むべき効果に関係するような呪文や詠唱を唱え、それを

神々や精霊達に奉るように強くお願いしてからやっと発動できる代物だ。もちろん、高次元の存在に頼むということで代償がつきものだ。


「もちろん忘れたことは一度もないぞ?【シノマル】の代償は魔力値で12000点だけじゃなくて、3年前で俺達が試した時にはどっちにも発動後の一週間に右腕が

動かさなくなった事例だ。」


「そう。そして、その【シノマル】を試験的に実施した際に、どっちにも実験台として志願して死んだことがあるのは、覚えているんじゃな?」

「ええ。俺がもっとも開発したかった魔法なのだから、最初に実験台として名乗り出たのが俺だった。術者だけが対象よして蘇るのに反して、【シノマル】は術者が発動したことにより、蘇らせようとする一人だけの死者を生き返らせることのできる蘇生術だ。但し、条件がある。蘇生した死体がばらばらになりすぎないこと。そして距離を100メートル以内にあるということ。」


「でもあの時は本当に焦ったんじゃよー?まさか自分を最大な爆発魔法である「ドクレア」で撃てじゃったなんてー。おかげで寿命が何十年も縮んだ気がしたんじゃ!」

「しょうがなかったんだろう!?ああでもしなきゃ、俺が死んで実験台として【シノマル】で俺が蘇生できるかどうか試せなかったんだろう?」


「でもやはり無茶じゃったよ、お主のしていたことは!魔術探求のためなら自分の命に使っても厭わないとは...どれだけ魔術マニアじゃったよ、アビーちゃん~!」

「またちゃん付けか...まあいいか..そういうわけで、今回も頼むよ、静野姫ーじゃなくて静野女王!【ダルケン蘇生魔術】の創生への成功に協力してもらえるか!?

おっと、正式な一般人からの申し出で、いくら昔馴染みであるとはいえ、丁寧な言葉遣いで依頼ーいいえ、ご依頼しなくてはですなーこほん!」


「ほう..」


「では改めて、お願いしますね。ヤマガタ四季国の女王、朝春静野(あさはるしずの)陛下、どうか私に【ダルケン蘇生魔術】の魔術開発を成功へと導けるよう、協力して頂けないでしょうかでしょうか?」


深々と頭を下げる彼は女王がその目でしっかりと嘆願の内容をふむふむとうなりながら考え込んでいる様子だ。どうやらアビミャーはこの国の人間ではないということを

物語っているように、地面へ頭をつけて土下座という国の作法みたいな嘆願方法をせずに、ただ直立したまま頭と上半身を腰の丈まで曲がっているまでのようだ。


「ぶぅー!」


「え?」


「ぶははははほほほほほほうーー!!これは傑作じゃったな、アビーちゃん!まさかこの世界の超有名な人物である【極黒天魔英アビミャー】とその膨大な功績だった数か国での発明品やら魔術にかかわる知識全般で教え回ったり、魔物討伐に協力したりしてきた大英雄となったお主が、自慢じゃないけど他国に対して何も大きく貢献したことのない辺鄙なところにある極東の小国の女王である妾なんかに頭さげてまでお願いしてきおったとはのうー!あははほほほほほほ~~!」


いきなり爆笑し出した静野女王。というか、あんた、「辺鄙なところにある極東の小国の女王である妾なんかに」とかいうけど、実際に魔力や魔術関連の知識や魔術師としての

熟練度はこの世界において唯一で俺と同等クラスだろうが。


「なー!何も笑うことないじゃんかよー!?こっちが誠意を持って正式なやりかたで魔術研究に協力してほしいとお願いしたのに冗談扱いかよ!」

「むはほほほ~~!ごめんごめん~!じゃって、お主がイメージと違っていきなり真面目ぶってそれだもん!笑わない方が無理じゃってー!あははほほほほー!」

目元をこすって爆笑によって滲んできた涙を手で拭う女王。


とまあ、それから、俺、アビミャーは彼女に客人として迎え入れられて、城の住人として5週間近くも住んできた。

魔法研究や開発のためとはいえ、旧知の仲である俺は共に晩餐会へ招待されたり、共にたくさんの食事を彼女と二人っきりで食べたり、忍びで商店街へと一緒に

買い物したりと色んな楽しい思い出を積んできて、ただのビジネスライクな関係ではないということが周囲の侍女や重臣達が気ざと気づいて何かにつけてひそひそしてたのを見かけた。


とはいっても、俺達はただの友人同士のようなものだ。特別な仲かと言われたらそうでもないと断言できるぜ。

でも、昔の王女だった頃の静野より女王としての今の彼女とのプライベートな時間をたくさん過ごせる今の方が多忙でストイックな魔法一筋だった頃の少年時代の自分より遥かに楽しく感じれたのが計算外な美点だともいえる。


でも、楽しい日々の連続にも、必ず幕が閉じられることになるのは、どの物語を読んでいても必ず訪れるものだ....


とある日...


バココココココココココーーー!!!!!

早朝の頃に、俺と静野が都市の外にある[アシガラ森」で【ダルケン蘇生魔術】についての試験的な発動を試そうとしたら、いきなり中規模の爆発が巻き起こってしまい、膨大な数の木々や岩々が吹き飛ばされ砕け散った。


「やはりそうなるか...」

ここ、[アシガラ森」はこのヤマガタという国の定めた、『魔法使いや魔術師以外立ち入り禁止』の特別管理地帯だ。


なので、魔法の練習とか訓練や学園生用の

特殊な試験や勉強によく使われる場所だ。でも、この辺り近くに人間がまったく暮らさないということはない。なぜなら、あそこの方角での5キロ以上には小さな町、『ヒデアキ』があるからだ。


「だから言ったじゃろう?実際に死ぬ確率のある戦場とか敵の前での場面じゃないと、唱える術者本人の身にはその蘇生魔法が付与されずに、それと代わって

周囲への術者からの魔力暴走で爆発しちゃうと何度も試して分かってくるはずじゃろうが!」

「でも、『実際に死ぬ確率のある戦場とか敵の前で』とか、普通に過ごして生きてたらめったには経験できないものだろう?』」

「お主の場合だと、そうでもあるか...じゃって、誰の物好きが好き好んでお主みたいな化け物レベルの魔術師に挑もうというんじゃ...」


「でも、この間、ここら辺んでの魔物のアジトでやつらを片付けていながらで発動を試したじゃないか!それなのに、結果はさっきと同じばっかでどうなってんだよー!?爆発ばっかでもうわけわからん。どうやって、自身の身体に【ダルケン蘇生魔術】が付与される感覚を感じるようになるか、さっぱりだぜー!もしかして、これは無理ゲーなんじゃー」

「発案者のお主がそれ言うかー!」


ツッコミが返されるやいなや軽くしばかれた。でも綺麗な女性からこういうスキンシップをされるのが悪くない感じ、ましてや相手が魔法研究においての同志で

あるあんたならな。


「じゃ、これをしてからやってみるのはどうじゃー?」


「ん?何をー? なー!?」


何が起こったのか、一瞬だけで気づかなかったけど、頬に柔らかく湿っぽいながらも温かい何かが触れた数秒後によく理解できた。


どうやら、静野はその白い肌とよく似合ってるピンク色の唇を俺の正反対の肌色をしている頬へと近づけて、軽く口づけをした模様だ。


「キスじゃ。これ、合ってるんじゃよなー?お主のいた西の大陸の作法で?」

「ああ...それは..まあ、そうだ」

まさか、女王の立場となったあんたが初めて、その唇を、ただの志を共にしている魔法研究の仲間である俺の頬につけるなんて...

婚約者でも恋人でもない俺に...?


でも、彼女の顔を見るに、なんか顔全体がほんのりと赤くなってるとような気がするけど、もしかして熱でもあるのかな...?

静野はいつでも何かをする時に堂々としているし、まさか自分がやろうとしたことなのに恥ずかしがるということないはずだ。


ましてや唇を頬に、という行為は他国のいくつかの国で行われた一般人や貴族までの階級のような挨拶代わりのものだし、いくらこの国じゃ身体の接触が親しい間柄の人間だけしていいようなものだという習慣や文化があるからとはいえ、静野は

絶対に無理と思ったようなことを平然とやってみせるということはないはず。


照れるのなら最初から慣れないようなことやらなければいいのに...


「なあ...アビーちゃん。もしもの話なんじゃが、...もし妾達がこの【ダルケン蘇生魔術】の発動に成功する暁がきたら...その時は二人で、どこかへ遠く...遠くのどこ

かへー」

バコオオオオオオーーーーーーー!!!!


言葉を続けようとする静野を遮るように、どこからか突如としての大きな爆発音が聞こえた。何事だ!?

「「ーー!!!?」」


ビュビュビュビュビュウウーーー!!!


今度は耳障りな羽音が聞こえてきて、俺と静野がお互いに目配せをしてから、


「[この森のどこか近くから聞こえたみたいだ!!飛行魔法、【エランス】で空中浮遊して音源を辿ろうー、静野ー!」

「ええー!わかったのじゃー!」


何が起こっているのかまったく見当がつかないけど、まずは確認をー!

「行こうー!」

「うむー!」


伝説級な魔法使いである俺と静野なら、無詠唱でもで【エランス】を発動できるものだから、それで空へと飛びあがっていくー!


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