第3話 イケメンはいませんか
「ねぇ、ビロ……どうして、兄様と私の顔ってこんなに違うの?」
あまりにも双子の兄達がブサイクすぎて、ショックで倒れた私は、気づいたらまたベッドの上に戻っていた。
「どうして……と言われましても。そうですねぇ、お二人は亡くなられた二人目の奥様のお子様ですから……」
「え!? そうなの!?」
「やはりそれもお忘れで……いいですか、お嬢様。お嬢様の母上様は旦那様にとっては三人目の奥様です。トゥイ様とスリード様は二番目の奥様によく似ておられますが、お嬢様は三人目の奥様にそっくりなのですよ」
ビロの話によると、私——レイラの父であるあの髭の領主には四人子供がいて、長男のワンスは一番目の別れた嫁との間に生まれた子供で、次男三男は双子を産んですぐに亡くなった二番目の嫁との間に生まれたそう。
顔は似ていないけど、とても仲がいい三兄弟らしい。
そして、私は今の三番目の奥さんとの間に生まれたのだとか。
「そういえば、お母様とはまだ一度もお会いしていないけど、今どこに?」
「奥様でしたらワンス様と一緒に地方へ……明日の朝にはこちらへお着きになられるそうです」
「そう……」
きっと、長男がイケメンなのね。
そうに違いない。
まだ屋敷の人全員を把握しているわけではないけど、双子の兄達と似ていないのなら、きっと、そうに違いないわ!
長男ってことは、次の領主になるわけでしょ?
いわば王子様よ。
きっと、イケメンに決まってるわ!!
そして、翌日朝到着した馬車から出てきたのは————
「レイラ……本当に、目が覚めたのね……!!」
レイラによく似た美しい顔立ちの母と……
「おぉ、我が妹よ!! ついに目覚めたのだな!!」
声が無駄に大きい、四角い顔にパンチパーマの小人だった。
違う……違うこれじゃない!!
私が思ってた長男と違う!!
* * *
それから私は、この屋敷の中を歩き回ったの。
ここは大きな屋敷だし、働いている男もたくさんいるに違いないし。
まずはイケメンの定番の執事を探したけど、みんなビロのように人間にしては短足で小さいオジさんばかり。
多分、種族が違うとか、そういう系なんだと思う。
それにシェフも庭師も御者も門番もみんなブサイクか、もしくは人外で、記憶が曖昧になってる私の問診にきた医者なんてバッドで顔を殴られたんじゃないかってくらいボコボコの顔だった。
違うの……私が求めているのは、こんなブサイクな男どもじゃなくて、すらっと背が高くて、顔つきが中性的な……よくある少女漫画で出てくるような綺麗な顔のイケメンなの!!
っていうか、もうこの際、好きなタイプとは違うけど、マッチョな体育会系でもいいわ。
本当はちょっと影のあるイケメンが好きだけど、この際なんでもいい。
お願いだから、イケメンを……乙女ゲームの世界なんだから、イケメンを出してよ!!
どうしてイケメンがいないの!?
なんで、世界観は全部乙女ゲームによくある異世界なのに、どうして!?
魔女も小人も精霊もいるのに、どうしてイケメンだけいないの!?
私のような美女だって美少女だっているのに……イケメンがいないのはなんでなの!?
「あの……お嬢様、大丈夫ですか? 聞いてますか?」
「え!? 何よビロ!! なんか言った!?」
「……あ、あの、ですね……これが届きまして————」
イケメンを探すのに夢中になっていた私は、背後からビロが話しかけてきていたことに気づかなかった。
「招待状?」
ビロが渡してきたのは、上質な紙でできた金色で花の模様が描かれた白い封筒。
「舞踏会の招待状のようです。各国の王子様が集まるとの噂ですが……お出になりますか?」
「舞踏会……!? 王子様!?」
こ、これだ!!!!
きっと、そこにイケメンがいるのね!?
「出るわ!!! 出るに決まってる!!!」
きっと、これから出会うのよ。
そうに決まってる!!
だって、王子様よ!?
乙女ゲームの世界に転生したんだから、王子様はイケメンに決まってる!!
そう思って、私はドレスに着替えて馬車に乗り込んだ。
でもね……
やっぱり、どこにもイケメンはいなかったの————
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