第64話 白竜ユノ

 余は、人魔合同高等学園”ミリオン”の2年生に進級した。

 もちろんイリス、フレア、シンカもいっしょだ。

 4人で登校していたところ、見知らぬ少女に声を掛けられたところだ。


「……見つけたのです。黒竜イリス……」


 白い髪に、青い眼をした少女がそう言う。

 なかなか美しく、儚げな印象を受ける。

 しかし、その瞳からは強い意志を感じた。


「貴様は誰だ? なぜイリスのことを知っている?」


 余はそう問いかける。


「……ボクの名前はユノ。あなたと、その妻黒竜イリスに用がある……」


「妻、か。なかなかの事情通のようだな」


 余はイリス、フレア、シンカと深い仲となっている。

 その上、3人共が余の子を身ごもっている。

 しかし、それを広く公表はしていない。

 世の中は概ね平和になったことだし、もうしばらく学園での生活を堪能させてもらうつもりだ。


「それで、ユノさんと言いましたか。何の御用でしょうか?」


 イリスがそう尋ねる。

 この様子だと、彼女もユノとやらを知らなかったようだ。


「……単刀直入に言う。あなたを屈服させて、そっちの男をボクのものにする……」


 ユノがそう言い放った。


「ふむ。それはイリスへの宣戦布告か何かか?」


「……そういうことになるかな。これからボクとイリスは毎日のように戦うんだ。だから先に宣言しておく……」


「クハハ。面白いことを言うではないか。余の大切な妻に戦いを仕掛けるとはな」


 余はそう言って笑う。

 だが、ユノは確かな意思を込めた目でイリスを見ている。

 どうやら、ただの戯言ではないらしい。


「ちなみに、どのような勝負をするおつもりですの?」


 フレアがそう尋ねた。


「……簡単な話。お互いが負けを認めるまで戦えばいい……」


「なるほど……。でも、そんなの認められないよ。だって、イリスさんのお腹の中には……うぷっ!?」


 余はシンカの口を押さえた。

 イリスの妊娠は公表していない。

 まだしばらく平穏な学園生活を送るためにも、知られるわけにはいかない。

 それに、防御魔法や結界魔法も施しているので、外的な衝撃を受けても問題ない。


「クハハ。イリスよ。こやつはこんなことを言っておるが、どうしてやろうか?」


 イリスが望むのなら、余が自ら排除してやってもいい。

 彼女が勝負を受けて立つのであれば、それもいい。

 どのような返答をしてきても、余は受け入れるつもりだ。

 さあ、彼女の答えを聞くとしよう。

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