第5話 アウロス

階段を見てヘルメットを被ったジョニーに続いてダニー、コフレスもヘルメットを被る。

彼もヘルメットをまた被るとHUDシステムの暗視捜索モードを起動する。


「・・・ここ、なんだか臭くないか?」


ダニーが鼻で空気を吸い込む音がした。

消臭システムを切ってるようだ。


「確かに、刺激臭がするな。アンモニアの臭いが強い」


「このヘルメットの消臭はうるさいから嫌いなんだがな・・・」


「私語は慎め」


「・・・了解」


ゆっくりと階段を降りた先はバイクを改造する部屋だったようだ。

机に工具を置く棚。そして青いバイクがあった。

机の横にはアウロスが居た。

赤黒い牙。

単眼のデカイ目。

四本の指と身体中の血管が太く膨らんでおり。そして彼より少し大きいジョニーよりも更に大きいのに子供なのだ。

血は出ておらず。更に不気味な感じになる。

この部屋には更に奥があった。

部屋を隔てているドアの隙間から赤黒い肉が見える。

その黒は血が固まったのに酷似している。


「これは・・・なんでこんな下級民家の地下室に巣が・・・」


「ここ一帯がそうなのかもしれないな・・・よし、もどろ」


ジョニーが言い終わろうとしたその時。

上でドアが蹴り破られた音と同時に銃声となにかが倒れる音が三回。

悲鳴を聞いたダニーが助けに入ろうとするのを手で制したジョニーは曲がり角を見ていた。

そして銃声が鳴り止んだその時。瓶が割れた。


{キュルルルゥ・・・」


可愛らしい音と共に出てきたのは首の断面だった。

胴体よりも大きそうな首の穴から声を発しているようだ。

鳴く時に小刻みに震えている。

ほとんどそこの机の横で倒れているアウロスに酷似しているが。ソイツには尻尾があった。

爬虫類系のだ。

そして、階段から降りてジョニーの横を通り過ぎる。

その後ろにはダニー。コフレス。そして、アウロスが目を向けたのは一階だった。

次はカラカラと何かが落ちたのだ。

今さっきよりも早く一階へと上がり、ペタペタと音が聴こえなくなって数秒後。ジョニーが喋り始めた。


[あれは聴覚が鋭い奴だ。道端のゴミみたいに良く居る]


ヘルメット内のマイクとスピーカーを使っている。


[そっちのは?]


チャンネルに入ったダニーが問う。


[草と言ったら?]


[笑うしかねぇな]


乾いた笑い声がヘルメット内に小さく聴こえる。

コフレスがチャンネルに入った。


[すみません]


[次は気を付けろ]


[はい]


ジョニーはそう言い、警戒を続けながら上へと上がる。

一階は血と隊員のPE装甲の破片が散らばっていた。


[どんな握力してんだよ?]


[違うな。食べたんだ。見てみろ]


ジョニーがそう言うと三人が集まった。


[ここら辺一帯は血で濡れてるが、奴等が出たと思われる方向には血が無い。しかも、これを見てくれ]


ジョニーが一つの破片を広い上げる。

その破片には何かの肉がこびり付いていた。


[この破片は多分。奴等の腹を突き破ったんだろうな]


[つまり二人は丸飲みされたって事ですか?]


[そうだコフレス。しかし、生きてはないだろうな]


ジョニーの視線はHUDの破片に移っていた。

その破片には赤い液体があった。

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