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 小夜達の任務とは、人里へと迷い込んだ妖魔(ようま)達を本来の居場所へと還す事。一昔前まで先人達が山々を切り拓き、人と妖との棲(す)まう場所を確かに分かちた筈ではあったが…。便のよい街へと人々の流れゆく時勢、人の手の行き届かなくなり境界線のあやふやとなった地へはいつしか妖が降りてくるようになっていた──。



「境界線に結界など張れないんですか?」

「然(しか)るべき場所には既に張ってある。張ってありながらのあの様なのさ。流石に全てを覆うような大掛かりなものは、なかなか骨が折れるし。それに、それでは今度は山や森に人が出入りできやしない」

「しなきゃいいのに」

「──爺さま連中が身を粉にして拓いた土地だぞ? それをみすみす妖共にくれてやるのか? 境界に入ってくるような輩は大方、縄張り争いや分家のそれらから外れ、迷い込んできたような連中がその実態だ。ここは俺達が踏ん張らないと」

「もー! 仲よく森の奥で暮らしてたらいいのに!!」

「それなら、話が早いんだがな。妖自体、年々増えてきてるんだろう」

「……、はぁ~…」

 小夜は頬杖をつく。

「おばあちゃん、今年は松茸も舞茸も豊作だって言ってたのに……」

「らしいな」

「柿に、山ぶどう。栗ご飯………」

「食べ物の話ばかりだな」

「─────…、」

 椅子に凭れて茶を啜っていた八代は、項垂れる小夜の様子に呆れた様子でクツクツと笑うと立ち上がり際にその頭をポンと叩いた。

「蕎麦でも食わしてやる。来い」

「うわぁ~ん! 八代さぁ~ん!!」

「行くのか、行かないのか」

「行くー!!」


 八代の背中へ勢いから縋った小夜だったが周りから上がる和やかな笑い声に気付き、一人赤面したのだった。



 

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