第6.5話 イラストレーター2
〈にゃん太〉先生との打ち合わせを終えて家へと帰ると康介からラインが届いた。
〈康介〉
『お疲れさま。〈にゃん太〉先生から新デザインのラフ届いたよ』
先ほど見せてもらったラフをさっそく送ってくれたようだ。
『どうだった?』
『かなり攻めたデザインにしたね。個人的にはアリだと思うけど』
なるほど、康介的にはアリのデザインだったようだ。
『OK 3D的にはどう?』
『問題なしかな、なんなら前より作業工程減ったから物足りないくらい』
『了解』
こうなると後は〈にゃん太〉先生の絵が上がってくるのを待つばかりだ。
『心配なのは〈にゃん太〉先生コミケも出るんでしょ?間に合うかな?』
確かにコミケで新作を販売する予定となっていたはずだがそのあたりのことは確認してなかった。
『確かに。こっちで確認しとくわ』
『了解、お願いするわ』
康介とのラインを終えて〈にゃん太〉先生へメールでコミケについて聞いてみる。するとすぐに返信があった。
〈にゃん太〉
『問題なく納品できそうなので心配無用です。』
おう、ビジネス的には赤点まっしぐらな返信だった。
「マジで嫌われてんな」
好感度が残念なことになってはいるが一応返信はあるので良しとする。
「まぁいいか……」
微妙に悲しい独り言がこぼれた。
〇〇〇
【〈にゃん太〉視点】
打ち合わせを終えて自宅へと帰る。
ペンネーム〈にゃん太〉こと春町 月 (はるまち つき)だ。
帰るといっても打ち合わせをした喫茶店が私の実家だ。基本的に引きこもりであるためこちらから打ち合わせ場所を指定し一階の喫茶店で会い、ここが家ではないですよーというアピールをしながら店を出ていくムーブをし、こっそり家へと帰っている。商業での打ち合わせの際も同様の方法で打ち合わせを行っている。
「ななさん可愛かったなぁ」
初めて会った〈子月なな〉は想像していたよりも垢ぬけていた。地味で根暗で引きこもりがちな自分とは違い社交的で明るい正確な千鶴はとても眩しく見えた。眩しすぎて隣にいた男のことはさっぱり記憶の中から消えていた。
「でも、配信と違ってちょっとギャルっぽかったなぁ」
配信で見る〈子月なな〉と実際に会った千鶴とでイメージが合致しないことに違和感を抱いてしまう。しかし、そんなこともあるか、と考え思考をやめてしまった。
「よし! さっそく作業を始めよう」
コミケ原稿の締め切りもあるのでこの2か月間は大忙しだ。
そのためできる仕事、締め切りの近い仕事から片づけていく。先ずは先ほど打ち合わせをしてきた〈子月なな〉の新衣装デザインだ。
しかし、意気揚々と始めてすぐに和樹からメールが届いて忘れていた顔を思い出し辟易することとなる。
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