第3話
「このクラスには魔女が在籍するため、改めて説明をしますね」
と担任の桃ちゃん先生が説明する。
期待のホープ――みんなのペットだった。
「男の人って、可愛い女性なら誰でもいいの?」
隣からリディアが冷たい視線を送る。ただ愛玩動物を愛でるように視線を送っていただけなのに、これである。リディアはガクの扱いが、他のクラスメート以上に塩対応だった。
「はいはい、そこで痴話喧嘩しないのー」
「「してません」」
二人同時にハモる。そもそも痴話が発生する間柄でもない。
「おー、なかよしー」
「「仲良くありません」」
また二人同時にハモっていた。
「……ま、いいか。青春クソ野郎どもは放っておいて、魔女さん達の試験の説明をあらためてします」
桃ちゃん先生、爽やかに口が悪かった。
「試験は【
と、桃ちゃん先生は一度区切――噛んだ。みんなプルプル、体を震わせて笑いをこらえるのに必死だった。
桃ちゃん先生は何もなかったかのように、説明を続ける。
「魔女と魔宝のエントリーは今週金曜日まで。エントリー申請後の撤回はできないから注意してね。魔女ちゃん達は説明しなくてもよく分かっているけど。
ガクは桃ちゃん先生の説明を聞きながら、チラリと横目でリディアを見る。もうすでに知っていることの事実確認でしかないので、いつものようにつまらなそうに――と、ガクは目をパチクリさせた。
表情筋が死んでいるとさえ思っていた【氷柱の魔女】が俺の方向を見て、微笑んでいる。
(へ?)
いや、笑っている場合じゃないでしょう、と思う。リディアが【
「おっしゃ! 俺達にもチャンスがあるぜ!」
「リディアさんに
「気合いれるぞ!」
「おうぅ!」
盛り上がる男子陣。何回も
白い目で見ている女子陣。ただ、リディアは女子から人気があるので、【
「もうリディアはパートナー申請されているんだけど、君たち……」
「ガク君、なんでそこであいつらを黙らせないかな」
「あいつら無理ゲーなの、いい加減理解したら良いと思うんだよね」
「「「本当にバカばっかり」」」
桃ちゃん先生をはじめ、女性陣に辛辣に酷評されていることに気付いていない男性陣――そしてガクだった。
■■■
「俺の測定をお願いします!」
意気込んだ彼は、リディアが用意した水晶球に触れる。これで12人目である。ガクは変わらない光景を辟易とした想いで見守っていた。魔女が事前にインストールした設定に基づき、判定をする。白い光があがれば魔力ないしその他の数値が合格圏内だが、相性の問題から却下。銀色の光が舞い上がれば、【魔宝】として認定。認定済みであれば金色に輝く。
彼もまた、白い光が上がるのみであった。――つまり不合格。
設定が厳しすぎるんじゃないだろうか、と小さく息をつく。このままでは、リディアは【
とリディアがガクの腕を掴んだ。
「へ?」
そのまま、水晶に手を乗せられた。
ちょっと、何をバカなことを、と思う。ガク自身、魔女と魔法に憧れがないわけじゃなかった。ただ、いかせんガクには魔力値がゼロだ。通常、ニンゲンは大なり小なりの魔力を有する。地球人がを行使できるわけがないが、魔力や属性によって、魔女当人を
と、瞬間、光が爆ぜる。
――え?
ここにいる多くの人が、呟いた。
――すでに、認証済み?
――あいつはホストファミリーを悪用したのか?
――これはリディアさん、終わったな。
――よりによってガクかよ。
――魔石クズが。
有象無象の囁き。魔石……。
ガクは口をパクパクさせる。
申請を撤回することは、もうできない。
リディアの魔女人生は、ガクのせいで失墜して――。
と、リディアがガクの手の上に、その手のひらを重ねる。
リディアの唇の端が冷たくない笑みを浮かべていたのに、ガクは気づき、目を丸くする。
「もう私、待てなかったよ。ガー君」
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