アテナたんと流星から来た物体X

 ある夜の事。東の空にでっかい流れ星が見えた。

 そしてディンデュモン山のてっぺんにでっかい隕石が落ちた。


 次の日、朝陽がのぼると隕石の落ちたところからいきなり蛍光ピンクという目にも痛々しい色をした、逆さにした分度器みたいな髪型のすらっとした男か女かわからない人型の何かが生えてきた。


「なんじゃありゃ……??」


 ワシらが遠巻きにしていている間に生えてきた何かは目を覚ますと、周囲を見回して暴れはじめた。


「うぁ、なんか山崩れてきた」


「なんかティターン族よりやばそう」


 慌てふためくワシらオリュンポスの神々。


「どうすんだよアレ?」


 みながうろたえる中、能天気にへらへら笑っているヤツが一人。


「そんな~、みんなあわてすぎ~。おいしいもの飲めばすぐになかよくなれるよ~」


 そしてへらへら笑いながら、ふらつく足取りで謎の人型の何かに向かっていった。


「あいつ大丈夫か?」


「というか、誰??」


「こないだうまれたあかちゃん!!ちちうえのすねかじってた!!」


 口々に疑問を発する中、自分の知っている話が出てきてうれしかったのだろう。

 アテナがドヤ顔で意味不明な事を言い出した。

 ん?こないだ産まれた赤ちゃん??もしかしてディオニュソスのことか?

 うまれたばかりだと思ったのに、もうあんなにでかくなっているとは。

 お父ちゃんもびっくりじゃよ。


「すね齧ってた??」


「たしかに子供は親の脛をかじるものだが……??」


 中途半端な説明に首をひねるオリュンポスの面々。

 そうこうする間にも、ディオニュソスは謎の人型物体の目の前にたどりついて、ヘラヘラ笑いながら何か話しかけている。

 あ、なんか革袋渡した。人型物体が飲んだ。


 ……いきなり肩組んで歌い出したぞ。何なんだ、あれは??


「あ、ディオニュソスの奴とっておきのワイン持っていきやがった」


「なんかあの変なの顔赤くなったぞ」


「……あ、歌ってたと思ったらいきなり倒れた」


 恐る恐るアテナが飛んで行って、双槍サリッサでそっとつついている。


「すっごくよく寝てます!!」


「よっし、計算通り!!」


 一緒になってひっくり返っていたはずのディオニュソスの奴は、それを聞くやいなや何やらイイ笑顔で立ち上がるといきなりその人型の何かのナニをすっぱりと切り落とした。それはもう潔く。


「「「「え、えぇ~~~~~~っ?」」」」


 一部始終を見ていた神々の困惑の声をよそに、切り落とされたナニはひゅぅう~~~~……っと飛んでいき、サカリヤ川の川岸にぼとりと落ちた。

 まきちらされる生臭さと鉄臭さの混じった何とも言えない臭気。


 するとみるみるうちに、そこから一本のザクロの樹が生えてきたではないか。


 あまりの意味不明な現象に、ワシは何もかも見なかった事にしようと固く心に誓うのであった。

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