尻軽女神と逆恨み
「ああもう……クッソ
すっぽんぽんで、しかもあらぬところが
挙句の果てに、結婚の仲介をした神々の女王ヘラの顔に泥を塗ったと彼女の怒りを買ったのだ。今後ほとぼりが冷めるまでの数世紀は「おしおき」と称して何をされるかわかったものではない。
結局、大海神アポロンの仲裁により、アフロディーテはヘパイストスと離婚することになった。
それは良いのだが、莫大な賠償金を浮気者カップルが支払うことになった。
「冗談じゃないわ。この美の化身があのクッソつまんない不細工と結婚してやっただけでもいくら感謝されても足りないくらいなのに、ちょっと浮気したくらいで賠償金ですって!?むしろあたしが何年も醜男と同居させられた慰謝料をもらってもいいくらいじゃないの!!」
どう考えても自業自得なのに、ヘリオスとヘパイストスを恨み続けるアフロディーテ。実は浮気の件はヘリオスが告げ口したわけではなく、たまたま現場を見てしまったアテナがとんちきな言動に走ったため事実確認にきた本人が現場を見てしまっただけなのだが。
ワシも現場にいたため、うかつにそれを言うとどちらからも恨まれそうな悪寒がするので黙っておくことにする。沈黙は金、多弁は銀。
「とにかくあいつら何とかぎゃふんって言わせなきゃ……絶対におさまらない……」
今時ぎゃふんとか言う奴いるんだ……。
ワシが見ている事にも気付かずぶつぶつ恨み言を零し続けるアフロディーテの姿はかなりコワい。正直、美しさも色気も一切感じられない。
ちなみに知性と品性は元々感じられないので問題ない。
「まずはあのクッソ
あぁ、アポロン相手じゃお前さん程度の美貌じゃ動じないもんな。かといって、ヘパイストス相手じゃ、なまじ毎日槌ふるってて無駄に腕力余っているうえに、天上界の便利な生活の大半がヤツの発明によるものだからシンパも多い。どちらも本気で敵に回すと自分の首を絞めるのがわかっているのだろう。
まだ辛うじて勝ち目がありそうなヘリオスに目を付けたのだろうが……一体何を企んでいるのか。小賢しい馬鹿の思い付きほど面倒なものはない。また厄介なことになりやしないかと背筋が凍る思いをしたワシであった。
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