アテナたんと浮気者
「ややっ。あれはヘパイストスあにうえのおくさんのアフロディーテさまではないですか。なぜアレスあにうえとハグしているのでしょう?」
「そ……それはホラ、弟の妻ともなれば義理の妹、すなわち家族だろう?だから家族としての親愛の情をこめてだな、あいさつを……」
必死に誤魔化すワシ。猛烈に嫌な予感がする。
「あ、ちゅーした。おもいっきりくちにべろちゅーしてます。あれもかぞくのあいさつですか?あてなもあにうえにしなくては。いってきます」
予感的中。真に受けたアテナが自分もアレスに「べろちゅー」しに行こうとした。
「見るなそんなもん!!というか、するな!!」
「なぜですか?かぞくのあいさつならいもうとのあてなもしなければいけないでしょう?」
「お邪魔だから行くな!!馬に蹴られるぞ!!」
いかん。何が何でも止めなければ。ワシが必死になればなるほど、アテナは斜め上の解釈でおかしな方向に暴走していく。しかも全文ひらがなだから読みにくい。
「どこからうまがでてくるのですか?もしや、けんたうろすでもいるのですか??」
「いやそれはただの比喩表現でな。ああいう事をしている連中は邪魔してはいかんという意味だ」
「なぜですか? あ、こんどはいっしょにふくをぬいでます。ふろにでもはいるのでしょうか」
「うわぁぁあああああ見るな!!見るんじゃない!!」
あいつら、今度はナニをいたし始めたぞ。森の中で丸見えだっていうのに。変態か?変態なのか!?
「なぜみてはいけないのですか? あてなもかぞくなのです。いっしょにまざってきます」
「混ざるなぁあああああ!!!!!!」
ワシの絶叫に驚いたのか、アテナは零れ落ちそうに大きな灰色の目をぱちくりと瞬いてこてんと首を傾げた。そのまま黙って何か思案しているらしい。可愛い。
そして、数秒その姿勢で固まったまま、何か思いついたのか、ぽむと手を打った。納得してくれたようで何よりだ。
「なるほど、アレスあにうえのじゃまをしてはいけないなら、ヘパイストスあにうえにしてきます!!アレスあにうえへのごあいさつはそのあとです!!」
「ちょっ……ま、待て……っ!!!」
ワシは慌てて止めようとしたが、一瞬唖然としていたのが災いしてか、鉄砲玉のように飛んでいく(物理)アテナを取り逃がしてしまった。どうしよう。
しばらく思案したが、今から追いかけたところで追いつくわけもない。
よく考えたらワシよりよほど常識神のヘパイストスならば、アテナの斜め上方の誤解もうまく解いてくれることだろう。ここは任せておけば間違いはない!!
……この時、ワシはうっかりアフロディーテが息子の嫁であること、そしてヘパイストスが堅物らしくとんでもなく嫉妬深いことをきれいさっぱり忘れ去っていたのであった。
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