アテナたんと落ちてた林檎
「あ、このあいだのちょうかわいいあかちゃんだ」
今日も今日とて
「いやもう、とっくの昔にむさ苦しいおっさんになっとるだろう」
「あ、りんごふんだ」
どうやら森の中の道を歩いていたヘラクレスが道のど真ん中に落ちていたへしゃげた林檎を踏んだようだ。
「またいで通れば良いのに……阿保だなぁ……」
ヘパイストスが眼帯をしてない方の目をすぅっと細めて呆れたように吐き棄てる。
「ん?あれもしかしてしれんのりんごですか?」
「そうそう。あれは
ヘパイストスが槌をふるってない左手で面倒そうに指さす方を、アテナは
「どんどんおっきくなりますね!!」
「相手にすればするほど、どこまでも大きく膨らむからな」
「へらくれすはむきになってるみたいですね」
「あれじゃキリがないな」
「あてなはちょっとようすをみてきます!!」
ぴゅ~ん……とすっさまじい勢いで下界にすっ飛んで行ったアテナは、瞬く間に巨大化する林檎の前で途方にくれるヘラクレスの眼前へと降り立った。もう森の中の細い道は膨れ上がった林檎でいっぱいにふさがれている。
「へらくれすよ、ほうっておくのです。それはこんなんとそうとう、ほうっておけばそのままですが、いちいちあいてをすればするほど、どこまでもふくれあがってしまつにおえなくなるのです」
だからひらがなで長文しゃべるなって。少しは読者様の読みやすさというものを考えろ。
「最近句読点が付くようになったので、だいぶ読みやすくなったと思いますよ」
ヘパイストスは作業の手を止めぬまま、諦めたかのように嘆息しながら言う。
下界では顎を落とさんばかりに唖然としていたヘラクレスが何かに気付いたらしく、ぽむ、と軽く手を打ち鳴らすと、そのまま森の中に分け入って林檎を迂回していった。
「そうそう、それがただしいのです」
ドヤ顔でふんぞり返るアテナ。それを木陰から覗き見てすさまじい勢いで何かメモをとってる怪しい男がいる。
もしやストーカー……?
一発雷でも落としておくか。
「ああ、あいつは
ほぅ、
「いやもう
ゴツイおっさんのお前がやっても可愛くないからやめろ。
ヘラのところに行ったらうんうん言いながら子供向けの寓話集を読んで知恵熱を出したアレスに出くわして、思わず見なかったふりをしたのはまた後日の話である。
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