エリスたん登場!
「えぃっ、えぃっ、えぃっ」
今日も今日とてアテナは
「アテナたん、今日も快調だねっ♪」
「ぱらすたんがいっしょならあてなはいつだってぜっこうちょうだ!!」
ハイテンションなパラスの声にアテナがやはりハイテンションなひらがなで答えている。一応、知略の女神のはずなのにこれでいいのだろうか?
それにしても、あの
「ヘパイストス、あれなんとかならんのか」
「なりません」
「そこを何とか。お前兄貴だろ」
「それ言ったらアナタ父親でしょう。だいたい槍の素振りぐらいで騒がなくても。
元気で良いじゃないですか」
……コイツには周囲の樹が衝撃波でざんざか倒れているのが目に入らんのだろうか……
「細かいことを気にしたら負けですよ。木々が倒れたぶん開拓が楽になるではありませんか」
……現実逃避しとるだけかよ。
するとそこに小柄な少女がやってきた。
桃色がかったふわふわの金髪に花冠をかぶり、白い清楚な衣装を身にまとった大きな碧い瞳の一見愛らしい娘だ。背中から生えた純白の大きな翼が印象的。
「うげ、エリスじゃないか。いったい何しに来たんじゃ?」
「うわ、本当だ。姉上がわざわざ来たとなるとろくなことにならない悪寒が」
……そこんとこは予感じゃないのか、予感じゃ。
「うふふ。あなたとっても強いのね」
相変わらず槍をぶんぶん振り回しているアテナにエリスが鈴を振るような可愛らしい声で話しかけた。
垂れ気味のサファイアみたいな目を三日月形に細めてにっこり笑い、高く澄んだあどけない声で話すエリスは、小柄で華奢な身体つきや背中に輝く白い羽もあいまって、天使か妖精のように清楚で可憐だ。
……本性を知らなければ……。
「もちろんだっ!!あてなはけだかいいくさのかみ!そんじょそこらのかみやまものにまけるわけにはいかないのだっ!!」
えっへん、とつるぺたんな胸を張るアテナは掛け値なしに可愛い。
シルバーグレーの猫目をキラキラと輝かせ、太陽みたいににぱっと笑う顔は見ているだけで胸が温かくなる。こいつは本性も唐竹割にしたようなざっくりばらんばらんな裏表のない娘だから、いちいち言動の裏を考えて怯える必要がないのがイイ。
「そこは父上、竹を割ったようにさっぱりとした、ざっくばらんな性格ではないでしょうか。確かに何でもざっくりバラバラにしそうですが、そこまで言ってしまっては身も蓋もありません」
……やかましい。底と枠は残るだろうが。
他人の破滅と苦痛を喜び、常に他人を陥れて争わせようとしている誰かさんよりはよっぽどマシだろう。
「あなた、アテナちゃんっていうのね。実はあたしも戦の女神なの。よろしくね」
柔らかく微笑むエリスの姿にワシもヘパイストスも震えが止まらない。
「……嘘こけ……お前は戦じゃなくて不和と争いの神じゃろう……」
「な……何を企んでるんだ……アテナが危ない……」
ワシら二人の危惧をよそに、アテナは嬉しそうに満面の笑みで姉の手をとりぶんぶんと振った。
「もしかしてあなた、最近ゼウスお父様がお産みになったという女の子かしら?」
「ちちうえがうんだわけじゃないぞ。あてながちちうえのあたまのなかでそだってしまって、ちちうえのあたまがわれそうにいたくなったのであにうえがおのでかちわってくれてでてきたのだ!!」
「う~ん、ちょっと意味がわからないかな?」
怒涛のひらがなに困り顔で首を傾げるエリス。こうして見ていると、ただの穏やかで優しそうなお姉ちゃんキャラの少女にしか見えないのが恐ろしい。
「とにかく、そういう事ならあなたはあたしの妹だわ。あたしはエリス。ゼウスお父様とヘラお母様の間に最初に産まれた双子のうちの妹よ。同じ戦の神でもあるし、仲良くしましょ」
「もちろんなのだ!!よろしくあねうえっ!!」
満面の笑顔で姉の手を両手で握りしめ、飛び回りながら心底嬉しそうにぶんぶんと振るアテナ。
エリスのやつ、一体ナニを企んでいるんじゃろう……ヘパイストスの台詞じゃないが、さっきから悪寒が止まらないのはタチの悪い風邪をひいたわけではないのだと思う。
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※リクエストがあったのでエリスたんの登場です♪
ギリシアきっての嫌われ女神らしく、思いっきり悪役っぽくしてみました(笑)
神話とはだいぶ印象が違いますが気にしない方向でw
アテナたんがどんどん脳筋美幼女になってきていますが、これでも気高く清廉な知略と栄誉の神……のはずです(多分)
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