アテナたん大きくなる

「あにうえ、あにうえ、むねがくるしいのです!!」


 アテナが鍛冶師の兄ヘパイストスの仕事場にすっ飛んできた(物理)


「どうした?何があった?」


 仕事場に篭っている時は女房のアフロディーテに対しても徹底した塩対応のヘパイストスが、珍しく槌を揮う手を止めてアテナの方に向き直る。


「なんかあちこちくるしいのです。みちみちとしめあげられてるようなかんじで。とくにむね」


 そう言えば、ワシの頭から飛び出てきた時には掌サイズだったアテナも、もう蹴球エピスクロスくらいの大きさになった。随分とよく育ったものだ。更に見ると完璧なまでの大平原を誇っていた胸がほんのちょっぴり盛り上がっている。


「ああ、アテナもだいぶ大きくなったからね。そろそろ防具がきつくなってきたんだろう。修理してあげるから外しておくれ」


 テキパキと採寸して、防具のベースはそのままにパーツを足したり引き伸ばしたりして今のアテナのサイズに合わせていく。


「胸当てに篭手にブーツに……おや?兜はそのままでいいの?」


「かぶとはだいじょうぶ!あたまにぴったりふぃっとちゃんなのだ!!」


「どれどれ……うわこれ装着者の成長に合わせて自動的にサイズが変わるように魔法がかかってる!?変形に必要なエネルギーと素材はどうしてるんだ!?……ふむふむ……」


 兜には何やらすごい魔法がほどこされていたらしい。なんせアレはメティスがワシの体内で、ワシの頭蓋骨削って作ったお手製の品だからなぁ……どんな機能があっても不思議じゃないぞ。


「なんと!?こんな術式があったとは……さすがメティス様、すばらしい知恵と技術です!!ここでこうして必要なマナを周囲の大気や生物から取り込んで……なるほど、これで物質に転換するのか……」


 何やら感極まっているようだが何を言っとるのかさっぱりわからん。

 だから技術系オタクは……と思うが、今のオリュンポスの便利で快適な生活はコイツの発明による部分が大きいので気にしないことにする。

 うむ、ワシって大人じゃのう。


「そんなこと言ってないでメティス様に会わせて下さいよ!!ぜひとも師匠と呼ばせていただきたく!!」


 んなこと言っても、もう消化しちゃったから無理。


「ちっ……使えない親父だ……(ボソッ)」


 ぉぃ、何か言ったか……?


「……よしっ、できたぞ!!これで鎧も槍も、みんなアテナの成長に合わせて勝手にぴったりサイズに変化するぞ!!ついでに気分に合わせて色や柄も変えられるオプションつき!!更に夜にはヘッドライトで光る反射板で安心安全!!」


「からだにぴったりふぃっとちゃんなのだっ!!」


 ……ヘッドライトって何じゃ??というか気分で色柄変える機能って本当に要るのか?


「女の子なんだから、その日の気分に合わせてお洒落しないと」


 ……それ、装備ごと着替えちゃいかんの?


「あてなのそうびはははうえとあにうえのあいじょうたっぷりてづくりなのだ!ほかのものなんてきるきになれないのだっ!!」


「うう、良い子に育ってくれてお兄ちゃんは嬉しいよ……」


 ……仲良きことは美しきかな……??何はともあれ無事すくすく育ってくれているようで何よりだ。……という事にしておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る