第3話 証拠と真実。
暴走タクシーにより、俺達は二人の乗るタクシーを見逃さずに済んだ。
タクシーを降りる際、俺達は一刻も早く地面を踏みしめたい気分だった。
タクシー運転手に多めに料金を渡し釣りは取っておけと言ってやった。
上機嫌なタクシー運転手は呑気にも「それでは、お仕事頑張ってください。」と一言を残し軽快にタクシーで去って行った。
タクシー運転手は追跡が成功した事により代金に色を付けたのだろうと思ったのだろう。
だが現実は釣りと領収書を受け取る余裕すらない程、俺達は疲弊していた・・・。
「まったく・・・ひどい目に合った・・・。」
街灯下でわかる程顔色が良くない。
完全な車酔いの様である。
だが今は
そうこうしている内、
「俺は後を追うから
「言っておくが、今の状態の
俺は
そして俺は尾行を再開した。
俺は距離を取り
後を付けるとはいってもほんのわずかな距離ではあったが・・・。
俺はそのビルと周辺を見渡した。
そのビルは流行りのタワーマンションであり、周辺にも似た様な構造のタワーマンションが数棟立ち並んでいた。
この様なマンションはセキュリティーも売りの為、易々とは部外者は侵入できない。
オートロック解除の方法もある事はあるが番号を知らない。
当てずっぼで入力するのも手だが、どうやらこのマンションには管理人が常駐している様だ。
オートロック解除に挑戦している際、防犯カメラでその様子が見つかれば、即警察の御厄介になる事だろう。
この様な状況から俺は尾行を諦めビルから少し距離を取りビルの角を正面にしてビル全体を視界に入れる様に監視を始めた。
こうすればビルの二面を確認できる。
そして部屋の明かりが点灯するのを確認出来たら
もっとも多くの部屋が存在するタワーマンションでは明かりが点灯するのを見落とす可能性は大いにあるし、俺が今見ている裏側二面が
結局俺は十分ほどマンションを眺めていたが部屋の明かりの変化に気付くことは出来なかった。
反対の二面のどちらかが正解だったか・・・。
中に入ってポスト室で名前を確認して部屋を探す事も考えたが、名前を書いていない可能性もある。
仕方ない・・・やりたくはなかったが・・・。
俺は移動し、先程確認できなかったビルの二面の内の一つの面を正面にカメラを構えた。
ズームをして部屋の一つ一つを覗き込む・・・。
俺の行為は俺自身に対して様々な悪意を感じる事になっていた。
ローンの支払い・・・。
子供の教育・・・。
離婚の問題・・・。
近しい間柄なら助けにはならないが話ぐらいは聞いてやっても良いと言った様々な家庭の問題が俺の一身に襲い掛かる。
正直気分が悪かった・・・。
進学の悩み・・・。
不倫問題・・・。
家族への嘘・・・。
一つ一つは良くある問題だろう・・・だがこれ程多くの悪意を連続で感じ続けるのは俺の精神が持たない気がしていた・・・。
正直・・・もう無理だ・・・。
頭がおかしくなってしまいそうだ・・・。
この一面を調べたら諦めてしまおう・・・。
そう思っていると残りは最上階の部屋のみとなった。
残り数部屋・・・これで諦める・・・。
そう思っていた矢先、
俺はシャッターを切りその部屋を撮影した。
最上階の角部屋・・・間違いない・・・
俺は隣のタワーマンションに行き中に入ろうと試みたがオートロックにより阻まれてしまった。
周囲を見渡すと管理会社名を見つける事が出来た。
『産政不動産レジデンシャル株式会社』
俺が以前勤務していた新聞社の子会社だった。
社に勤務していれば社を通じて取材や撮影などと言い訳をして入館許可が取れたかもしれない。
だが今の俺は退社しており関係性は皆無となっていた。
ここまで能力を使い精神的にも疲れ果てていた。
そして結果がこのザマだ・・・。
俺はこの事を伝える為、
俺が戻ってくると
先程までは弱り果てていた
「ただいま。」
「・・・あっ、ごめん・・・。」
「調子はどうだい?」
「だいぶ良くなった・・・。」
先程まで立っているのも辛そうだったが、今は腕を組みガードレールに持たれかかっている。
「旦那の部屋は解ったぞ。」
だが疑いの表情にも見える。
「どうやって特定できたのよ、建物内には入れてないでしょ?」
当然の疑問である。
「うん・・・ビルをずっと見ていた。」
「暗かった部屋の明かりが灯った部屋が
「ああ、とにかくビルをずっと見ていた。」
「そして確信できた。」
「まあ・・・
「社に居た時も
俺の能力は俺以外誰も知らない。
そして話す事は今後も絶対にない。
能力で悪意を感じたとも話していないし、「ビルをずっとみていた」と嘘もついていない。
「隣のビルから部屋を撮影したいと考えているんだが、問題があるんだ。」
「オートロックでは入れなくて、管理人が常駐しているって事でしょ?」
「あのビルの管理会社が『産政不動産レジデンシャル』だった・・・。」
「あたしらが退社して居なかったら、何らか対処できたわね・・・。」
「ならさ、今でも社に居る、
俺は首を横に振った。
「
その言葉を聞いた
「だよねーっ、
まったく
「確かに社には知り合いいるから、
「
かなり嬉しそうな表情だ・・・。
「あっ、いい手が思いついた・・・。」
俺はふと協力してくれそうな人物が思い浮かんだ。
「なに、誰?」
「いや、俺に任せてくれないか?」
「明日にでも話をしてみる。」
ポートレイトが撮影せない。 杉田浩治 @cameo111
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ポートレイトが撮影せない。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます