第2話 調査と尾行。
道路をはさんだビル内の店舗に一人の男が居た。
男は待ち合わせをしている様であった。
俺は真向いのビルの非常階段の踊り場でファインダー越しに男の行動を監視している。
望遠レンズを介したファインダー越しに、俺はその男の悪意を嫌という程感じていた。
なるほどな・・・奴は自己中心的な思考しか持ち合わせていない様だ・・・。
普段なら人の悪意を感じる行動などまっぴらごめんだ。
少々気分は悪いが、
男は
今俺達は
ふと、
一瞬、尾行に気付かれたかと不安になったが杞憂の様だった。
若い女性である。
二人は席に腰かけていた。
俺は二人の悪意の集中砲火を受けている状況だった。
まったく、気分が悪い・・・。
その時、俺のスマホに着信があった。
イヤホンマイクで相手も確かめず着信を受ける。
タイミング的にも相手は解りきっているからだ。
「ねえ、見てる!? 絶対あの女が浮気相手よ!」
スマホ越しに
「まあ、まだ確定している訳では無い、それより行動は慎重にな・・・。」
「ええ、解ってるわ。」
俺は
俺の能力はカメラのファインダーを覗きこんでいる時のみ使える中途半端な物である。
見ず知らずの人間に撮影されるなど相手からは不審がられるだけである。
なるべく目立たない様に、
互いに顔を知っている
俺は
無論、先程尾行に気付かれたのかといった心配は、
尾行している二人が行動を起こした。
席を立ち上がり店から出ようとしている。
男の手には店の伝票が握られていた為だ。
「
「ええ、こちらでも確認しているわ。」
「頼んだぞ、俺の所からは既に二人の姿は見えないからな。」
俺は今いる場所から移動をする事にした。
「まかせて・・・あっ二人が移動しているわ・・・。」
「ビルから出るようね・・・。」
「場所はさっきいた店の真下の入り口ね・・・。」
「わかった。二人の顔も覚えたし移動の間は俺が近くで尾行するよ。」
「
それにずっと近くで尾行していた
俺は移動する二人の後ろ側から二人を尾行していた。
二人がビルから出た際、道路向こうのビルから出たばかりだったが、歩行者信号が青になった為タイミングよく合流できたのだ。
「ちゃんと尾行してる? 見失ってない?」
イヤホンマイク越しに
「大丈夫だ、ちゃんと後を付けているよ。」
二人の行動を認識できていないのがその証拠だ。
「ねぇ・・・あの二人、完全にクロよね?」
社にいた時、容疑者を撮影した際、何度もされた質問内容である。
「ああっ・・・クロもクロ、真っ黒だ。」
俺は二人から感じられた悪意から既にそう確信していた。
二人の関係は俺達の想像通り。
旦那の方は
女の方はもっとタチが悪かった。
大手商社マンである
無論金銭目的であり
だが、会社役員が絡む
その調査結果は、女の期待通りの結果となっていたのである。
その真実が全く異なる物でもかまわないといった思考の持ち主だった。
「貴方がそう言うなら、間違いないわねっ!」
イヤホンマイク越しの
実際は勘などでは無く、俺は相手の悪意を読み取れる為、それは真実なのであるが・・・。
二人の後ろを尾行していたのだが、二人の行動に変化があった。
立ち止り歩いていた歩道から車道側を気にし始めていた。
「まずい!
現在の時刻は19時過ぎである、それ程渋滞はしていないと思われる。
車両で移動されたら見失ってしまう・・・。
「ええっ!? 困ったわね・・・。」
二人の内、
「まずい! 二人がタクシーを拾ってしまった。」
「俺もタクシー捕まえなくては・・・。」
二人はやって来たタクシーに乗り込んでしまった。
俺も二人を追う為即車道を確認し手を開けたところ、すぐに別のタクシーが来た。
しめた! 運がいい。
だがタクシーの表示板は『賃送』となっていた。
くそっ!
『賃送』と表示のあるタクシーが俺の前で止まりドアが開いた。
「乗って
俺に声をかけたのは
俺はすぐさまタクシーに乗り込んだ。
「
「
「助かったよ・・・。」
安堵する俺は、バックミラー越しにタクシー運転手の視線を感じた。
フロントガラスに写りこんだタクシー運転手の姿を確認したところ不審そうな目で俺を見ている。
カメラマンベストを着ていて、そのポケットにはカメラのレンズが多数収納されている。
手には街中で使用するには似つかわしくない大型のプロ用カメラを抱えている。
不審がられても仕方ないのかもしれない。
「運転手さん、前のタクシーを追いかけて!」
それを聞いた運転手の表情は硬くなっていた。
「お客さん、報道関係者が探偵でしょ?」
突然の質問に俺はなんて答えていいか解らなかった。
「ええ、そんなところよ。」
「でしょうね、そちらのお客さんの姿、どう見てもカメラマンぽいですからね。」
「私も長年タクシードライバーしているけどこんなシチュエーションは初めてなんですよ・・・。」
迷惑がられているのだろうか?
だが、二人の乗ったタクシーを追いかけてもらわなくては俺達も困ってしまう・・・。
「迷惑・・・ですか?」
「いや・・・とんでもない!」
タクシー運転手は笑顔になった。
「ドラマとかでみたタクシーのこういったシチュエーション憧れてたんですよ!」
「絶対に見失いませんから、しっかりつかまっててください!」
俺達の乗ったタクシーは二人の乗ったタクシーを追跡し始めた。
その運転は荒々しいものだった・・・。
二人の乗ったタクシーが交差点に差し掛かったところで信号が変わり始めたら急加速、別の車が割り込みをしようとしたら強引に割り込ませず、急加速、急停止の繰り返しだった。
「
「ああ・・・俺もだ・・・。」
「お客さん! 絶対に前のタクシー見逃しませんから、しっかりつかまっててくださいね!」
タクシー運転手の暴走に俺達はすっかり参ってしまっていた。
だが二人の乗ったタクシーを確実に追跡出来ていた様だった。
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