第4話 世に出せないスクープ。
俺と
重要なスクープを手に入れたとだけ伝えていた。
無論その内容は伏せている。
昨日から一睡もしていない俺達だったが、
そう思ってはいたのだが、
写真を撮影したカメラマンとして同行するのは当然だと言っていた。
この記事の権利は
俺は
おれも今まで生きて来た中であれ程の、命の危険を感じた事は無い。
そう、戦場カメラマンとして戦場に向かった時ですらあれ程の危機を感じた事は無かった。
俺は
俺の部屋から地下鉄にて編集部まで移動する事にしたのだが、
駅まで向かう最中も周囲を警戒しており見るからに緊張感を感じられる。
地下鉄の駅に降りる際、躊躇っている様なそぶりを見せていた。
「どうした
「あんたね・・・今回の件《スクープ》の重要性を考えてよ・・・。」
そう小声で話す
「ん? どういうことだ!?」
「今回の
「既に調べは付いていて、ひょっとするとあたし達は狙われているかもよ?」
口封じの為狙われると言った事も実例がある。
今俺達が持って居るスクープも確かにかなりヤバい代物だ。
公開されたくない情報をもった人物が居るとなれば、その人物を亡きものにすればいい。
単純明快だが死人に口なしだ。
相手からすればそれに失敗すれば買収交渉すればいい。
交渉に乗らなければまた狙えばいい。
俺は小声で
「地下鉄で移動の際、一番危険なのはどんな状況か知っているか?」
「ホームに電車が入線してくる時ね。」
ホームに列車が入る際、ホームから付き飛ばせば、ほぼ確実に相手を葬ることが出来る。
人目のある都会で人気のない場所で殺害するのは難しいものがある。
相手の殺害目的ならホームから突き落とすのが確実だろう。
「ならそんな時はホームではどうするか知っているか?」
「そんなのあたしも知ってるわよ・・・。」
「なら大丈夫だな。」
俺達は警戒しながら地下鉄のホームに向かった。
ホームで俺達はホームの壁に背を当て横に並んでいた。
ホームから突き飛ばされないには背中を晒さない事が重要な為である。
この状態で強引にホームへ突き落そうとすると周囲の目もある為、なかなか実施は難しい。
記者時代にとあるジャーナリストから教わった方法であった。
列車が到着し、反対ホームの列車も停車中であった為社内に乗り込み、俺達は移動を再開した。
降車の際も同様の事を繰り返し、時間はまだ早かったが
約束した時間より30分以上の早い到着だったが俺達は受付を行い
もし本当に狙われているのなら編集部に居る事の方が安全だと判断した為である。
20分ほど経った頃、受付より呼び出され直接編集部へ向かう様に指示を受けた。
俺達はエレベータに乗り込む。
「バカにされるかもしれないけど・・・ものすごく緊張したわ・・・。」
強気な
「まあ、モノがモノだからな・・・。」
「でもあんたは全然動揺してなかったわよね?」
「ああ、正直この
呆れ顔で俺を見上げる
そして吹き出した様に笑い出した。
「呆れた・・・単なるバカか、よっぽどの鈍感よね。」
「おい、例えがどちらとも悪い意味なんだが?」
「どういう事?」
「普通はその流れだと、どちらかは良い意味を使うはずじゃないのか?」
「単なるバカか、ものすごい度胸とか?」
「そうだ、それなのになんで両方悪い意味を使う?」
「さあどうなんだろ?」
俺と
部下からの人望も厚く好感を持てる印象はあった。
俺が社を辞めた後にデスクにとなり、定年前に早期退職しグループ企業の雑誌の編集長をしている。
俺達はパーテーションに囲まれたブースにて
俺達が出された茶の湯気を眺めていると、ブース内に
「お久しぶりです
中田は俺達に笑顔を見せていた。
少し老けては居たが、相変わらず印象だけは良い。
「久しぶりだな! 君達がまた組んでるとはな・・・。」
「こうしてみると、昔を思い出して懐かしいな・・・。」
かつて
思い出話しを続ければ、話しはそれだけで盛り上がるだろう。
だが
今持って居る
「
「ああっ、そうだったね・・・早速見せてもらおうか。」
だがそんな喜びも、俺の撮影した写真を見た途端一気に吹き飛んだ様だ。
「これは・・・。」
ジャーナリストの血が騒ぐのか平生を装ってはいるが興奮を隠しきれないでいる。
何度も記事と写真を見返していた。
俺も
飽きる程ノートPCのモニターに食い入っていた
「驚いたよ・・・これ程の物だったとは・・・。」
「結論から言おう、この
「やったわ!」
元上司とはいえ今は業務的に関係のない
そんな俺達の姿を見て
俺が新聞社に勤めていた頃の年収の半分以上の額だった。
契約書を前に
「解っていると思うがこの
フリーの記者の売り込んだ記事は大体がこの扱いとなる。
買い取った記事をライバルである他者に同様に持ち込まれたらその価値は下がってしまう。
その為契約書を作成しそれを防止しているのだ。
「解っていますよ、でも思った以上の金額で驚いていますよ。」
「これで、この
自分の書いた記事が高額で買い取られ、それが世に出る・・・。
そう考えただけでジャーナリストとしての血が騒ぐようである。
「
「あたしこの記事が掲載された雑誌とか全部買って記念にしようかなと・・・。」
その質問に
「そうですよね、元部下とはいえ社外の人間に話せませんよね? でも掲載する媒体が決まったらあたしに連絡してほしいんですよね・・・。」
その言葉を聞いた
「残念だけど、この記事は掲載できない・・・。」
「えっ!?」
「
俺は珍しく
温厚で部下からの信頼も厚く部下想いの
やはりその態度はパフォーマンスに過ぎなかったのだろうか?
俺がファインダーで覗き込めば
「この事はけっして口外しないでくれ・・・。」
そして
「正直言おう、君達は狙われている。」
「それも命をな・・・。」
ある程度覚悟はしていたが、他人からそう聞かされると自分達の状況が改めて悪い事に気付かされる。
「詳しくは言えないが、君達が来る前とある所から、私あてに連絡があってね・・・。」
「君達の記事を掲載しない様にと脅しをかけられていたんだよ。」
俺達が訪れる予定のこの編集部まで調べがついていたというのか?
完全に相手の方が一枚上手の様だ。
「普通ならそんな脅しに私は屈したりしない。」
「君にもわかるだろ? ジャーナリストの端くれとしては・・・。」
そんな事俺には全く理解できない。
俺はジャーナリストではない、単なる写真が好きなカメラマンに過ぎない。
だが話の腰を折ると、真相が聞けないかもしれない。
俺は沈黙して話の続きを待っていた。
「私も記者の端くれだからね、相手に探りを入れたんだよ。」
「そこで君達の名前が出てね、君達が狙われているのが想像できたよ・・・。」
「元とはいえ、かつての部下が狙われている・・・そこで私は彼らに交渉を持ちかけた・・・。」
交渉? 電話の先に居る奴らとどの様な交渉をするというのだろうか?
「気分を害さないで聞いてほしい・・・。」
「彼らは金銭だけが目的のパパラッチと同類だと話した。」
「もし彼らの存在を消す事を考えているのなら買収すればと提案したんだ。」
「彼らはすぐにそれに乗ってきた。」
「買収額を聞かれ、記事が漏れない保証を問われたよ。」
話しは大体読めて来た。
「金額は膨大すぎずある程度の額を提示した、今回契約した金額だ。」
「そして契約書を交わして記事と写真の権利を放棄させると質問に対して返した。」
「金額は指定された口座にすぐに振り込まれていたよ・・・。」
かつての俺の年収の半分以上の額が即振り込まれるとは・・・。
やはり国家が絡む案件はスケールが違う・・・。
「奴らは買収は普通に行われている文化だからね・・・。」
「金を受け取れば信用を買える。」
部下を庇いすぎる傾向にあったとされる
その人格は新聞社に居た時から何ら変わっていない様だった。
だが・・・
「
「しかし・・・しかしですよ、
「
「契約書で記事を出せなくして買収といった形を取った事は・・・。」
「
「生きていればまたチャンスはある・・・。」
「君なら理解してくれると思ったんだがね・・・。」
例えこの編集部で記事を抑えられなくても、他社でも同じ結果となっていただろう。
利益を無視して個人で記事を拡散するにも相手が相手だけに失敗のリスクが大きい。
だが生気のなくなった
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