第3話 彼女の結婚観。
最近では家事は夫と妻が分担して行う事も珍しくない風潮であり、それを考えると
そうなると付き合ってきた年月を考えると、俺も
覚悟というのは少々誇張すぎたかもしれない。
だが、そういった望みがあるのにも関わらず、人の心理は複雑な物である。
望みがあるにも関わらず、それを否定してしまう心境が俺の中には存在して居た。
今になって思えば、何故そんな事に思い悩み、こだわっていたのか非常にバカバカしい。
男の立場が傷ついたとその時の俺は思い込んでいた。
そして、
当時の俺は、何故か凝り固まった思考をしており、その思考によって人生における最大の過ちを犯す行為をしてしまっていたのだ。
俺の思考がおかしくなった原因は、
入社してわずか五年足らずの
正直、俺の給料は一般のサラリーマンから比べたら恵まれている給与をもらっていた。
結婚して妻を専業主婦にして子供が生まれたとしても、扶養手当等をもらえば満足に生活できるくらい十分な額をもらっていたのだ。
だが・・・。
一緒に住んでいる部屋の家事全般を引き受けてくれている
家事など何もしない俺は、
何て滑稽なんだ・・・。
一般的なサラリーマンより恵まれた給与をもらい、家計的に家族を支えられる自信があった。
だが俺が望んでいた家族とすべき対象は、俺以上の収入を得ており尚且つ身の回りの世話も全て引き受けそれを完璧にこなしてくれていた。
家計的にも家庭内の事についても
俺より
そんな
俺より収入の多い
当時の俺は思考が硬直していた。
家計は男が支え、家事は女がするものと・・・。
今に思えば本当に馬鹿馬鹿しい考え方であった。
夫婦が共働きで、妻が夫より収入が高くとも良いではないか?
妻が家計を支え、夫が家庭を支えても良いではないか?
俺は一応
そして収入もそれなりにある。
好きな事を職業としていったいどれだけの人間が満足な収入を得られるのか?
殆どの人間は生活の為に業種については妥協し我慢し不満はある物の自分や家族の為にそれらを飲み込み様々な物を耐え抜いて生きていると思う。
俺とは違い好きな事を職業とはしている訳は無かった。
生活の為、努力し頑張ってきた・・・。
そしてその頑張りが、報酬面で評価され、俺より高い給与を持ち帰る結果となっている。
つまり
そういった
そう、現状を変えようとする気概を持つことも無く何の努力もしないまま・・・。
むしろ俺の勝手な思い込みに過ぎない。
もっとも、その不信感は無意識に態度として表れていたかもしれないが・・・。
休日の日、俺は一人で特に何もすることも無く過ごしていた。
いつもなら一緒に過ごす
社では仕事のパートナーとする
普段一緒に行動している俺に花嫁衣裳を見られるのが恥ずかしいとの事だった。
女の人生で一番女が輝く瞬間を見られるのが恥ずかしいという訳だ。
全く持って理解できない思考ではあったが、俺は
整った姿をしている
それくらい二人は似ている姉妹だった。
「・・・
「ごめんなさい、起こしちゃったわね・・・。」
「いや・・・構わないよ・・・。」
「それよりどうだった?」
俺は
「
「羨ましかったかい?」
「それはね・・・私も一応女だからね・・・。」
そして、その相手は俺だという事も・・・。
「
「
俺は
だが、彼女は俺の期待している答えとは違う回答をしていた。
「それは嬉しい褒め言葉だけど、私にはまだ早いかな?」
「今は仕事も頑張りたいしね・・・。」
まだ早い?
仕事も頑張りたい?
とっくに結婚適齢期を迎えているし、結婚願望だってある様に見える。
なのにどうしてそれを望まない?
俺が複雑な表情をしていたのか、
「私にだって結婚願望はあるし、子供は早い内に欲しいけど無理に順序をたどる必要は無いと思うの・・・。」
思わず首をかしげてしまった俺に対して、
理解できないといった俺の表情をみて
「うーん・・・例えば・・・結婚が先か子供が先かって事かな・・・。」
「つまり
所謂デキ婚って奴か・・・それが悪いとは思わないが、結婚から妊娠といった流れの方が一般的には好ましく思われるだろう。
「うーん・・・ちょっと違うかな・・・。」
「子供が先に出来て急いで結婚するとかではないの。」
「私にとっては結婚は特別な物だからね、そんな理由で急ぐべきものではないと思うの。」
俺には全く理解できない思考であり、
「子供出来ちゃうでしょ、そして出産、当然子育てするわよね?」
「ああ、当たり前だな・・・。」
「別にその間に結婚は無理にしなくても良いと思うの。」
結婚はしたくないけど子供は欲しいといった理由なら理解できる思考だが、
ますます理解できなくなる・・・。
俺のその表情を見て、また静かに笑い始めた。
「私は子供が出来たから結婚という縛りにこだわらないって事よ。」
「子供が出来てお腹大きくなってドレス着るのは私は嫌だしね。」
「ならいっそ子供産んで子育てして、ある程度落ち付いてから結婚でもいいって事。」
まあ理解は出来た・・・だがあまり社会的に褒められた事ではない様な気がする。
「それに素敵じゃない!?」
「何が?」
「ベールガールって知ってる?」
「ああ。」
ベールガール、ベールボーイ、結婚式で花嫁入場の際、花嫁の長いウエディングベールを持ち上げて一緒に入場する幼い子供の事である。
「普通は親戚の子供とかにお願いするのだけど、それを自分の子供にしてもらうってのも素敵じゃない!?」
俺は思わず吹き出していた。
「確かに、我が子にベール持たせるなんてあまりないよな・・・。」
「それはそれで面白いな。」
「でしょ? だから私は無理に結婚を急ぐ必要は無いと思うのよ。」
「私にとっては結婚は特別なんだから・・・。」
「なら、真里香にとってベールを持たせる子供は俺の子でもいいのか?」
「私は
結婚してほしいと言った訳では無い。
だが、後になって考えてみると、話の流れからこれは
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