第3話 進まない関係と最高の写真。
俺と
同居を始めても
俺は
俺とこの部屋に住むという事は姉の
まあこの辺りの身辺整理は俺が口を出す筋合いはないし、
人間不信だった俺には縁のない生活そう思っていたのだが、同居を始めると以前の考えが間違っていた事に気付かされていた。
最近では夫婦でも共働きが多いせいか、家事を夫と妻とで分担する事もあると聞く。
俺も
「
一人で暮らしていた頃は、食事は外食だったが、部屋の掃除、洗濯など当然俺も行っていた。
言っておくが、俺は家事をさせる為に
だが、それが当たり前になってしまうと、今度は暇を持て余してしまった。
正確にはやる事はある。
だが
だが
俺はその時間は、俺にとっての生活の糧である、カメラ、レンズなどの整備をする時間に当てていた。
そして、趣味で撮っていた風景写真の整理なども行えていた。
改めて撮り溜めた写真を見ると膨大な量だった。
仕事でも写真を撮り、趣味でも写真を撮る。
俺は本当に写真に憑りつかれているのだと、再確認できた。
膨大な写真を整理していると、家事を終えた
「お待たせ、あら写真を整理していたのね。」
「うあ、これ綺麗な写真ね・・・。」
周りは街路樹が移っており首都高と一般道に光の筋が通り、街灯が明るく照らされた写真だった。
「これどこで撮ったの?」
「ん?・・・ああ、これは前の俺の借りてた部屋の自転車置き場の脇だな。」
「え?」
「失礼だけど、
「まあ、これは狙って撮った訳では無いのだけど、光を絞って、シャッターを開放したらこんな写真になった。」
「うん、私はカメラの事は解らないけど、撮り方次第で見慣れている風景も、こんなに素敵な写真になるってのは理解できた。」
うん、やはり理解できていない。
だけど、知ったかぶりをすることも無く、俺の言いたかった本質は捉えてくれた様だ。
「俺も一様プロだから出来上がった写真のイメージはある程度は想像できる。」
「だけど、この写真の様にイメージ以上の物を撮れることもあるし、またその逆もあるんだ。」
「そうなんだ、プロでもそうなのね。」
「
「ああ、これはプライベートで撮った写真だからね。」
「実は俺、人物写真が嫌いなんだ。」
「ふーん、そうなんだ・・・。」
「でも、
俺が人物写真を嫌いな事を話したが、普通ならここでどうしてそれが嫌いなのかと聞いてくるだろう。
だが、
俺が理由を話せばそれを聞いてくれる。
だから、
「ねえ、一つ聞いても良い?」
「ん? 何?」
「
「気に入っている写真か・・・。」
俺は立ち上がり、部屋の隅に移動した。
「
「ええ前、
意外な場所からの風景写真だった事の思い出し笑いだろう。
「俺は一応プロだから、出来上がる写真はある程度イメージで出来る事も。」
「言ってわね。」
「だけど、偶然に想像以上の最高の写真を撮れることがある。」
俺は額に入れたA3サイズ(297mm×420mm)に引き伸ばされた写真を
「これって・・・私!?」
「そう・・・夕暮れ時、日比谷公園で偶然再会した時、思わず撮影してしまった写真。」
「あの時は思わずシャッターを切ってしまっていた。」
俺が
「これが俺が撮った最高の写真だよ。」
「綺麗・・・まるで私じゃないみたい。」
「紛れもなく、君自身だよ。」
「本当の私はこんなに綺麗じゃない・・・これは
「俺は前に言ったよね? 「プロカメラマンの俺が撮影せずにいられなかった」と君は撮影せずにいられなかった魅力的な被写体だったんだよ?」
「俺はこうも言ったよね?「写真に写った人物は切り取られた時間の真実の姿」と・・・つまりこれは、
「だって、私がこんなに綺麗なら
「
やはり
場の雰囲気から、
「本当にそう思ってくれる?」
「今更何を言っているんだい? 俺は
「
そして彼女から質問をされた。
「
上目づかいで俺の意見を待っている
「んー。俺は
「
「今のままが良いって言ってくれてるって事?」
「正直、
「ううん、私は今の方がいい・・・。」
「だって私、お化粧めんどくさいから嫌いなの・・・。」
俺は
何か深い理由があると思い込んでいた俺だったが、その理由がこんな単純な理由だったなんて。
「もう、
「いや、ごめんごめん・・・化粧しないのって深刻な理由があるのかと思っていたら、そんな理由だなんて・・・。」
「目立ちたくないってのは本当だよ・・・だけど化粧するのって実は私はあまり好きではないの・・・。」
「意外だね、料理や掃除、洗濯をあんなに手間をかけてやってる、
「だって、それは好きな事だから・・・、でもお化粧は嫌い・・・。」
「でも化粧しないといけない機会ってあるよね、そんな時はどうするの?」
「そんな機会ってあったっけ?」
徹底している・・・
「あるでしょ・・・結婚する時とか新婦が化粧しない訳には行かないでしょ!」
「あ・・・。」
少女の夢である可愛いお嫁さん・・・
「・・・その時は我慢して、化粧する・・・。」
「大丈夫だよ、その時はメイクはプロがしてくれるし・・・。」
「しかし、メイクした花嫁姿の
「どうして?」
あれだけ俺が言っても
「そりゃー、とても綺麗な花嫁姿に皆目を奪われるからだよ・・・いやぁ・・・楽しみだ・・・。」
「楽しみって・・・。」
そう言うと
心なしか顔が赤くなっている様だ。
俺がその表情を見ている事に気付いた
その日の夜はいつもの
いつもより艶っぽく、そして覚悟の様なものが感じられた。
俺もそれを感じ、
そうなるとは想像もしていなかった為、なにも用意しておらず自然のままでの行為となってしまったが、湧き上がった感情は止める事は出来なくなっていた。
俺の恐れていた悩みは、他愛無く解消されていた。
そして俺達の関係は、同居から同棲へと変化した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます