第3話 俺は一応先輩なんだが。
突然の
正直、戸惑いは隠せないしその本意も想像できなかった。
記事を書かせても卓越しており着眼点はピカイチだった様だ。
PCの入力も群を抜いて早かったらしい。
そして何より記者に大事な好奇心が非常に強く、記者としての資質は新人の中でも群を抜いていたらしい。
新人研修の際、良い意味で目立っていた彼女だったが、1つだけ逆の意味で目立っているものがあったそうだ。
彼女はカメラが唯一苦手だったらしい。
特にファインダーで撮影する時、撮影対象を見失ってしまう様だ。
俺が所属する政治部には今年、カメラの得意な新人が入った様だ。
俺ほどの撮影技術を持たなくとも十分戦力になる腕だそうだ。
そこで、一応社歴がそこそこある俺が
写真しか撮れない俺と、写真が撮れないがその他は何でもできる
政治部のキャップには話は通っており、最初に話してもらいたかったものだが・・・。
しかしやはり腑に落ちない・・・。
正直、俺は記事が書けないと言い切っても良いくらい文章下手であるし、
この人事はやはり失敗だと行動する前から感じてしまうのは無理も無い事なのかもしれない。
キャップという立場は部下を持つベテラン記者だ、当然社に籠っておらず他の記者同様、社から出て業務を行う事も多い。
取り残された俺と
「
カメラが本業の俺からすれば何が苦手なのかすら想像も出来ない。
「いやぁ・・・あたし昔からそういうの苦手で・・・そうそう、観光地とかによくある双眼鏡とかあるじゃん・・・。」
「あれでも見たい場所捉えられないの・・・。」
うん、やはり俺からすれば理解不能だ・・・。
「たまたま撮影対象を捉えられても写った写真がいつも変なの・・・。」
「変って?」
「写していたものがダブっていたり、真っ黒だったり・・・逆に真っ白だったりするのよ・・・。」
「完全にシャッタースピードの選択ミスだな・・・。」
「あれが良く解んないのよね・・・。」
遅いシャッタースピードでシャッターを切った時、手がぶれると撮影対象が風景が流れる様な写真となる。
真っ黒なのは暗い場所でシャッタースピードが速いか、F値を絞りすぎ・・・真っ白なのはその逆である。
ファインダー内には露出が表示されているはずなので、それを確認すれば問題ないはずなのだが・・・。
俺から言わせればPC入力が速いと言った事を聞いているのだが、俺にとってはそちらの方がよっぽど難しく思う・・・。
「まあいい・・・その為に俺がコンビ組まされたって訳だ・・・自慢じゃないが写真に関しては俺は絶対の自信がある、
不本意だが社命なので従うしかない。
「あのさ、「
「この年で「ちゃん」付けは何か、こそばゆいわ・・・。」
「なら「
「もう、
「俺も、その「兄ちゃん」ってのもやめてほしいかな・・・。」
「なら「
名字で呼ばれると思っていたら、名前を呼び捨てされていた・・・。
「おい、俺は一応先輩なんだが・・・。」
「あたしと
「固い事言いっこなしだよ!」
幼い頃からやんちゃな少女だったがあの頃とは違う、社会人には社会人なりの礼儀というものがある・・・。
とは、思ったが・・・今の俺も人の事をとやかく言える程、礼儀正しくはなかった・・・もう好きにしてくれ・・・。
「しかし、
良くしゃべる女だ・・・
「まあ、俺もびっくりしたけどな・・・。」
「だよね!・・・うん・・・きっとこれは、運命なんだよ・・・。」
騒がしかった
この時の俺はある事で頭が痛かった・・・。
おそらく、
必要であれば、
俺から話すべき事ではないだろう。
取り合えず、帰宅したら
俺達は会社の資料室に居た。
記者というものは基本出社してすぐに外回り、そう記事を取りに行く。
取った記事を会社に報告、各部署のデスクが紙面に掲載するか判断して、掲載が決まればそれを煮詰めていく。
掲載が決まらなければボツという事だ。
正直、新人の
俺にしても写真には自信があるが、記事としてのネタを集める経験は無いといってもいい。
正直、このコンビ結成はかなり不利だと思うが。
そこで俺達は、過去の記事を参考に、企画をしようと考えた。
終戦記念日が近づくと、当時の状況、例えば戦況や国民の生活などを過去の記事から引用し数日をかけて掲載するといった企画だ。
当時の事を知っている人物を見つけ直接会い記事にする事も可能であるし、何より自社にある膨大な過去記事という資産もある。
普通に生活していて大きな事件と遭遇する事なんて確立としてほとんどない。
そして記者になってもそれは同様である。
記者になったからネタが転がり込んでくるほど甘い世界ではない。
大きなスクープなどは記者達による地道な努力の結果であり、偶然事件の現場に記者が居るなんて幸運な事は殆ど無い。
ただやみくもに外出して、街をさまよっても記事など取れないのだ。
「ねえ、
「記者って社を出て、自分の足で記事を探すってイメージだったのだけど、社内で過去記事をあさっているなんて・・・。」
過去記事を確認しながら、
「まあ、俺達に足りないものは記者としての経験だからな。」
「ねぇ、
「ああ、言ったさ、
「ひょっとして、あたしの教育係はハズレって事なの?」
「ああ、ハズレもハズレ、大ハズレだな。」
「せっかく、念願の記者になれてこれからだっていうのに・・・、先輩から教えを乞うことも出来ないなんて・・・。」
「
「良いじゃないか、縛りが無くて。」
「記事が取れなくて、会社に居られなくなる、未来が想像できるんですが・・・。」
「まあ、記者としての俺が役に立たないってのは社内でも周知の事実だからな。」
「先輩記者達にそれをダシにして、泣き付いても良いぞ?」
「それだけは、絶対いや!」
即拒否した
「何でだよ、先輩達にアドバイスを受けるってのは、何も恥ずかしい事じゃないぞ?」
「そんなのはあたしにも理解してる、そこじゃないのよ!」
「じゃあ、どこだよ?」
何に怒っているのか、俺には理解できない。
「
おいおい、呼び捨てどころか「あんた」呼ばわりかよ・・・。
「別にいいじゃないか、利用できるものは利用する、俺が記事を書けないのは誰もが知っているし、それを利用して話が円滑に進むなら結構な事ではないか?」
「記者には記事の為ならそれくらいの事、平気でやっていけるくらいの図々しさが必要だぞ?」
「・・・それは理解できるけど・・・。」
「・・・あたしに
一応先輩である俺に対して会って間もない内から、「
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