第2話 新米記者とのバディー結成。
平成15年、俺は三十路を超えていた。
若かった学生の頃は自分が30歳を超える事など想像も出来ていなかった。
30歳なんてものすごく大人だと思っていた。
だが30を超えた俺はというと、何も変わってはいない。
厳密には見た目は年相応となってては居るが、中身は変わっていないという事だ。
一方、プライベートは充実していた。
休日は、趣味の写真撮影を行い仕事とは違う喜びを相変わらず感じていた。
そして何より俺には、地味ではあるが愛して止まない
彼女は大学を卒業し大手の商社に就職をはたしていた。
本当に優秀な女性だ。
この年になると、特定の相手が居れば結婚を考える。
就職した
人は経験をする事により成長して行く。
陳腐な考えかもしれないが、俺は
結婚生活と就職の同時進行は負担がかかると勝手に思っていた。
何、今まで上手くやっていたじゃないか。
時間をかけて2人の人生のレールを引いていけばいいさ。
朝いつもの様に社に出社する。
新聞社というのは当番制で深夜の社への待機などもある。
そして大きな事件があった場合は、休日であっても強制的に出勤させられる。
そう考えれば待遇は良いとは言えないかもしれない。
だが給与に関しては普通のサラリーマンより収入は良い。
不満はないとは言えないが、俺は自分の
理想を言えば本来撮りたかった
だが、俺の特技は写真しかないしそれで食っていける。
まあ、他人から言わせれば十分充実した人生ではないのだろうか?
俺の勤務先は一応社の本社である。
最大手の新聞社ではないが自社ビルを所有しており、下層階は食堂やコンビニなどと言った店舗も入居している。
俺は朝食は
それを日課とする者がもう一人いる。
人間不信を拗らせていた昔から、
最初はそれをうっとうしく感じていたが、人間というものは適応能力があり慣れというかそれが徐々に気にならなくなっていった。
当直や出張などが無い限り、最初に会話をする社の人間は
カメラバカとバイクバカ、何か共通の性質を感じたのか俺にやたら絡んでくる
「おい、
モーニングの食パンにバターを不器用に付けながら俺に話しかけてくる
「ん? 何をですか?」
いきなり動詞のみを振られても意味が解るはずはない。
「今年の新入社員にすんげぇーぇ、美人が居るって話だ!」
「
「いやいやいや、あの結婚で俺には結婚生活は向かないと学んだからなぁ・・・。」
「だけど、良い女ってのは良い!」
「見てるだけで気分が良くなる!」
俺には全く理解できない思考だが、
「社会部に配属されたみたいだ。」
「お前、社会部の
仲が良いというより、写真しか取れない俺はどこの部署とでも交流がある。
「別に特別仲が良いという訳でもないですけど、まあ交流はありますね。」
「なら、その時でも確認してみろよ?」
「例の新入社員ですか?」
「当り前だろ!」
「いや・・・興味ないですから・・・。」
「そうだな・・・お前、以前はここで俺と一緒にモーニング食ってたよな・・・。」
「でもここ数年、コーヒーしか飲んでいない。」
「お前が女と同棲しているのは、俺も感づいていたよ。」
「今朝もその女の作った朝メシ食って来てんだろ!」
「まあ、お前は根本は真面目なんだろうな。」
相手は
この件に関しては隠しているつもりも無かったが、話す必要も無い為誰にも喋ったことはない。
女と同棲している事を、やたら誇張する人間も居るが俺にはその感覚が理解できない。
そして、俺が同棲している理由としては、相手が
同棲相手が俺にとっては唯一無二の存在である為俺は一緒に暮らしている。
そう、
俺には
「まあ、俺は社会部のデスクとは昔色々あって、なんだ・・・あまり近づきたくはないんだ・・・。」
「社会部の人間とは割と仲がいいんだが、デスクだけがなぁ・・・。」
「まさか、俺にその新入社員を偵察しろって事ですか!?」
「ご名答! 確認したら400字詰め原稿用紙3枚以内に感想を俺に提出な!」
「俺はキャップに文章は小学生レベルと太鼓判押されてるんですが・・・。」
いつもの様に出社前のモーニングコーヒーと他愛のない会話を終え俺達は出社した。
出社してみるといつもと雰囲気が違っていた。
見慣れない顔がチラホラと確認できた。
そう、本日から新入社員が部署配属となっていたのだ。
いつもの様に出社した俺の顔を確認した同部署のキャップに俺は声を掛けられた。
「
一応「政治部」所属の俺だが、記事は書けないが写真には自信があるので各部署問わず同行し撮影を行う事が多々ある。
中でも中田キャップは俺の腕を買ってくれている。
人格者で、部下からも非常に慕われている。
表向きは好感の持てる人物だ。
俺がファインダーを通して確認すればどの様な人物かは解らないが・・・。
「わかりました。 早速行ってきます。」
いつもの様に撮影依頼だと思っていた。
なにか難しい撮影なのかもしれないと、色々考えつつ俺は社会部へ向かった。
社会部の島に当たり前のように入っていく。
別部署だからと言ってかしこまる必要はない。
社会部の人間も俺の存在は認知されている様で、気にも留めていない様だ。
俺は、
「おはようございます。 今回はいったい何ですか?」
そこには一人の女性が座っていた。
ミディアムヘアでソバージュのかかった黒髪で女性用のスーツを着こなしている。
スタイルも非常に良さそうだ。
肝心の顔は・・・美人だ・・・ものすごく・・・。
もしかしたら、
メイクをばっちりと決め、唇に引かれたルージュがとても印象的だった。
ただこの容姿にはどことなく違和感があった・・・。
「彼は「政治部」の
女性は俺の方を向き軽く頭を下げ挨拶を始めた。
「本日より「社会部」に配属となりました、
女性は多少緊張気味だが、新入社員特有の必死さが感じられ印象は悪くなかった。
「「政治部」の
俺なりに彼女に気を利かせたつもりの発言であった。
この女性は俺の顔をマジマジと見ている。
何か気に障る事でも言ったのだろうか・・・?
「あーっ!
俺の事を「
「
俺がこの女性の容姿に違和感を覚えた理由がはっきりと理解できた。
俺の同棲相手の
普段肌の保湿程度しか手入れしない
「君ら、もしかして知り合いか!?」
「故郷が一緒でご近所さんでした・・・。」
「そんな偶然もあるんだな。」
発言は冷静そのものだったが、
「偶然の再会を果たした二人に話がある・・・。」
嫌な予感がする・・・。
「「政治部」
「えっ!?」
「えっ!?」
同時に予想外の反応を晒してしまっていた。
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