第2話 かつての仲間達は語り合う。
物凄い勢いで疾走する一台の単車があった。
スタイリッシュなフォルムをしており、その単車を乗りこなせたら正に人馬一体といった具合でとても絵になるだろう。
だが、その単車は誰もが見ても歪な状態で走り抜けて行った。
通常、乗車定員2名の単車に何故か3人乗っている、そして後ろの二人はノーヘルである。
単車というのは、一人で乗る事が前提で設計されており、
だがこの3人乗りの単車は3人乗っているのも物ともせず街中を駆け抜けて行った。
3人乗りの最後尾に乗っている職業カメラマンの男はやたらと気を使っていた。
自分のすぐ前には、フリージャーナリストの
そして先頭の運転手である
単車は傾斜して進行方向を調整する乗り物である。
後ろの人間が車体が傾いたからといって反対に体を逸らしたり、逆に運転者と同じ様に傾斜を付ける為の運動を行う事でコントロールを取り辛くなる。
負担を掛けないようにするには、荷物と化すのが一番である。
もっとも、運転手の
センパイと言っても業種はまるで異なる。
単車のフロントフォークに社旗をなびかせ街中を疾走する姿に単車乗りなら憧れる者も多かっただろう。
記者とカメラマンが取材を行いその記事とフィルムを社に持ち帰るのが業務である。
だがFAXやインターネットのインフラが整った事により、今や時代遅れの、例えるなら「伝書鳩」のような存在となっている。
3人を乗せた単車は、途中何度もパトカーに赤色灯を焚かれ追走されたが全てふりきり、とあるマンションの前で停止した。
「着いたぞ、
「
俺は、困惑していた。
「どうした?」
「ここ俺ん家じゃないか!」
「へーっ! ここが
この二人は完全に上がり込む気満々の様だった。
ついでだが、二人が述べた名前、
3人はマンションのエレベーターの中に居た。
乗ってきた
オートロックのある駐輪場だ警察には見つからないだろう。
しかも
街中の防犯カメラの存在が気にかかるが、
「
「いやいや、例には及ばんよ。」
「俺も
「あーっ、相変わらずだわ、このおっさん・・・引くわーっ・・・。」
ちなみに、
目的の階にエレベーターが停まり、扉が開いた。
3人は途端に無口になった。
共用スペースである廊下では人がいるかもしれない、情報を他人に盗られない為の癖である。
3人は黙ったまま
当然である。
ある先生の闇の部分を暴いた大変なネタである。
だがこの二人の関心は大事なネタより他のものに向けられていた。
「おっほーっ! 懐かしいな! F3じゃないか!」
「昔の写真記者はこればっか持って居たな!」
Nikon F3
工業デザイナー、ジウジアーロによってデザインされた洗礼されたデザイン、特にグリップの赤い縦ラインが特徴でこの機種以降、フラッグシップモデルにはグリップに赤いラインが何らかの形で残されている。
今の時代の様にオートフォーカスなんてものは無く、マニュアル操作でピント合わせを行うが、ファインダー視界は良好で撮影はまさにプロが求める物だった。
堅牢かつ今のフラッグシップモデルの様な巨大さも無く、コンパクトにまとめられている。
俺はこのカメラを中古で手に入れたのだが、最初の状態も良かったせいか故障知らずで実に堅実な造りに惚れ込んでいる。
「まったく
「キヤノンが全盛期の時もニコンを使ってたし。」
「俺はニコン意外に興味ないので・・・。」
「それにレンズ最初から買い揃えると考えるとゾッとする・・・。」
一眼レフカメラはレンズ交換式のカメラである。
装着したレンズによって様々な変化のある写真を撮影することが出来る。
つまりカメラ本体を購入した後の方が問題である。
様々な種類のレンズを欲する様になり、俗にいう「レンズ沼」に放ってしまうのだ。
俺も例にもれずその口だ・・・。
ちなみにカメラメーカー事にレンズの互換性は一部を除いて無いといって良い。
本体を別メーカーにしたらレンズも全て買い替えだ。
「
俺は言われっぱなしでは何か腑に落ちなかったので、
「ん? どうしてだ?」
「
「バイク乗るのが仕事のプロなら、普通信頼性のあるホンダかヤマハ乗るでしょ!」
決してカワサキというメーカーをディスっている訳では無い。
ホンダやヤマハが異常な程、信頼性が高すぎるだけだ。
海外メーカーと比べたらカワサキだって信頼性は高い。
「違いない・・・だが・・・カワサキには男のロマンがある・・・。」
「さっき乗った
「あんな異常な物、カワサキかスズキくらいしか出さねぇからな!」
「だから俺は他社の単車は買わねぇ・・・。」
部屋の中の男二人は頷きあっていた。
「はいはい、男共の熱い語らいはまだ続くのかな?」
「いーかげん、あたしは聴き飽きちゃったんだけど?」
「悪い悪い! つい熱くなっちまった!」
「本題だな!」
「で・・・今回の件・・・例の先生はクロが?」
「うん・・・クロです。」
俺は答えた。
「お前が言うなら間違いないな!」
「ところで・・・。」
「おまえら・・・昔付き合ってたのか!?」
唐突に
「なんでだ!?」
「なんでよっ!?」
俺と
「だったらなんだ・・・あれ?」
指先から視線を対象に向けると、一枚の写真があった。
「あっ!」
「なによ、まだ未練タラタラって訳!?」
「口では終わったって言っときながら。」
俺は居心地が悪かった。
「あの写真は近々処分するつもりだったんだ・・・。」
これは本音である。
「やっぱりな!
写真の人物は確かに
今のこの状況の様に
だが、それは真実ではない。
「あーっ、これね・・・
俺が10年近く付き合っていた、
ひどい別れ方をしてしまった・・・。
今だ後悔している・・・。
(
俺は
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