第21話 UNNATURAL。

 今回の「今週」はいつもとは少し違った。


 ループの精度が明らかに下がっているんだ。



 この一週間はずっと晴れだったはずなのが、二日から四日まで曇って、五日には雨が降った。


 他にも二日にあったはずの小テストが延期になったり、会話の内容が割と大きく違ってたり、ゆいも含めて他の人の取る行動が少し変化していたり。


 でも、やっぱりおおまかには進む路線は同じで、少し道が違うだけで同じゴールを目指そうとしている。


 小テストも結局行われたし、会話もなんだかんだ同じ結論とか、同じ段階で終わったり。ゆいの作る弁当も少しおかずが違ってたけど、味に変わりはないし。


 ま、前にも学校サボって遊び行ったり、何回か大袈裟な行動取っても、結末はそんな変わらなかったんだ。


 だけど、少しの変化がいつか大きな変化に繋がると思えば、少しはいい方に転がっているのかも……?



 十月八日



「ゆい。何か最近、変わったことでもない?」


「……ん? ないけど。なんで?」


「いや。何か面白いことでもないかなって……あ、そうだ。明日の放課後空いてる?」


 これはなかなか自然なのではないか?

 

 最近、退屈だなぁ……だから……一緒に遊ばない?


 筋も通っている。いつもの手に汗握りながら「あ、明日、よ、よよよよ予定ある?」とかよりマシだろ……。


 いやぁ、過去一で自然だ!



 ゆいは一度俯いてから、笑顔を振りまいて答える。


 オレは一瞬、断られるんじゃないかとヒヤリとしたけど。


「……空いてるよ。どっか遊び行くの? いいね行こうよ」


「お! そうか。じゃ、駅の時計台に四時半頃」


「わかった。じゃあ、また明日」


「ああ。またな」


 そしてオレたちは互いの家の方に別れていった。



「――――ッシ!」


 我ながらめっちゃ自然ナチュラルだった。やっぱ人は成長するんだよ。ま、どうせ明日死ぬんですけど……。


 ああ、いかん。死に慣れすぎて………そうだよ。オレは明日の死を回避しなきゃならないんだから。



 十月九日。



 昨日の自然な流れで、今度こそ抜け出したいと思うのです。



「――来る……としたらそろそろか」


 だって、今日だって数多のトラップさえも自然にクリアし……++++++




 なんて、うまい話などなく、やっぱりループしてしまうのでした。めでたくないめでたくない。




――初めて十月九日が曇りだった。

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