第7話 ループするのだから。
結局、オレはあの後も色々試した。でも、うまく行っても待ち合わせ場所が視界に入り始めるところまでだった。
「なぁ。この世界がループしていたらどう思うよ」
とりあえず、オレひとりでは解決できそうにない問題だ。心もとないが、こいつの脳みそにも頼ってみよう。
もしかすれば、ループしていることに気がついてるのはオレだけじゃないのかもしれない。
「ん? なに、ラノベとかの話? ニーチェとかの話?」
「どっちでもいい。とりあえず、ひょんなことからこの世界が数日を永遠に繰り返してて、それをお前だけ知っているとする。そん時、お前はどうする?」
「心理テストの類か? うーん、そうだな。まずは
「楽しむ?」
「だって、必ずループして、それを俺だけ知ってんだろ? そりゃ嬉しむさ」
「たとえば何するんだ?」
「うーん、女の子をとっかえひっかえすっかなぁ……」
はーい、フェミニストの皆さん。クズはこいつです。吊るし上げて、市中引き回ししてください……いや、こいつはそれも悦びそうだな……。
「まず、クラスの女子は制覇するだろ? 次に学年、学校。あ、俺さ外人さん……ブロンドの美女とかにも興味あるんだよな……うーんッ! 行っておきたいッ!」
よかったぁ。ループしていることに気がついているのがオレで。
もしこいつだったら、世界から清純という言葉が消えてしまうね。
「さすがのクズっぷりに感服するね」
「はっはっはっは! でも、いつかは抜け出さないといけないよな、やっぱり」
「楽しいのに?」
「ああ。俺はやっぱり明日がほしいし、そして
なぜだろうか……。まだ朝なのに、こいつは感傷的になってきている。もしかしたら、いまの話を聞いて、妄想で実際に周回したとか?
それは怖気が猛ダッシュで毛細血管を駆け巡るな。
「俺は楽しく生きて…………苦しんでも生きて、幸せに生きて、悲しくても生きて、誇らしく生きて、泥にまみれてでも生きて、生きて、生きて、生きて生きて生きて生きて、、、生きて。生き抜いて、そうして死にたい」
目線を斜め上にする当たり、わざとらしい……。
「……それ、なんかの受け売りか?」
「いーや。俺の道だ。だって、鏡見てみろよ、お前死にそうな面してるぜ?」
パシャリとケータイで写真を撮られた。この手際のよさは最初から撮ろうとしてたな……。
「ほらよ」
「――はは。本当だ。こいつは明日にでも飛び降りそうだな……」
オレは泣きそうになった。
オレのブサイクな顔が面白くて。
オレにはこんなにもいい友達がいて。
それにいまさら――こんなに死んでから――気がついて。
――明日がほしい。
オレはまた死んで、ループする。
――生きて、生きて、死にたい。
オレには生きた記録として「記憶」があるけれど、生きた証としての「
オレはまだ生きて、生き抜いて、そして死ねない。
だって、オレはループしているのだから。
こいつからこの言葉を引き出せることはないだろう。
どうせ今回もオレはループする。
「ありがとうな、少し気分が晴れたわ」
でも、オレはこいつのこの言葉を絶対に忘れない。
だって、オレは
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