第2話  幸せそうなその顔を・・・

「おーい、かおりー。生きているか―。」

「おーともさー。としきーお願いしたもの買ってきてくれた?」

キャッキャとした、元気溢れる返事をする女子高校生のいる部屋にためらいもなく踏み込む男子高校生。

「買ってきたよ。確認するけど、・・・ほんとにこれか。見た目がすごく体によくなさそうなんだが・・・。」

としきが取り出したのはケミカルな色合いをした炭酸ボトル。中にいくつか違う色のゼリー状のものが見えるが、ラベルに書かれている通りならただの味変用のカプセルであるらしい。

「おぉっ!それそれっ、その毒々しくケミカルな色をした炭酸インリョー♪」

「本当に飲むのかよ。しかもボトルの中で動いているから気持ち悪いんだが・・・。」

齢16の青年が、同い年の女子高校生の部屋に入ってドキドキとした胸の熱くなる感じもなく部屋に入ってどっかりと座り込む。

「ねぇねぇ、としき。」

「んだぁ、今度はなに?——んなっ、何してんだ!!」

あまりの驚きにDT丸出しの反応をするDT。仕掛けた本人も少し恥ずかしいのか自分で少しだけ捲ったスカートを持ちながら顔を少し背けて頬を少し染めて目線を向けている。

「えー、サービス?」

「なんで疑問形なんだ!?」

「感想は?自分じゃそれなりにいい体つきしていると思うんだけど。としきからしたらどう、犯したくなった?」

相手が自分より慌てているからか、少し余裕が出たのかいたずらっぽく聞いてくる。

「バカかお前は!いやっ、それよりいいから元に戻せって。」

「ほら答えなさいよー。ほらほらっ」

相手より有利な立ち位置とわかると途端にSっ気を見せてスカートをヒラヒラさせるかおりにタジタジなとしきは目線をそらして黙った。

としきには見えてしまったのだ。座っているがゆえに下から見えてしまうその大きさが故の存在感と、ラフな格好故の隙間を。

年頃男子がこれに赤面しないのならそれはそれで色々と心配になる。

しかし、ここ最近のかおりの無防備さと微かに異性として意識せざるを得ない距離感にはそれまでの距離の近さからより一層としきの性的興奮を高める材料になっていた。



・・・イカンイカン。


「それで、今は何を作っているんだ?」

「露骨な話題そらし、私でなきゃ乗らないね。・・・今やっているのは大きいものだよこれが出来るにはもう一年から二年くらい必要かな。コツコツ作ってもバグが原因であんまり楽しめないとつまらないからね。」

「フーン、そういうものか。それでどんなゲーム?俺みたいな飽き性でも続けられるものなのかい。」

「それはどうかな?ただ、このゲームではこれだけは言えるよ、家族で楽しめる。」

「楽しみに待ってます。」


こんな彼女だから、いつまでも好きで入れるし好きでいてほしいと意地でも

努力できる。


「・・・なぁ、やっぱり俺はおまえが表に出るのは反対するかな。」

「なんだー急に。いきなり過ぎて話についていけないよ。」

「この前ヘッドハントする内容のメール来てたろ。すぐにゴミ箱に捨ててたけど。」

「・・・あー、んんー。あったよーなー・・・どうだったけーかー。」

「覚えてないんかーい。」

さっすがー、かっけーす。かおりさんまじかっけー。

ただ、それを言ってる恰好が床にうつ伏せで髪の毛ぼさぼさじゃなかったらプロポーズしたくなる。

「・・・・・・あーあった。これね、いらねぇ削除しまーす。」

決断速すぎない?まぁいいけど。

「それ以外にもいくつかのマスコミ系の人らから話は来ていただろ。返信はすべてお断りの四文字だけにして返してやったけど。」

「ちゃんと礼儀は守ってねー。私のイメージが慇懃無礼の四文字になるじゃん。」

「ちゃんとテンプレートからとって返したよ。けどさ、どれも写真とインタビューばかりで見出しなんかも面白半分なものとかばかりで腹が立ったけど。」

「おー、私のために起こってくれてありがとー!お礼は何がいいかなぁ、マッサージ?デート?それとも―・・・ベッドの上で?」

「・・・。」

非常に魅力的かつ思わず乗りたくなる提案だが、かおりの両親のいる隣のリビングに聞こえそうな声で言うのはやめてください。お願いしまう。

「かわいいなぁ、としきは。」

小さな声で口にしたその言葉に幸せそうな顔をしたかおりの顔を俺は見逃してしまったことに気が付かなかった。

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