第7話 スキル取得
取り合えず俺は先にステータスポイントを割り振る事にした。
正直、これに関しては迷う事は無かった。
ブックマンと言う職種、初期職種であるブレイドやガンマンとは違って、筋力や敏捷、そして耐久は必要ないと思う。
魔術系の能力を使う以上は、身体能力を底上げするよりも、能力自体を鍛えた方が良いと言う結論に至る。
その為、ステータスポイントは全て『能力値』へとぶち込んだ。
選択肢が出現して『本当に宜しいですか?』と言う忠告文に迷わず『はい』を選択する。
「お?」
ステータス画面が更新された。
【基本性能】
能力値が10を超えたからか、スキルランクがEからDに変わっている。
「それだけじゃないな……」
【スキル】
・『人鳥の共鳴』:E
・―――(取得可能枠)
スキル取得枠が更にもう一つ増えている。
成程、この能力値はランクが上がるとスキル取得枠が増える仕組みなのか。
なら丁度良い、早速スキル解放欄へと戻って、俺は『現象転写』スキルを取得させた。
「これで良し……どうだアルトリクス。新しいスキルを取得してみたんだが」
手に一杯のペンギンの素材を抱くアルトリクスが衣服を見たり自らの体に触れたりして様子を伺っている。
「……特に、変わった様子はありません。プロフェッサー。一体どの様な能力を取得したのでしょうか?」
そう言われて俺はスキルの内容をよく見てみた。
『現象転写』:E
・視認した現象(異能・能力・魔術・技能を含める)を魔術書に写すスキル
・転写出来る現象は一つのみ、ランクが高くなればなる程に転写数が上がる。
と、そう書かれている。
つまりは、一回ではあるが、現象を転写する事が出来るらしい。
「取り合えず、これは他のエネミーと遭遇した時に使ってみる事にするか……ちなみにだが、魔術書に現象を転写した場合、それを使用する事は出来るのか?」
想像したくはないが……『
それを使用するに当たって、何かしらの条件もとい代償が必要になるのかどうか。
「問題はないと思われます。魔力と言う概念は理解してますから……連発出来るかどうかは分かりませんけど」
使用するに当たって、強大な力を使役する事は難しいかもしれないと、一応脳内で使用条件として記録する事にする。
「そうか、良し、一応、出来る事は決まったな……素材を持って、街に行こう」
そう言って俺は素材をアルトリクスから受け取ると、上着を脱いで簡易的なバッグを作る。
こういうとき、アイテムとか収納するストレージなどがあったら便利だな、と思いながら、俺はバッグにアイテムを敷き詰めて再び歩き出した。
一時間で約五キロ。二十キロ歩いたとすれば、肉体の疲労を含めて約四時間掛けて、街へと到着した。
「はぁ……疲れた」
息を吐いて俺は街の風景を見上げる。
其処はなんと言うか、工場地帯の様な街並みだった。
巨大な塔の様な工場には煙突が突き立てられていて、其処から黒い煙を吐き出している。
工場に繋がれた太いパイプが空を掛けて街の端まで伸びていて、街を覆う壁に向けて黒い液体を溝に流して漆黒の沼と化していた。
街の入り口には二体のブリキの人形が立っていた。
俺が近づくと、ブリキの人形がこちらの方に顔を向ける。
『―――――◆■■?』
え?なんだって?
何か言語を発しているが、何も分からない。
いや……まあ、新世界の言語らしいから、日本人の俺が理解出来るとは思わないが。
……ん?いや、このイントネーション、訛っているが、聞き覚えがあるぞ?
「……旧世界の言語ですね。英語でしょうか?」
アルトリクスがそう答えた。
そう言えばアルトリクスは『万物の声』と言うスキルを所持していると言っていたな。
「なんて言っている?」
「プレイヤーか否か、それを問うています」
そうアルトリクスが答える。
「なんと言いましょうか?」
彼女は俺の代わりに堪えてくれるらしい。
何と答えるべきか、俺は考えてみる。
ある疑問が俺の中に浮かんでいた。
それはこの新世界の住人が『プレイヤー』と言う概念を知っている事だ。
新世界を作った謎の人物が、旧世界の選定者、つまりプレイヤーと言う概念を教えているのならば、彼らがプレイヤーと発する事に対して違和感はない。
問題なのは其処だ。
一体誰が、『プレイヤー』と言う単語を新世界の住人に教えている事になる。
新世界を作った人物、それ以外を除けば……考えられるのは同じ『プレイヤー』であると言う事。
百四十年も経過しているのだ、あのデバイスも、他のデザイアを持つプレイヤーがルールを設定したりしていると言っていた。
この街が、百四十年程の歴史で建てる程の知性があるとは思えない。
人間だって、現代の文明に届くまで数千年はかかったんだ。
明らかに、他のプレイヤーが手を貸したと見ても良いだろう。
街があるからと、疑う事に関してはしていなかったが……。
プレイヤーが、他のプレイヤーに対して友好的であると言う確証はない。
そして、街にブリキ人形が門番として立っている。
それはつまり、外来から襲って来る存在があると言う事。
先程のエネミーが街を襲うと言う可能性があれば、プレイヤーが街を襲って来る、と言う可能性もある。
外来からの敵から街を守る為に、エネミーもプレイヤーも同じ敵として判断しているのならば……此処で戦闘が起こる可能性もある……。
「……こう伝えてくれ」
正直、街を作った程のプレイヤーと俺とでは差があり過ぎる。
戦闘を起こせば負けるのは確実に此方だろう。
しかし、それはプレイヤーを敵対視している場合のみに限られる。
俺は敵対する気はない、なんなら、雇って欲しいとすら思っている。
「俺は『プレイヤー』だ、どうか、そちら側の『プレイヤー』と会話する機会が欲しい」
「それで良いんですか?」
俺は頷いた。
アルトリクスがブリキの人形に話をしだす。
さあ、これでどうなるか。俺がプレイヤーだと知れば、何か攻撃か、それ以外の行動に出るかもしれない。
心臓が高鳴っている。大学受験の合格発表の時以上にドキドキしている。
『―――■■?』
ブリキの人形が再び喋りだした。
アルトリクスが通訳する。
「えぇっと……『プレイヤー』なら入場料に対価を払え、と言っています」
「……『プレイヤー』と会う事は?」
アルトリクスが再び通訳する。
『――――■■』
「先程と同じ事を言ってます」
……なんだ、もしかしてこのブリキ人形、決められた言葉しか喋れないのか?
ゲームのNPCみたいに、門番をする事だけが仕事であるかの様に……。
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