第6話 スキル選択


早速ステータス確認をすると、どうやらLevelが上昇した際にはポイントを他のステータスに割り振れる事が出来るらしい。


「ってか、いきなりLevelが12も上がったのか……」


あのペンギン、かなり経験値が高いらしい。

……あのペンギン、呼び出して自爆させたらかなりの経験値が見込めるんじゃないのか?


「なあアルトリクス。もう一度ペンギン呼んでくれ」


「ペンギンですか?……分かりました」


再び、アルトリクスがペンギンを呼び出す。

人懐っこいペンギンがアルトリクスの足元でうろうろとしている。

可愛らしいが可哀そうに、お前たちは経験値になる運命だ。


「自爆させてくれ」


「は、はい……ばいばい」


名残惜しそうにアルトリクスがペンギンに自爆を命令すると、ペンギンたちは一斉に爆破する。

五匹程のペンギンを爆破したから、経験値はどの様に上がっているのか確認するが、Levelが上がった様子はない。


「うーん……」


これは自分が呼び寄せたペンギン、またはエネミーを使って爆破させても経験値、もとい、Levelが入る事は無いのだろうか。

せめてもう一回くらい爆破させたら、Levelが上がるかどうか分かるかも知れないが。


「………」


しょんぼりとしているアルトリクスを見ているとなんだかいたたまれないな。

しまったな、思った以上にペンギンに愛情を抱いていたのか。

やり直したい、とは思うが、過ぎてしまった以上は仕方が無い事だ。


「とりあえず……」


俺は当面の状況をどうにかする必要がある。

それは、このステータスのポイントをどの様に割り振るか、と言う点と、もう一つある。

Levelが10上がった事によって、『スキル選択』と言う項目が増えていたのだ。


その内容を見て俺は唸った。

どうやら、Levelが10上がると、新たなスキルを習得する事が出来るらしい。


事典系スキルが三つ、観測系スキルが二つ、魔眼系スキルが二つ、合計十のスキルが選択可能になっていた。

残る三つのスキルは『万物の声』『記録の記憶』『詠唱省略』と職能スキルの三つも入っている。

それを選択した場合はどうなるのか、スキル欄に別のスキルとして入手した扱いになるのか。

そう思って、もしそれを選択した場合、重複してしまう可能性もある為に、折角の新たなスキルが入手出来るのにそれをしないと言うのはもったいないと言う感情に陥ってしまう。


「迷うな……」


夫々のスキルを改めて見る。


事典系スキル

『同時詠唱』

・一度に二つの魔術書を発動出来るスキル


『無詠唱』

・言葉を紡がなくとも魔術書を発動出来るスキル


『現象転写』

・視認した現象(異能・能力・魔術・技能を含める)を魔術書に写すスキル


観測系スキル

『痕跡の残り辺』

・逃走したエネミーを追跡出来るスキル


『神の視天』

・空から見下ろす様な視線を得るスキル


魔眼系スキル

『未来の魔眼』

・視認出来る範疇で未来を視認出来るスキル


『盗視の魔眼』

・対象の視覚を盗み見るスキル



『同時詠唱』のスキルは今の所必要が無いな、魔術書は一冊しか所持していないし。

『無詠唱』はこれから必要になる可能性もあるが、今の所、アルトリクスが魔術書を使用している所を見た事が無いんだよな。


「アルトリクス、お前の魔術書の事なんだが……具体的にそれを使って何が出来るんだ?」


アルトリクスは爆破したペンギンの素材が無いか探していた(味方エネミーは自爆をしてもアイテムを放出しない様子なので、敵エネミーが落としたアイテムが無いが探している)。


「魔術書ですか?……これは、空白の魔術書ゼロ・グリモワールと言う装備品になります。基本的に魔術書は魔術を使う人が研究用に記す代物です、研究の過程と成果、そして結果を記入し、魔力を流す事でその工程を省き結果を現象とするのですが、この空白の魔術書には何も記されていない、魔術が無い魔術書です」


……つまり、何も使えないと言う事か。

あぁ、だからこの『現象転写』のスキルが存在するのか。

今の所だが、この先、ペンギンの様なエネミーと戦闘をする事を考慮しないとならない。

戦闘用のスキルが欲しい所だ。


戦闘系のスキルが欲しいとなれば、この『現象転写』以外のスキルは二の次だな。

『痕跡の残り辺』や『神の視天』は戦闘向きと言うか、探索やエネミーとの遭遇を控える為のスキルと考えたら良いのかも知れない。


そうだ、別に戦闘をしなくても良いんだ。

だったら、『神の視天』スキルとして必須になる可能性もある。

周囲の情報を見る為なら、この『神の視天』が優秀な気がする。


『未来の魔眼』は敵との遭遇を回避出来る可能性があるし、仮に戦闘になったとしても、回避とかに仕えそうだ。

逆に『盗視の魔眼』はどうだろうか。内容を見るに他の対象者の視界を盗み見る事になるが……その他の対象者と出会った時に必要かと言えばそうは思えない。

良くて抑止力だ。例えば俺に対して憎悪を抱く人間がいれば強襲とか夜道を襲って来る可能性がある。その時に相手の行動を認識する際に必要になる事もある。


……いや、そんなもしも、の話をしたら、どのスキルも必須になるだろ。

正直な所、ペンギンを呼び寄せるスキルじゃ少し不安な所がある。

応用が利きそうな『神の視天』か、戦力を強化すると言う名目で『現象転写』を選択するか……どちらにするか悩む。


「……アルトリクス。周囲の情報を見るスキルと、現象を魔術書に書き記すスキル、どっちがいい?」


困ったので、アルトリクスにどちらが良いか決めて貰う事にした。

アルトリクスは即決して言う。


「後者が宜しいかと」


その即断に俺は逆に不安に思った、何か理由があるのだろうか。


「何故、後者が良いんだ?」


「周囲の情報を見るスキル、と言うのは、マップの様な事ですよね?既に私の脳内には『記録の記憶』によって周辺の情報を収めていますので、前者のスキルでは重複するかと思われます」


そう言われてそうか、と思った。

まあ、地形図を現わしたマップは、明らかに『神の視天』の下位互換でしかないと思うが、少なくとも最低限の情報を理解していると言う事は重要な事だ。


「なら……『現象転写』にするか」


そう腹は決まった。早速、新しいスキルを習得させる為に、スキル選択を選んで『現象転写』を選択すると……。


『スキル所持枠がいっぱいです、どれか消しますか?』


と言う選択肢が出て来た。

しまった。そう言えば既に『人鳥の共鳴』でスキルを埋めたばっかりだったんだっけ。

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