第61話 滅殺の牙 ★★★
異教の地下神殿……大広間の中、
「……!」
周囲を染め上げる赤い霧となって、空中に漂うその血の色が、一気に変化したのだ。新鮮な酸素を含んだ赤から、闇を煮詰めたような色へと、一瞬で……まるでカーマインの絵具に垂らされた一滴のブラックが、全てを黒に染め上げていくかのように、どんどんと
あろうことか、色だけではない。不気味なことに、質感までも変化を遂げていた。
(これは……!)
サガの背筋がすっと冷たくなった。それは、この異常事態に対する、本能的な警戒反応だ。
そんな彼の目の前で、なおも蠢く
(ば、馬鹿な……! こんなことが!)
あるはずがない、と理性がどこかでささやく。
ほとんど無意識のうちに、サガの右腕が動いた。さっきユーリの首を切り落とした凶器、魔杖の仕込み
――たちまち脳髄へと走る、激烈な痛み。それとともに、サガの瞳に色が戻ってくる。同時、視界の中にぼんやりと浮かび上がる景色は……
気が付くとそこは、先程まで彼がユーリと対峙していた大広間。
そして、あろうことか……さっき、確実に首を切り落としたはずの
しかも、サガ自身はといえば、石床の上に
(さっき太腿を刺した、傷だけは“本物”……! すると、ここはやはり……!)
しばし呆然とするサガを見下ろしつつ、悠然と両手を組みながら、ユーリが言う。
「……ちっ、他人の後ろ暗い想い出を、じっくりねっとり
「……なっ! そ、それでは、精神操作にかかったのは……?」
「そう、お前のほうさ。とはいえ、ついでに見せてやった幻覚の中でも、とっさに自分の身体を傷つけることで術を解除したのは、さすがだけどな。だが、覚えとけ……闇の深淵を
「あ、あり得ぬ! 通常魔術ならともかく、私の切り札だぞ……!?」
「ああ、確かに切り札、相当なもんだ。だから、イチから対抗策を練り上げるのは俺でも当然無理だったぜ? だが術式を解析操作し、対象反転させるくらいならな……弱点なんだよ、互いの精神魔術回路を一度は通じさせる以上、そこんとこを警戒すべきだったな……!」
「術式を切り返しただけでなく、幻覚の効果まで加えただと⁉︎ や、闇属性も持たぬ貴様が、なぜそれを……! 仮に【同時魔変回路】の力だとしても、せいぜいは二つ……炎と氷、程度の……」
「ふん。誰がそう言った?」
「な、何……ま、まさか!?」
ユーリは小さく笑って。
「【同時魔変回路】でひと時に操れるのは、魔装武器の力を借りてもせいぜい
「な! 貴様程度の小僧が!? し、信じられん……! 炎、氷、闇の……さ、
サガは顔を大きく歪め、思わず絶句する。
一方でユーリはふと、その唇の端に浮かんだ笑みを消し去ると、自嘲するように、ぽつりと呟く。
「俺は……
「ぐ、ぐぬぅっ……!」
もはやサガは、
「ま、その“切り札”とやらをこの目で確認できて、
ユーリが冷たく言い放つと、すらりと二本の魔剣を構えなおす。
途端……彼の瞳の色が変わった。冷獄のように
その
「
かざした右手から、魔剣に宿っていく不気味な力。今や、己の脳の共感神経を司る部位を自ら麻痺させ、対象への一切の共感を絶ったユーリは、一欠けらの
次の瞬間、交差させて宙を裂くように振り下ろしたユーリの左右の刃から、灰色の光が弾ける。それはまさに二本の竜牙のごとく、まっすぐ前方を薙ぎ払って駆け進んだ。
「【無限の果てにたゆたう虚喰牙(オメガ・エグゼキューション)】……!!」
人類が未知の、異界にのみ存在するマグス……それはいわば、電理を超えた
その滅びを司るマグスは、文字通り灰色の、全てを無に帰す
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★★★【読者の皆様に、よろしければ……のお願い】★★★
「スラムダンク」を、ようやく読破……!
皆様の応援のおかげで本作、PV23000、フォロワー250人を突破しました! 直近だと、異世界ファンタジー部門で【403位】を確認しております(もうとっくに変化しているかもですが)
また、余勢をかってカクヨムコンテストにも応募中です! なのでよろしければ、「スマホなら目次&広告下、PCなら画面右サイド側」に表示される★にて評価いただければ、更新と誤字修正その他、もっと気合入れて頑張れますので、なにとぞっ!
年末年始の間、当分は毎日朝7:00か夜19:00ごろ、毎日更新予定です。
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