第40話 白銀猛攻 ★★★
ついに、最終戦のバトルフィールド――
そんなユーリを見下したような視線を投げつけながら、クーデリアは不敵な表情を浮かべつつ
「……がっかりですわよ。実際のところ、セリカさんがわたくしの最大のライバルだと思っていましたのに……。まさか、この場で相まみえるのが、あなただなんてね。“万年サボリ魔の数合わせ”さんがお相手では、白銀令嬢の名が泣くというもの。わたくしの氷魔術がなくとも、場が冷えっ冷えに寒くなっちまいますわよ!」
「同感だね……さっさと終わらせて、
ユーリはそう言いつつ、右肩を一つ、コキリと回す。
「相変わらず、口が減らないようですわね、あなた……ユーリ?…… ユーリ、ローベルなんたら、でしたっけ?
まあ、せいぜいあがいてみてくださいな……それにしてもこの最終戦、呆気ないわの【錬気黄金噴出(アルケナイザー)】って感じの、くっだらない幕切れにならなければいいのですけれど?」
「言ってくれるねえ。まあでもその
「くっ、もうっ! どっちもが相手の名前を互いにうろ覚えじゃ、
「ああそう、そのクーデスラッドさんよ……あんまし俺を
「だから、覚えろとっ! そもそも、
(間違いないわ、アレ、わざとよね……)
(うん、間違いねーし……ユリっち、けっこう性格悪いもんね)
セリカとティガが苦笑する向こうで、あっさり挑発に乗せられ、顔を真っ赤にしたクーデリアが、いかにも不機嫌そうに叫ぶ。
「わたくしのこの名と家を
クーデリアはそう言い終えるや、彼女愛用の
「ほう」
最初に手に現れた時はごく短い
「それ、なかなか高級品らしいな? さすが金持ち貴族様ってとこか」
「ふふっ、その名も『
ところであなたのほうは……
偉大なる冬の訪れに、凍った木々が雪の重みで頭を下げるのと一緒、いわば自然の
「はっ、まさに
ユーリはシャツの内ポケットに手を入れると、一本の
「ちょうどいい。“コイツ”が俺の
「なっ……!」
ご
「あなた、本気ですの? そんな妙な
「まあ、ちょっと待ってなって……試合の前の景気づけだぜ」
ユーリは、指でピンッと瓶の蓋を弾き飛ばす。
凄まじい勢いで回転しながら上空に舞い上がっていくビンの蓋を
ユーリはそれから、大きく息をつきつつ。
「ふぅ~……さあて、これでヤル気100%、MAX
「ふ、ふざ……」
「けてねーよ。本気も本気、大
それに……
ユーリは、審判として戦いを見守っているイゴル教授を、ちらりと見て。
(ど~せ、派手にやるわけにゃいかねえからな……そうだな、いっそこの戦い、
そう内心で呟きつつ、クーデリアへと向き直るユーリ。
「ま、こんくらいが
「おのれっ! 無礼千万、怒り千倍! まさに、
直後……対戦開始のブザーが鳴り終わるもの待ちきれないようで、構えた短槍を突き出し、クーデリアは叫んだ。
「【氷精の魔弾(アイシィ・バレット)】!」
ユーリ目掛けて飛んでくるのは、
「おっと……」
だがそれをユーリは、身体を
(魔装の助けもあるだろが、詠唱速度はなかなか、マグスも良く練られてっけど……やっぱ、学生レベルだな)
一瞬で、そこまでを読み取る……加えてユーリの場合は、“この程度”の相手ならば、体調や内に秘めた感情までも、マグスの余波で、ぼんやりと感じ取ることが可能だ。
ユーリが素早く動いた後ろで、回避された氷の魔術が
続いて第二波が撃ち放たれたが、ユーリはこれも「よっと」と最低限の動きだけで、全て
「くっ……」
意外に相手が
「ふん、逃げ足と身のこなしだけは一人前みたいですわね。なら、これはどうかしらっ……【氷狼雨槍(フェンリル・レイン)】っ!!」
短槍を大きく頭の上で回転させ、クーデリアが最後に
ユーリの周囲の空気が、キィンと音を立てた。続いて急激に冷やされた大気が、何かの形に
たちまちユーリの頭上に、一本、二本……いや、あっという間に数十はくだらない氷の槍が浮かびあがり、切っ先をこちらに向け、女王の命令を待って整列する軍隊のように、空中にぴたりと静止する。
(へえ……このコントロール力。さすがに、良い資質をお持ちだな)
「さあ、ちょろちょろ回避しようにも、もう逃げ場はありませんわよ! 食らいなさい!」
ほくそ笑んだクーデリアが、まるで女王の持つ
次の瞬間、まるで不可視の弓につがえられていた矢が解き放たれたかの
「ユーリ君!」
「ユリっち!!」
セリカとティガが、大きく目を
そんな彼女らに、ちらりと「心配すんな」という風に視線を送りつつ、ユーリは……握り締めたビンに、一気に
そして……
それらの
ギャリギャリギャリッ……! と無数の甲高い音が、模擬訓練場内に響き渡る。
「……は、
「おいおい、目玉ちゃんとついてんのか? 全部じゃねーよ、最低限、俺に直撃する軌道を描いてたぶんだけだ……。それよりセリカにティガ、ちゃんと見てたか? このマグスを極限まで通したビン一本がありゃ、硬度は百本の名剣にも勝るんだ。戦いに余計な力はいらねえ……無駄なマグス使って、オーバーキルしてんじゃねーぞ?」
同じく絶句していたセリカが、ハッとしたように、こくこくと頷く。
とっておきの技を、ちょうど良い教材扱いされた上に、
そう悟るや、クーデリアはしばし無言になり……
「く……おのれ! おのれ!! おのれぇッ!!!」
「ハッ、どうした? オノレオノレのカフェオーレってか? ……う~ん、いまいちだなコレ。ははっ……笑えね」
「……ぐぎぎぎぎぃぃぃぃっ!!」
クーデリアは震える手で、愛用の短槍型
そして空中に生まれた一本の細い氷柱を、ガリリ、と白い歯で
「ふぅ~……これでわたくし、ようやく頭が冷えてまいりましたわ」
「そうかい? けどよ、皇都の春にゃ、まだかき氷は早いんじゃねーか? エーテルペッパーの特製シロップでもかけてやっか?」
ヘラヘラと笑うユーリ。
「どうやら……あなたを少しばかり、侮り過ぎていたようね。そう、獅子は兎を狩るのにも全力であらねば……すっかり忘れていましたわ……!」
そして……
白銀令嬢が放つ凄まじい
「おっ……?」
「ユーリス・ロベルティンッ! どうも
続けて、クーデリアは皮肉げに笑い。
「【哀嘆激凍堕天(ジュデッカズ・ソロウ)】……このわたくしの最強
クーデリアが高々と掲げた蒼銀色の短槍が、ぴたりと天の一点を差す。
すると、たちまち周囲の冷気とマグスを集めて、空中にぐんぐんと巨大な
その拡大が……止まらない。止まるはずもない。
それは、白銀令嬢のまぎれもない究極の怒りの体現、彼女の
「なにコレ、さ、寒いっ……!」
「息が……息が凍っちまう……!」
場内の観客たる生徒たちが、身体を震わせ、制服の
直後、バトルフィールド上空に現れた巨大氷塊……それは、あまりにも唐突で冷徹で無骨。
太陽光を
そして……
ほとんど
「さ、さすがにヤ、ヤバすぎだってぇ~っ!!」
「ああっ、ユーリ君! に、逃げ……」
言いかけて、はっと息を呑むセリカ。続いてティガも。
(に、逃げ場なんてどこにも……)
(あ、あのデカさなんだもんっ……!)
セリカとティガが、互いに顔を見合わせて……思わず目をつぶる。
数秒後。
上空から斜めに飛来して獲物たる
恐るべき破壊力を持った
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「呪術廻戦ゼロ」の映画が見たい今日この頃です…!
★★★【読者の皆様に、よろしければ……のお願い】★★★
皆様の応援のおかげで無事、本作、7000PV突破しました!
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なので、よろしければ目次下の★にて評価いただければ、更新と誤字修正その他、もっと気合入れて頑張れますので、なにとぞなにとぞっ!
目指せ年内20万字、10000PVっ! (クレクレしまくりですみません…!)
当分は毎日朝7:00か夜19:00ごろ更新の予定です。
また、応援、感想、レビューなどいただけますと、更新の励みになります!
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