第22話 二つの魔術弾
その後、ユーリはセリカとティガを
「さて……」
ユーリは振り返った。
「ここなら、壁が厚めだし、ちょっとした広さがあるからお前らも安心だろ。まず、魔装武器……マギスギアを出してみろ」
二人はこくりと
たちまち部屋にほとばしる、白色と紅色の輝き。同時、空間を上書きするように出現した二つの
ティガの
「ちょっと、それ構えてみ」
ユーリに
「よし。これで、最大級の威力が出せんな。じゃ、次はそれぞれ、一番得意な電理魔術を最大火力で発動させてみろ……そうだな、飛び道具系で」
「えっ!?」
「ちょっ、マジで!?」
「学園内で魔術の使用は……とか、お固いこと言ってんじゃねえぞ? ここは地下だ、学園内じゃねえからな」
「いわゆる
「いいっていいって、どうせ魔導教官どもには分かりゃしねえ。そもそも、ちょっとは手の内見せてくれんと、訓練どころかアドバイスのしようもねーだろが」
ユーリの言葉に二人は同時に顔を見合わせ、おずおずと
「そ、それはそうね……」
「ダ、ダイジョブだよ、うん。べ、別に人に向けて使うわけじゃないし……」
「はあ? 違う違う、当然ヒトに向けて使うんだ、当たり前だろ……つまり、お前らの本気の一撃を、俺に向けて撃て。
時間がもったいねーから二人同時だ、全力な! そもそも、そんために魔装武器を持ってこさせたんだ。ちゃんと魔装武器の術式補助機能もフルに使って、強化入れるのも忘れんな」
「はぁ~? ユリっち、それ無茶だって! ここ、模擬訓練場みたいなダメージ置換システムも働いてないんしょ? こんな至近距離からじゃあ、マジやばいって! し、死んじゃうよ?」
「そ、そうよ! さすがに危なすぎるわ! わ、私は別にそこまでやらなくても……」
口々にそんなことを言う彼女らに、ユーリは面倒くさそうに、コキリと一つ、右肩を鳴らし。
「いや……お前ら、その感じだとやっぱ“特訓”の意味、分かってねえだろ?」
それから、打って変わって真剣な目つきになると。
「セリカ……お前は絶対に伸びしろがあんよ、俺が保証する。2位どころか、学年1位……いや、上級生にだってそうそう負けないくらいに、上狙える素質があると思うぜ、お前にはよ」
「え!? ……あ、はい……」
そうユーリが言い切った途端、セリカは急にもじもじし、綺麗な
ただ、もはや彼女には目もくれず、ユーリは続いて“もう一人”のほうに向きなおり。
「で、ティガ……ちらっと聞いたんだけどよ、お前、将来軍に入って、母ちゃんラクにさせてやりてえんだろ? あのマルクディオにだって、家の借金絡みでマウント取られたって話じゃん。
つまるとこ、のらくら生きてようが能天気に過ごしてようが、どうせ平民出身のお前の人生にゃ、いずれ金が必要なんだ。
……で、本気で高給取りの軍に行きたいなら、今から成績を上げといて、軍の入隊
「あ……うん。それは、そだね……」
ユーリの真剣な言葉がきっちり伝わったのか、いつになく真面目な表情になり、素直にうなずくティガ。
「でも、ユリっち……ちょっと、意外かも。ウチのこと、そんな真面目に考えてくれてたん……?」
なんだか嬉しそうに、ちらちらとこちらを眺めてくるが。
「は? ちょっとアタマ使えば、誰にだって分かる先の見通しだろが、そんなん」
ユーリは一つ、大きな溜め息をつき。
「そうだな……だからやっぱコレだけじゃねえ、ここからの訓練全部だ。お前ら、それ全部、今出せる最大全力でやれ。
もし、お前らが訓練で手ぇ抜いたり、本番の試合の時、
「「ええっ!」」
「当たり前だろ、そもそも俺は、お前らのレギオンなんて、本来どうなろうと知ったこっちゃねえんだ。そもそも俺が棄権したって、俺と白銀令嬢サマの因縁は片付かねえよ。
その場合は、お手々つないで仲良し形式のレギオン・バトルなんかじゃなく、あのご令嬢と俺の、1対1の
俺は、あいつに台無しにされた特級エーテルペッパーの恨みを、思い知らせてやりたいってだけなんだからな」
「あ、そこはやっぱり、めちゃくちゃ根に持ってるのね……」
「当然だ、俺はこれでも自分で
ユーリの瞳に宿る、静かな迫力。
二人はそれを悟ったのか、ユーリの豹変ぶりにごくりと
(あ~、いつかも、こんな目で見つめられたコトが……思い出しちまったな)
ユーリの脳裏にふと、浮かんでくる光景。
それは
魔領域で、各地の戦線で……まるで整列した軍人の隊列のように、整然と立ち並ぶ無数の墓。
それらは全て、誇りとともに戦地で散った皇国軍人の証が刻まれた、ごくシンプルな大理石
同時に幻のように耳にこだまするのは、
いずれも、かつて【
その後、まだ若い人生を慌ただしく通り過ぎていった、新人たちだった。
「すっげー尊敬してるんです、ユーリ先輩っ!」
「ユーリ、さん……ありがとうございますっ。わ、わたし……危ないところを……!」
「いやあ、助かったぁ! ホント、頼りにしてますからっ!」
そんな、ときに
……皆、帰ってこれなかった。
(畜生が……お前ら、いつかも今も、俺の足ばっか引っ張りやがってよ……)
ユーリはそっと目を閉じ、かつてに想いを馳せた。
忘れていた、わけではない。この学園ではしばらく“思い出さずに済んでいた”、というだけ。
救えなかった者。手を伸ばしきれなかった者。そして、セリカもティガも、いずれは軍に入ろうという魔装騎士の
ならば……
(……ならやっぱ、ここで本気でシゴいて、ちょっとぐらいは、実力に
ユーリは内心でそう呟く。
※ ※ ※
数分後……。
別人のように、厳格な教官めいた雰囲気をまとったユーリに
この上なく真剣な表情とともに 二人はそっと、腕にそれぞれ炎と雷のマグスを
同時、たちまち二つの魔装武器に精錬されたマグスが流れ込み、周囲の空間にバチバチと音を立て、白と赤の魔法光が散り始める。
そして、魔術式の最終節を意識領域の表面に刻むための、最後の発声の直前……二人は額に玉の汗を浮かべつつ、ちらりと確認するように、ユーリを見た。
それにユーリが無言で
「【紅蓮飛翔鳥(ファイヤバード)】っ!!」
「【雷破閃光牙(サンダーグレネード)っ!!】」
完成した魔術式の力を目いっぱい
それをユーリは
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今日は朝から某有名カードゲームの関連本を読みます、たぶん!
当分は毎日朝7:00か夜19:00ごろ更新の予定です。つたない作品ですが、システム上、目次の最新話下にある★にて評価いただけますと、より時間をさいての更新や内容充実を図れますので、大変助かります!
また、応援、感想、レビューなどいただけますと、更新の励みになります!
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