第7話
「―—そういえば、昨日頼んだものあったよな」
朝、いつも通りに学校に行き、クラスに入ると唐突にそう言われる。
「ん?……ああ、あれか」
クラスメイトである 高橋 樹 こいつはどうやら変人らしい。
いろいろと樹に関する話はあるが、こいつはロリコンとかなんとからしい。
「ほらよ。聞きたいけど、どうしてその本を?」
カバンから本を取り出し、樹の方に投げる。
「なんとなく、かな。とにかく、ご苦労だったね。それじゃ」
一言そう言って自分の席に着く。
俺からして見れば、顔なんかはそこまでではないが、一部の人からは人気があるらしい。
人によって価値観が違うとはこのことである。
そんなことは置いといて、俺も席に着く。
「さてと……」
カバンから教科書なんかを取り出し、机の中にしまおうとした時、紙がグシャっとなる音がした。
「これは……?」
机の中を確認すると、そこには一つの封筒があった。
よくある茶色い封筒ではなく、真っ白い、ラブレターなんかが入ってそうな封筒が机の中にあった。
その封筒の表紙を見ても特に何も書かれておらず、差出人不明だった。
……まさかとは思うが、ラブレターじゃないよな?
モテるわけないし……。
とりあえずその封筒は、制服のポケットにしまい込んだ。
「―—こんちはー」
昼休み。
昼休みに訪れたのは、綾香先輩がいる図書室。
「あっ、隼人くん」
「先輩、こんな時に呼び出してどうしたんですか?……また意味わからないような用事で呼んだわけないですよね?」
「違うってばー」
クスクス笑いながらそう言うが、俺としては大した用事じゃないだろうなとは思っている。
図書室の受付などをするところに座り、綾香先輩に向き直る。
「それで、どんな用事ですか?」
綾香先輩は、笑顔のまま言う。
「えーと、今の季節ってなーんだ?」
「き、季節……?」
何の話かと思えば、季節の話だったか。
「今の季節って、夏ですよね?」
「そうそう!それで、夏といえばなーんだ?」
なぜクイズ形式なのかは謎だ。
「夏といえば、海?それともスイカ?」
「うーん、当たっているようで当たってないなー」
「当たってないんですか」
「ほら、夏といえばもう一つあるじゃん」
「……花火?」
「……まあ、正解にしてあげる」
「なんでがっかりしてるんですか!?」
俺の回答が気に食わなかったらしい。
「つまり、夏祭りだよ!」
「あ、ああ!」
夏祭りだからなんだ言うんだの人は。
「……つまり?」
「つまり!私と夏祭り行かないかな?!」
「え、えーと……」
まさか、松まつり一緒に行こうといわれるなんて思わなかった。
「い、いいですけど……それって―—」
「で、デートっていう訳じゃないからね?ほんとに」
「……先輩ってツンデレでしたっけ?」
「つ、ツンデレじゃなーい!」
図書室で早くも20分ほどが経ってしまった。
「あっ、そういえばこれって先輩のじゃないですか?」
帰り際に思い出した封筒のこと。
もしかしたら綾香先輩かもしれない。
「……?私、じゃないけど……」
実を言うと、まだ中身を見ていないのだ。
本来であれば、中身を見てから聞くものなのだが、完全にやらかしてしまった。
「そ、そうですか……ありがとうございました」
「ねぇ!それってラブレターじゃない?」
「ああ、俺も最初そう思いましたよ」
「もしそうだったら……私のことは?」
「……先輩、俺はあなたのことは好きじゃないですってば。もちろん、嫌いって意味じゃなく」
「ふふっ、分かってるってば。でも、隼人くんが取られたら……」
「……?」
「ああごめん。なんでもないっ。それじゃあ、またね」
先輩が手を振ってくれる中、俺はこの封筒のことしか考えていなかった。
現実世界でハーレムしても良いですか? かろん @olt36
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