第5話

ロリコンじゃない。俺は断じてロリコンじゃない。

……違う、そうじゃなくてだな。


「――作家、ですか?」


買い物を終え、家に帰宅しようとしたとき、聞き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。

振り返るとそこには、制服姿の綾花先輩が立っていた。

黒髪で細身な体躯、黒髪だからなのか分からないが、一見すると清楚で大人しそうな雰囲気がある。

露出している足や腕などは全くと言っていいほど日焼けをしていない。

身長としては俺よりも少し低いだろうか。そのせいか胸はやや小さいように思える。


「――うん。私、作家になろうかなって思ってて」


綾花先輩の描写はこのぐらいにしておいて、本題に入ろう。

綾花先輩に声をかけられ少し話をした後、綾花先輩は作家になる夢を持っていたらしい。


「作家……良いんじゃないですか?先輩は、本を読むのが好きって聞きますし」

「まあね。……私が落ち着く場所、それが読書なんだ」

「へぇ……俺は、落ち着く場所なんか無いですよ」

「そうかな?隼人くんが落ち着く場所、それって、結衣ちゃんといるときじゃない?」

「結衣といるとき?」


どうして綾花先輩は、俺が結衣といるときが落ち着く場所なんて言うのだろうか。


「隼人くんは、結衣ちゃんのこと好きそうだったから」

「お、俺は、結衣のこと好きじゃないです!」

「……でも、かわいいとは思ってるでしょ?」


……うっ、そ、それはたしかに。

たしか結衣はめちゃくちゃかわいいけど、好きになることは……!


「そ、それより、どうして先輩は作家に?」

「んー、そう言われると分かんないんだよねぇ……なんていうか、知らない間に作家になりたいって思っているって言うかー」


知らない間にこの仕事に就きたいと思うようになったと言うのは、よくある話だ。


「まぁ、理由なんて別に良いんじゃないですかね」

「そうだね。私はこの仕事がしたい。でもその理由はまだ分からない」

「……真実は自分の心にある。理由なんて、後から考えれば良いと思いますよ」

「……ふふっ。それじゃあ、一緒に帰ろっか隼人くん」

「あれ、先輩の家ってそっちでしたっけ?」


先輩は俺の質問に答えず、「ほらっ、早く行こー」と唆すだけだった。





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