第6話 魔獣討伐
「ようやく目的地の目の前に着いたか」
岩陰から目の前を覗くと、ファイは向けている視線の先に意識を集中した。
ファイの視線の先、地面に空いている大きな洞窟——魔獣の巣穴のすぐ傍に到着したファイは魔獣に気付かれないように傍にある岩陰に身を隠していた。
「さて、これからどうしたものか」
ファイは魔獣の巣穴を見ながら何かを待っていた。すると魔獣の巣穴である洞窟の穴から空中を移動する人物——ノルンが魔獣の巣穴から姿を現した。
巣穴から出てきたノルンは真っ直ぐにファイが隠れているい訳下へ移動する。
「どうだった。ノルン?」
ファイの元に戻って来たノルンに
「間違いなくこの洞窟は魔獣の巣穴です。洞窟内に魔獣がうじゃうじゃいました。少なくとも数十体はいると思います」
魔獣の巣穴から出てきたノルンは巣穴にいた魔獣の数をファイに伝えた。するとファイは顎を擦る。
「目の前の
ノルンは魔獣の巣穴と化している洞窟の中の状況を説明した。ノルンの言うように光が届かない洞窟の中に直接入って魔獣を
「それならこの作戦はどうだ?」
不意にファイはノルンに思いついた作戦を悦明すると、ファイが考えた作戦を聞いているノルンは首を縦に振る。
「確かにその作戦なら危険が少ないですね」
ファイの作戦を聞いたノルンはファイに賛同した。
「じゃあ、ノルン。悪いが一仕事頼むぞ」
「分かりました。任せて下さい」
返事を返すとノルンは空中を移動して再び魔獣の巣穴に入っていく。
ノルンが洞窟へ入ってしばらく経つと、洞窟の出入り口から徐々に白んだ空気が漂い始める。
白んだ空気が洞窟の出入り口から漂うと、ファイは岩陰から離れて洞窟の出入り口へ足を進める。
「もうそろそろか」
ファイが目の前の洞窟から漏れ出る白んだ空気を見ると洞窟から覗ける範囲の視界は既に霜に覆われていた。
すると洞窟の中から物音が響いてくる。ファイは徐々に物音が大きくなってくる洞窟を見ると、見える範囲の洞窟の中から大きな体躯の獣らしき影が見えてくる。
獣らしき影が洞窟の外に出ると、獣らしき影——魔獣が全身を霜だらけにして洞窟の外へ姿を現した。姿を現した全身霜だらけの魔獣は凍えているからなのか、体の動きが鈍っていた。
ファイの足と腕が
鋼の拳が魔獣の核を砕くと、霜だらけの魔獣はぴたりと動きを止めた。動きを止めた魔獣はそのまま地面に倒れる。魔獣が地面に倒れると魔獣の体は白い灰へと変わった。続けて洞窟から霜に覆われた魔獣が姿を出す。
ファイは洞窟から姿を出した魔獣の懐に距離を詰める。距離を詰める勢いを載せて魔獣の核へ蹴りを喰らわす。
ファイが魔獣の核を蹴ると魔獣の核は粉々に砕けて地面へ大きな図体が地面に倒れ体が白い灰へと変わる。
蹴って核が砕けた魔獣が地面に倒れると間髪入れずに洞窟から魔獣の姿が現れる。そんな繰り返しをして魔獣はどんどんファイに
「お待たせしました。ファイ」
洞窟から姿を現した人の影——ノルンは空中をゆっくりと移動してファイの元に近付く。
「洞窟の中にいる魔獣は全て氷漬けになりました。これで魔獣は一歩も動けなくなっているはずです」
「分かった。ありがとう。ファイ」
ノルンが洞窟の中でしていた事——洞窟内の熱を根こそぎ奪い洞窟内にいる魔獣を氷漬けにした事をファイに伝える。するとファイは洞窟が通じている地面の上を進む。
「ここらへんでいいだろう」
洞窟の上を歩いていたファイは足を止めた。そしてファイは自身の手で握り拳をつくる。ファイが握り拳をつくるとファイの拳はどんどん肥大化すると同時に鋼の輝きを纏っていく。
するとファイは肥大化した鋼の拳を足元の地面に向かって殴った。
鋼の拳が地面にぶつかると、殴った地面は大きく抉れて地面から地響きが起きた。大きく抉れた地面に亀裂が入ると、亀裂はみるみるうちに広がっていく。
亀裂の
沈んだ地面から岩が崩れる物音の中に混じって獣の
土煙を上げて沈んだ地面を見るファイの視界には崩れた地面の他に霜や氷が砕けて粉々になっている瓦礫が転がっていた。
そんな氷の
「これで洞窟の中の魔獣は潰れ死んだでしょう」
ファイの傍に近付いてくるノルンは視界に入る光景を見ながらファイに声をかける。
「あぁ、あとはまだ死んでない魔獣を
ノルンの言葉に返事したファイは作戦通りに事が運んだ事に
ファイの作戦。
魔獣の巣穴である洞窟の中でノルンが熱を喰い尽くして魔獣を氷漬けにする。氷漬けになる前に洞窟から逃げ出した魔獣をファイが
これがファイの作戦だ。
作戦通りに事が運んだファイは周りを見渡して魔獣の残党を確認する。
「見る限りさっきので魔獣は全て潰れたようだな」
ファイは視界に映る範囲に魔獣がいない事を確認すると、先程の地面を沈ませて洞窟を潰した事で魔獣が全て圧死した事を把握する。
「思ったより早く魔獣を
「そうだな。王都に戻って区長に報告して家に帰ろう」
そう言うとファイは洞窟が崩れて瓦礫が転がる足場を跳び超えて瓦礫の転がっていない足場へ移動する。
移動したファイに空中を移動するノルンはファイの後ろに抱きついた。そしてノルンが後ろに掴まるとファイは鋼の足で地を蹴る。
地面から土煙を巻き上げながらファイは凄まじい速度で走りながら王都への復路を進む。
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