盲(字数制限)

 彼処でざらざら鳴いているのは、きっと風に揺すられる乾いた枝葉で、かさかさいうのは虫に踏まれた土の音。ちょんちょん甲高いのは、葉っぱに溜まった昨日の雨の名残り露。

 暗闇は音に溢れてる。黒は光を飲み込むけれど、音は全く呑み込めない。白と真逆だ。あれは光を全て弾くけど、音はひとつ残らず吸い取っていく。

 とにかく闇夜は賑やかで、耳慣れた音が暗闇に何時もの世界を描き出す。夜の帷も落ちた中、昼間と変わらずここに居るぞと、世界の構成物たちが喚き出す。

 でもふと思う。余りにもらしいから騙されてるけど、勝手に同じだと思ってるけど、そこに居るのは本当に昼間そこにいた奴らか?

 彼処でざらざら泣いているのも、そこでかさかさ喋ってるのも、何処かでちょんちょん歌っているのも、もしかしたら。

 白く無機質な街灯の下にだけ、円錐状に何時もの世界が照らされている。

 けどそこに浮び上がる足元の茂みが、ガードレールが、まばらな林が、コンクリ道路が、闇の向こうまで続いてるって、そう言えば誰が保証してくれるやら。

 闇夜の中はよく聞こえるけど、何も見えない。昼間とは全く別の世界がそこにあったら。それを馬鹿な話だと、確かめる術は実はない。

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