第21話
「暗殺は無理だ。商店に侵入して対象を殺す」
男らは音もなく商店に忍び寄る。
「隊長、扉は問題なく開きました」
隊長は部下の言葉に気配を消すように指示をして、商店に侵入する。
商店に入り、建物の中の気配を探り、人間が密集する場所を目指す男らは、商店内のとある廊下に壁から壁に糸が張られていることに気づいた。
「全員、糸が張られている避けて進め」
体調の言葉に従い、部下の一人が糸を慎重に避け、糸の上を通った時であった、糸の上を通っていた男の頭から血が噴き出る。
「「「!?」」」
唐突に血を噴き出し倒れる男に驚愕し、隊長を除く男らは一瞬、反応が遅れる。
「バカ、避けろ! お前ら!」
隊長の警告虚しく、二人の男は頭に血飛沫を上げながら倒れる。
(なんだ!? 今の。最初はまるでわからなかったが、二人が倒れる瞬間、どこからか、小さな何かが頭を貫通していた……魔法か? チッ、まるでわからん。壁といい、商店といい、割りに合わん!)
隊長は状況把握を瞬時にすると同時に自身を狙う弾丸を叩き落としながら、建物の奥に突き進む。
「全員、死んだか……」
ただ一人生き残った隊長と呼ばれた男は、弾丸が飛び交う通路を駆け抜けた先で呟く。
息を一つ吐くと鋭い眼差しを目の前の扉に向ける。
(ここまで来ると【索敵】の効果範囲だ。この部屋に3人全員いるな。扉は先程の見えない壁に守られているだろう。それは、部下の頭ぶっ飛ばしたトラップで無傷なことからもわかる。チッ、開けなきゃならんか。罠があるだろうな……が、)
男は先程の通路での出来事を思い出しながら、扉に手をかける。
(【気配遮断】【認識阻害】)
男は扉を開けた。
中にはレオン、ルナール、ダンの3人が扉が開いた瞬間、攻撃を仕掛けるために警戒をしていた。
3人は開・け・放・た・れ・た・扉・が・い・つ・開・け・ら・れ・る・か・緊・張・の・面・持・ち・で・見・て・い・た・。
(久し振りに真面目にスキルを使う)
男は扉に向かって巨大な銃を構えるレオンに無造作に近づいていく。ルナールやダンはおろか、近づかれているレオンですら、気づかない。
(これで終わりだ)
男はレオンの背後に立つと短剣を振るう。
(【暗殺】)
振われた短剣は寸分違わずレオンの首を跳ね飛ばした。
「「な!?」」
レオンの首が切り飛ばされると同時にルナールとダンは、扉が開け放たれていること、そして、レオンが殺されていることに初めて気づく。
「【投擲】」
男は手に持つ短剣をダンに投げると同時にルナールに向かって駆ける。
ダンは短剣に反応するも凄まじい速度についていけず頭を吹き飛ばされ、即死する。
「くっ」
ルナールは先程、レオンに手渡された銃を構える。しかし、
「先端から金属を飛ばす魔道具だろう! 先程のトラップで学習済みだ!」
男は素早く銃を掴み銃口を逸らせると、空いた手でナイフを取り出し、ルナールの首を切り飛ばす。
「……はぁ、割りに合わん」
男の声が主人の居なくなった商店にこだました。
伯爵邸
「伯爵、ガキと従者を消してきた」
「……そうか」
この部屋にはゲルト、執事長とレオンを殺した男の3人いる。
男はレオン殺害後、速やかにタスフェルド男爵領を離れ、シルフィード伯爵領に戻っていた。そして、伯爵邸にて、任務の報告をしていたのだ。
「以上、ガキたちは意味不明な道具を使ったりしていた。割りに合わん、報酬を増やせ」
「……いいだろう。最初の報酬の2倍払う。おい」
「は、どうぞ」
ゲルトの言葉に執事長が手に持っていた袋を手渡す。
「残りは追って渡す」
「ふん。きっちり払えよ。んじゃ、次は3日後に来る」
男は執務室の窓から外に出て行く。
「片付けておけ」
「は」
ゲルトは男が屋敷から離れたことを確認してから執事長に命令を下す。
「神殿にレオンの追放と暗殺を気取られるな。面倒なことになる」
死んでからも迷惑をかけおって、と呟くその眼には親愛の情など一切無かった。
翌日、不審死体が発見されるも身なりから浮浪者と判断され、警備隊でも深くは調べられなかった。
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